日本に現在お住まいの方で、若いころに海外勤務があり現地で年金制度に加入されていることがある方もいらっしゃるかもしれません。
先日年金相談でアメリカに住んでいたことがある方からこんな相談をお受けしました。
【事務所お知らせ】社会保障協定
外国で勤務される場合には、日本と外国の両方で社会保険制度に加入して保険料を二重に支払わなければならないことがあります。
しかし、海外での勤務期間が短い場合には、外国での年金がもらえる期間を満たさず保険料が掛け捨てになってしまうこともあります。
これらの問題を解消するために、外国との間で社会保障協定を結んでいます。
取り決めとしては以下の2つです。
- どちらかの国の社会保険制度に加入すればよい(二重加入の防止)
- 日本と海外での年金加入期間を通算して年金がもらえる期間かどうかを判断する(年金の通算)
社会保障協定は令和5年2月末時点で22か国と締結されています。
多くの国との間では二重加入の防止と年金の通算両方とも締結されています。
社会保障協定が締結されていますと、年金の通算が締結されている国の年金手続きを日本の年金事務所や街角の年金相談センターで行うことができます。
アメリカの年金制度
ご相談に来られた方は、日本で厚生年金に加入されておりました。
一時期アメリカで勤務されていた期間がありアメリカの年金制度に加入した期間は9年。
日本の年金制度では、年金をもらうために10年以上年金をかけていなければなりません。
そのため、
アメリカでかけていた年金は10年未満ですのでアメリカの年金はもらえないのでしょうか?
という相談でした。
ここで、アメリカの年金制度について簡単に。
アメリカにおける年金の最低加入期間は原則1年6か月以上必要です。
日米期間を通算して10年以上あればアメリカの年金ももらうことができます。
相談者の方は、日本での年金加入期間も10年以上ありましたので、日本とアメリカ両方から年金をもらうことができます。
アメリカの年金も10年以上かけないともらえない、と思っていたみたいですね。
アメリカでかけていた年金を請求したい場合
では、アメリカでかけていた年金を請求したい場合はどうすればいいでしょうか。
日本の年金事務所や日本年金機構ホームページにあります「合衆国年金の請求申出書」により請求を行います。
添付書類は、
- 配偶者や子がいる場合は戸籍謄本
- 本人のみの場合はパスポートの写し
- 年金証書や年金手帳の写し
- 合衆国の社会保障番号(Social Security Number)カードの写し
などが必要です。
提出時に年金事務所などに問い合わせるといいでしょう。
注意点は、年金の支給開始年齢が日本と異なっていることです。
アメリカの年金の支給開始年齢も日本同様段階的に引きあがっており、昭和35年生まれの方は67歳から受け取ることができます。
日本で厚生年金に1年以上加入されている方ですと、男性で64歳から、女性で62歳から原則として特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。
男性の方であれば日本の年金がもらえる権利が発生した3年後にならないとアメリカの年金はもらえません。
ちなみに、アメリカの年金は、支給開始年齢(67歳)の3か月前から請求の手続きをすることができます。
税金面の注意点 確定申告不要制度はない
さらに、アメリカの年金を受け取った場合に注意することがあります。
日本の年金を受け取っている人は、年金収入が400万円以下でその他の所得が20万円以下であれば確定申告をしなくてもいいという「確定申告不要制度」があります。
しかし、これはあくまで日本の年金に限定されていますので、アメリカの年金を受け取る場合には確定申告が必要です。
まとめ
もし過去にアメリカで勤務をしており年金をかけていたことがあれば、アメリカの年金を請求することができる場合があります。
気になる方がいれば年金事務所などでご相談いただくといいかもしれませんね。
では。