給与計算をするときには源泉徴収をした所得税を差し引きます。
この計算をする際には源泉徴収税額表を使いますが、普段給与計算ソフトを使っていると源泉所得税は自動計算されます。
ミスに気付かないまま計算をしてしまいあとで従業員にご迷惑をかけることもあります。
そこで、今回は源泉徴収税額で注意すべきポイントを書いてみたいと思います。
毎年最新の税額表を確認する
給与計算ソフトでクラウド型であれば最新の税額表が反映されていると思いますが、自分で手計算される場合には必ず最新の税額表を確認しましょう。
令和5年分の税額表は令和4年分の税額と同じですがたまに大きく変わることもあります(通常は変わります)。
【事務所お知らせ】月額表のポイント
では、実際に令和5年分源泉徴収税額表のうち月額表を見てみたいと思います。
ポイントは2つ。
- その月の社会保険料等控除後の給与等の金額って何?
- 扶養親族等の数って何?
です。
扶養控除等申告書を会社や事業主に提出している場合は「甲欄」を使い、出していない場合は「乙欄」を使います。
今回は、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額について解説します。
その月の社会保険料等控除後の給与等の金額
等、等とたくさん出てきますので(苦笑)、簡単な言葉で言い替えると、
です。
給与は、支給の総額から社会保険料と税金を差し引いた残りが手取額となります。
【支給総額】
①基本給 | 固定(従業員ごとに決定されているため) |
②残業手当(時間外・休日・深夜) | 変動(基本給をもとに計算) |
③通勤手当 | 固定(公共交通機関は月15万円まで非課税) |
支給総額 | ①+②+③ |
支給総額は、①基本給+②残業手当+③通勤手当で求めます。また、仕事内容に応じて支給される職務手当などがあればこれに加算していきます。
通勤手当が非課税となるためには、通常の給与に加算して支給するという条件があります。
区分せず通勤手当を含めた形で給与として支給したら非課税にならないので注意が必要です。
【社会保険料】
①健康保険料 | 固定(毎年9月改定→10月控除分から変更) |
②介護保険料 | 固定(毎年9月改定→10月控除分から変更) |
③厚生年金保険料 | 固定(毎年9月改定→10月控除分から変更) |
④雇用保険料 | 変動 支給総額×雇用保険料率(被保険者負担分) |
①~③は固定と書いてある通り、4月から6月までの給与支給総額を平均して計算した標準報酬月額をもとに毎年9月から1年間計算を行います。
一方、④雇用保険料は毎月支給総額に雇用保険料率(従業員が負担する分)を掛けて計算します。
【税金】
所得税 | 変動(支給総額から非課税通勤手当と社会保険料を差し引いたあとの金額をもとに計算) |
住民税 | 固定(毎年6月分から1年間差し引く) |
所得税を計算する際には、非課税の通勤手当は含めません。税金がかかるものだけを集計します。
住民税は基本的に1年間同じ金額です。
この税額表でいう「その月の社会保険料を差し引いたあとの給与」とは、
といえます。
以下、図解してみますとこんなイメージになります。
ちなみに、給与所得の源泉徴収簿が国税庁ホームページにはあります。
同じ形式でなくても構わないですが参考までに示しておきます。
このうち、毎月の給与計算で埋めていくのは、左側の欄になります。
税額表でいう「その月の社会保険料を差し引いたあとの給与」とは、支給総額から非課税通勤手当と社会保険料を差し引いたあとの金額でした。
この源泉徴収簿では、
- 総支給金額:支給総額から非課税通勤手当を差し引いたもの
- 社会保険料等の控除額:社会保険料
- 社会保険料等控除後の給与等の金額:1-2
となります。
やりがちなミス
源泉所得税を計算する際にミスしがちなのは、非課税通勤手当を含めてしまうことです。
源泉所得税は、給与総額から非課税通勤手当を差し引いたもので計算をします。
一方、社会保険料は支給総額、つまり非課税通勤手当を含めて計算を行います。
もし非課税通勤手当を含めてしまっているとその分源泉所得税の金額が高くなるはずですので正しく計算されないことになります。
まとめ
今回、源泉徴収税額表の見方として月額表における「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」について取り上げてみました。
扶養親族等の数についても取り上げてみたかったのですが分量が多くなりすぎるので次回に分けることにしました。
なぜ今さら税額表なのかですが、給与計算ソフトで自動計算できたとしても税額表の見方は知っておいていただいたほうがいいと思っているからです。
給与計算の仕組みはソフト任せにせずに理解しておきたいものです。
では。