夫婦のうち、夫が亡くなり残された妻で子どもがいない(またはいても高校卒業している)場合には、一定の要件を満たせば遺族厚生年金をもらうことができます。
この場合、65歳前後で遺族厚生年金が大幅に減る可能性があります。
遺族厚生年金とは
遺族厚生年金とは、一般的に、
- 在職中に死亡した場合
- 老齢厚生年金の権利を有している方または受給資格期間を満たしている方が死亡した場合(=25年以上の加入が必要です)
に亡くなった配偶者が受け取ることができます。
例えば、厚生年金に25年以上加入していた夫が亡くなった場合には、妻に遺族厚生年金が支給されます。
遺族「厚生年金」というくらいですから厚生年金に加入されていた期間があることが必要です。
一方で、遺族基礎年金はというと、子どもがいれば18歳年度末まで遺族厚生年金に上乗せされて支給されます。
ちなみに、在職中に死亡した場合には、保険料を納付していたかどうかが確認されます。
また、遺族年金を受け取る妻の前年の収入が850万円を超えている場合には支給されません。
遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4となっています。
【事務所お知らせ】中高齢寡婦加算
夫婦のうち、夫が以下の理由で死亡した時に、妻が40歳以上であれば遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が上乗せされます。支給されるのは妻65歳になるまでです。
- 夫が在職中に死亡
- 厚生年金を20年以上かけていた夫が死亡
中高齢寡婦加算は、年間612,000円(令和6年度)となっています。
この場合、妻本人が老齢厚生年金を受け取ることができるようになると、65歳になるまでは妻本人の老齢厚生年金と遺族厚生年金+中高齢寡婦加算との選択になります。
夫婦の在職中の給与や厚生年金加入期間にもよりますけど、一般的に遺族厚生年金+中高齢寡婦加算のほうが金額が多くなります。
また、老齢年金は雑所得として税金の課税対象になりますが、遺族年金(中高齢寡婦加算を含む)は非課税ですので所得になりませんから税金面でも有利です。
妻が遺族厚生年金+中高齢寡婦加算を受け取っている場合、妻本人の老齢年金の請求書を提出するときに合わせて年金の受給選択申出書を提出していただくことになります。
妻が65歳になると…
妻が65歳になりますと、中高齢寡婦加算が消滅してしまいます。
昭和31年4月1日以前生まれの妻には経過的寡婦加算が支給されますけど大幅に減ってしまいます。
なぜそうなるのかというと、妻が65歳になると遺族厚生年金と妻本人の老齢基礎年金が調整されずに両方受け取ることができるからです。
一方で、遺族厚生年金と老齢厚生年金両方を受け取る権利がある妻が65歳になりますと、妻の老齢厚生年金が優先的に支給されます。
もし老齢厚生年金のほうが遺族厚生年金より大きかったら、遺族厚生年金は全額支給されません。
一方で、遺族厚生年金が老齢厚生年金より大きかったら、遺族厚生年金は差額しか支給されません。
例えば、妻が受け取る遺族厚生年金が100万円、老齢厚生年金が60万円だった場合には、
- 老齢厚生年金60万円:全額支給
- 遺族厚生年金40万円(100万円ー60万円):差額支給
- 老齢基礎年金:全額支給
妻本人の老齢基礎年金は調整されませんので通常通り全額支給されます。
税金や保険料に影響を与える
65歳以降、自分の老齢厚生年金を優先的に支給させるようにしているのは、税金が課税される所得を増やしたいという国の思惑があると考えられています。
老齢年金は雑所得として税金の課税対象となる一方で、遺族年金には税金はかかりません。
そのため遺族年金よりも老齢年金を支給して税収を確保したいという目的があります。
まとめ
今回は、遺族厚生年金について書いてみました。
65歳以降遺族厚生年金に変化が現れます。
- 遺族厚生年金に加算されていた中高齢寡婦加算がなくなる
- 妻本人の遺族厚生年金が優先的に支給され遺族厚生年金が差額しか支給されない
この2点がポイントとなります。
では。