ご夫婦で年金相談にお越しになるときには、年金記録を確認させていただきアドバイスさせていただくこともあります。
しかし、ご夫婦のうちどちらかが年金請求を忘れていた場合には年金が過払いになってしまい返還を求められることがあります。
そのケースを今回ご紹介してみたいと思います。
ご夫婦とも厚生年金20年以上加入の場合
ご夫婦とも年金請求時点で厚生年金20年以上加入されている場合は注意が必要です。
例えば、今現在夫70歳、妻65歳のご夫婦がいて、夫は61歳時点で特別支給の老齢厚生年金をもらっておりその時点で厚生年金に20年以上加入しています。
夫は65歳以降現在まで老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取っています。
一方、妻も61歳時点で特別支給の老齢厚生年金をもらう権利があり、妻もその時点で厚生年金に20年以上加入しています。
しかし、実際妻は65歳の今まで年金を請求していませんでした。
ここまでを図解してみます。
この場合、妻と夫ともにある問題が発生してしまいます。
妻の問題点
妻が65歳になった令和6年10月に請求をした場合には、本来の年金請求時点である61歳にさかのぼって年金を受け取ることができます。
もし今現在でも妻が在職中なら在職老齢年金の調整を受けることになります。
また、さかのぼって受け取る4年分の年金は一括受給です。
しかし、税金を計算する元となる所得はそれぞれの年で発生していると考えますから、毎年の所得に上乗せして計算されることになります。
そのため、所得税の修正申告を税務署へ行う必要がありますし、それにともなって住民税が再計算されるため住民税の追加支払いや保険料に影響を与えます。
夫の問題点
妻が61歳時点で請求せずに65歳で請求をした場合、一見妻にしか影響がなさそうに見えます。
しかし、夫は61歳時点で厚生年金に20年以上加入していますので、夫65歳から妻65歳または年金を受け取る権利が発生するまで夫に配偶者の手当(加給年金)がつきます。
妻も61歳時点で厚生年金20年以上加入していますので、夫65歳から妻61歳で年金を受け取る権利が発生するまでしか本来加給年金はつきません。
しかし、妻は61歳時点で請求をしなかったため夫に加給年金がつきっぱなしになってしまいます。
妻が65歳になって年金を請求した場合には、妻61歳から現在まで夫についていた加給年金は本来つけてはならなかったため過払いの状態になります。
過払い分は夫が一括返還するか老齢年金の1/2などを将来にわたって返還することになります。
【事務所お知らせ】支給開始年齢で必ず請求をすること
老齢年金は、支給開始年齢になりますと年金請求書や案内の入った緑色の封筒が送られてきます。
その際、自分の勝手な判断で(友人に聞いたからも危険です)請求しないということがないようにしましょう。
もしわからなければ年金事務所や街角の年金相談センターで相談をしてください。
今回のようなご夫婦がともに厚生年金に20年以上加入されている方で加給年金の返還を求められる事例が発生するのは、夫婦の一方が請求を忘れているケースです。
忘れている場合のほか、今は請求しなくてもいいと勘違いしている場合もあります。
ねんきん定期便を見て65歳以降の年金が一番高いからその時点で請求すればいいと思っていると今回のようなミスをしてしまいます。
また、65歳になるまでの特別支給の老齢厚生年金は請求をしないともらえません。
置いておいて増やす「年金の繰下げ」の制度は特別支給の老齢厚生年金にはないのです。
放っておいて5年たったら時効により年金をもらえる権利がなくなってしまいます。
まとめ
今回は、ご夫婦ともに厚生年金20年以上加入されている方で支給開始年齢時に手続きをしなかったことによって生じる問題を解説してみました。
緑色の封筒をそのままご持参いただく方もいるくらい中身を読んでもわかりにくいものかもしれませんので、わからなければ窓口にお越しいただいたほうがいいです。
その際には事前に予約をしていただくと年金記録の確認からスムーズに対応できます。
では。