今回は労働基準監督署(以下、労基署)が行う調査について、社会保険労務士の勉強をして調査未経験の私が調べたことや勉強したことを書いてみたいと思います。
年金事務所調査と同じように、未経験なのに偉そうに書くなと怒られそうですけど。。
そもそも労基署が行う調査の目的として、以下のようなことが挙げられます。
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- 賃金がきちんと支払われているか
- 残業が多くないか
- 法律や基準をきちんと守っているか
社会保険労務士試験の範囲でいうと、労働基準法がメインですね。
この労基署調査にはいろいろな種類がありますが、今回は定期的に調査される「定期監督」に絞って書いていこうと思います。
「定期監督」が調査全体の約8割を占めると言われています。
定期監督の流れ
ポイントとしては、日程調整と書類の準備かなと思います。
日程調整
労基署から指定された日に都合がつかない場合は変更してもらえます。
そのため、日程変更の連絡を必ず労基署へ連絡して違う日程をお願いするようにしましょう。
連絡しないや無断欠席はしないようにしましょう。
書類の準備
事前に準備しておく書類と、事前に調査をしておくように指示されるものとがありますので、調査当日までに準備しておく必要があります。
どういう書類を準備するかですが、労基署から指示されてきますが本来調査のあるなしにかかわらず揃っていなければならない書類があります。
それは以下のとおりです。
- 出勤簿(タイムカードを含む)
- 賃金台帳
- 労働者名簿
- 年次有給休暇取得状況
- 36協定などの届出書
- 就業規則
- 雇用契約書
このうち、特に「出勤簿」「賃金台帳」「労働者名簿」は法定三帳簿と言われていて、特に大事な書類として作成・保管が義務づけられています。
調査で確認されやすいもの5つ
今回は調査で確認されやすいものを5つに絞って説明してみます。
他にも調査はされることがあると思われますが、これは絶対に事前に確認しておくべきかなと思います。
いろいろ調べてみて、この5つは必ず取り上げられていました。
また、社会保険労務士の勉強をしていると試験でも問われやすいところかと思いますので、受験生も知っておかれるといいのかもしれません。
法律で定められている書類の作成・保存
会社・事業所で必ず作成して保存しておかなければならない書類があります。
先ほど準備書類でも挙げた法定三帳簿(出勤簿・賃金台帳・労働者名簿)、就業規則や雇用契約書などです。
通常は3年間という保管期間が設けられていますが、適切な期間保管されていなかったり、そもそも書類を作成していない場合は法律違反となります。
ここで書類と留意点についてまとめてみます。
書類 | 留意点 |
出勤簿(タイムカード) | ・個人別に用意 ・原本 ・始業時間と終業時間が分かるもの |
賃金台帳 | 原本 |
労働者名簿(労働者の情報をまとめた名簿) | ・個人別に用意 ・原本 |
就業規則(会社のルールを記載した規定) | 従業員が常時10人以上いる状態になった時点で作成して労基署へ届出が必要 (常時10人かどうか) パートやアルバイト、契約社員や休職者なども含めた在籍している人数で判断 |
雇用契約書 | ・入社時に従業員に書面で通知する ・個人別に用意 ・原本 |
労基署に届出が必要な書類の確認
先ほどの就業規則もそうですが、労基署へ届出が必要な書類があります。
その中でも、「36協定」については特に注意が必要です。
36協定(サブロクキョウテイ)とは、従業員に時間外労働(残業)や休日労働をさせるため、事前に従業員との間で「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し労基署へ届出が必要です。
これが労働基準法第36条に規定されていることから、一般的に「36協定」と呼ばれています。
この36協定について、そもそも届出がされていないと時間外労働をさせることそのものが法律違反となります。
したがって、たとえ残業手当を支払っていたとしても法律違反となります。
同じように協定を結ぶと労基署へ届出が必要になるものとして、変形労働時間制の協定届などもあります。
長時間労働の是正
今社会問題となっていることが、長時間労働ですよね。
これを労基署はやはりチェックしてきます。
ポイントとしては以下のとおりです。
- 36協定の協定時間を超えて時間外労働(残業)をさせていないか
- 長時間労働者に対して面接指導などの対応をしているか
- 休日は確保されているか
- 出勤簿(タイムカード)などの客観的な方法で労働時間を正しく記録し把握しているか
特に、36協定と出勤簿(タイムカード)を確認したりするようですね。
では、ここで何度も出てきている時間外労働について。
まず、この時間外労働を説明するにあたって、「法定労働時間」と「所定労働時間」という2つの言葉を知っておきましょう。
言葉 | 説明 |
法定労働時間 | 労働基準法で定められた労働時間の上限 原則として1日8時間、1週間40時間以内 |
所定労働時間 | 会社(事業所)で定めた労働時間で、法定労働時間内で設定する 法定労働時間を超えた所定労働時間は無効になる |
そして、法定労働時間を超えて勤務をさせる場合に時間外労働となってきます。
また、時間外労働をする場合の残業手当の支給についてもルールがあります。
それが「割増賃金」というもので、法定労働時間を超えた時間外労働には25%以上の割増賃金を上乗せしてして支払うことになっています。
では、所定労働時間を超えているが、法定残業時間内の部分はというと、割増賃金を上乗せする必要はなくて通常の1時間あたりに支給する給与分を支払えばOKです(法定内残業といいます)。
例えば、所定労働時間:10時~18時(実労働時間7時間、休憩時間1時間)の場合に、残業を4時間したとします。
つまり、10時~22時まで勤務した場合を考えてみると、
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- 法定労働時間8時間ー実労働時間7時間=1時間 ➡割増賃金の上乗せは不要
- 残業4時間ー1時間=3時間(法定労働時間を超えた残業時間) ➡割増賃金の上乗せが必要
他にも、22時以降残業した場合は深夜残業として25%以上、休日労働は35%以上の割増賃金の支払いが必要です。時間外残業と深夜残業だと50%以上になったりすることもあります。
賃金支払状況の確認
これは従業員にとっても大切なこと。
きちんと賃金が支払われているかや残業手当の計算が誤っていないかをチェックされます。
- 賃金が未払いになっていないか
- 残業手当の計算と支払がきちんとされているか
- 最低賃金を下回っていないか
- 固定残業代の定めがある場合の対応
一番気を付けたいのは、残業手当の計算=割増賃金の計算です。
割増賃金は、以下のように計算します。
通常の労働に対して支払う賃金に、通勤手当や在宅手当、家族手当など個人の事情で金額が変わるものは含まれませんので注意です。
また、残業手当を支給する際に、残業時間や残業代を切り捨てたりすることもダメです。
年次有給休暇の付与状況
働き方改革の一環として、年10日以上の有給休暇が付与されている従業員について、年5日は必ず取得させることが義務づけられています。
今までは、有給休暇は従業員の申し出による取得が原則でした。
しかし、年5日取得していない従業員に対して会社や事業所が時季を指定して取得させることが義務化されました。
また、この有給休暇を管理する管理簿の作成と保存が義務化されているので注意です。
是正する
調査が終了すると、監督官から改善指導や指示が行われます。
法令違反の場合は「是正勧告書」、法令違反ではないか改善の余地がある場合は「指導票」が交付されます。
この「是正勧告書」「指導票」基づいて改善策を労基署へ報告することになります。
ここでのポイントは、監督官の指導は素直に従うということです。
一番怖いのは、残業代の支払です。
もし残業代を支払っていないとなると、3年間さかのぼって支払う義務が出てきます。
しかし、このさかのぼる期間は監督官の判断次第。
素直に従う姿勢を見せておくことで、期間が短縮される可能性もあります。
これは税務調査でも同じですね。
素直に従っておけばいい方向へ向かうこともありますので。
まとめ
今回は、労基署調査の流れからポイントまで自分なりに説明してみました。
実際、勉強した範囲でのことばかりなので実際はどうかというところがいまだ分かりません。
徐々に経験していくともっとお伝えできることが増えていくと思っています。
社会保険労務士の試験勉強で役に立つことも多いですね。
前回の年金事務所調査もそうですが、詳細は書いていないところも多く説明が足りないところも多々あります。特に言葉の説明が少ないので意味が分からないところもあるような気が。。
今後、社会保険労務士の試験勉強でも重要でかつ調査でも指摘されやすいところについて記事として書いていければなと思っています。
また、試験を受けていない方や事業主の方にもわかりやすいような言葉で書けるように努力したいと思います。
では。
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