税金や社会保険には「扶養」という考え方があります。
扶養になりますと税金や社会保険の負担を減らすことができますが、両者には要件の違いがありますので今回まとめてみたいと思います。
【事務所お知らせ】前提条件
今回は、夫が社会保険に加入している正社員、妻がパート等で働いているご夫婦を例に書いてみました。
税金の扶養
夫の扶養となる妻は、民法上の配偶者であることが必要です。
つまり、婚姻関係にあることが必要で事実婚はダメです。
夫の扶養となっている妻は、所得税や住民税の負担が少なくなります。
また、夫本人が所得税の確定申告をする際には配偶者控除(または配偶者特別控除)を受けることができます。
所得(収入)額を計算するときには1/1~12/31までの1年間で判断をします。
妻がパート収入のほか年金を受取っている場合、
- 老齢年金:課税(税金がかかる)
- 障害・遺族年金:非課税(税金はかからない)
となります。
夫が受ける配偶者控除は、妻のパート収入が103万円以下であれば38万円控除できます。
妻のパート収入が103万円を超えて150万円までは配偶者特別控除となりますが控除額は38万円です。
妻のパート収入が150万円を超えると配偶者特別控除は段階的に少なくなり、201万円を超えますと配偶者特別控除は0円になります。
そのため、妻は夫の税金について扶養を外れることになります。
このほか、妻のパート収入が100万円を超えると妻自身が住民税を納めます。
住民税は、所得割10%と均等割を合わせた税金を支払うことになります。
ここで妻の収入金額と税金との関係についてまとめておきたいと思います。
妻の収入 | 妻の税金 | 夫の配偶者控除(配偶者特別控除) |
100万円を超えたら | 住民税がかかる | 配偶者控除38万円 |
103万円を超えたら | 所得税+住民税がかかる | 配偶者控除0円 →配偶者特別控除38万円 |
150万円を超えたら | 配偶者特別控除38万円から段階的に少なくなる | |
201万円を超えたら | 配偶者特別控除0円 |
社会保険の扶養
社会保険において夫の扶養となる妻は、夫と婚姻関係にある必要はなく事実婚でも可能です。
妻が夫の社会保険の扶養になりますと、妻は健康保険料の支払いをしなくても保険給付(医療費3割など)を受けることができます。
社会保険の扶養の要件は、妻の収入が130万円未満で夫の収入の1/2未満であることですが、妻が60歳以上なら180万円未満と緩くなります。
ここでいう収入とは、扶養の認定を受けた日以降の年間の見込み額をいいますので税金(1/1~12/31の1年間)との考え方が異なっています。
このほか、社会保険の扶養における収入には障害や遺族年金の金額も含まれます。
例えば、妻がパート収入のほか年金を受取っている場合、
- 老齢年金:収入に含まれる
- 障害・遺族年金:収入に含まれる
となりますので、こちらも税金との考え方が異なっています。
このほか、妻が60歳未満の場合、夫の扶養に入っていますと国民年金の第3号被保険者となっています。
もし夫の扶養から外れた場合には、第1号被保険者へ切り替えて自分で保険料(国民年金・国民健康保険)を払っていくことになります。
このほか、妻が特定適用事業所に短時間労働者として働いていたら勤務状況によっては130万円未満の収入であっても扶養に入ることができません。
この場合には、妻が自分で社会保険(厚生年金・健康保険)に加入をすることになり保険料を支払うことになります。
特定適用事業所とは、従業員が101人以上(令和6年10月からは51人以上)の事業所で、
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月の給与が8.8万円以上
- 雇用期間が2か月以上見込まれる
という要件をすべて満たした労働者であれば、社会保険への加入を求められます。
月の給与8.8万円×12か月=1,056,000円ですので、年間収入で106万円までなら要件を満たしません。
ここで、妻の収入金額と社会保険の扶養との関係についてまとめておきたいと思います。
妻の収入金額 | 夫の社会保険の扶養 |
106万円を超えたら | (特定適用事業所に短時間労働者で勤務している妻) 夫の社会保険の扶養から外れる ・妻が厚生年金・健康保険に加入して保険料を払う |
130万円を超えたら | 夫の社会保険の扶養から外れる(妻60歳未満) ・国民年金の3号から1号へ切り替え ・妻が国民年金・国民健康保険に加入して保険料を支払う |
180万円を超えたら | 夫の社会保険の扶養から外れる(妻60歳以上) ・国民年金の3号から1号へ切り替え ・妻が国民年金・国民健康保険に加入して保険料を支払う |
まとめ
今回は、税金と社会保険における扶養について書いてみました。
両者の要件が異なっていることから混乱される場合もあるのかなと。
相談を受ける側も、どっちの扶養のことを言っているのか聞き取らないとミスをしてしまう可能性があります。
参考になれば幸いです。
では。