日本人が海外で得た所得については、日本で得た所得とともにすべて税金がかかります。
一方、海外では日本人は非居住者となりますが、現地で得た所得に対して現地の税金(外国所得税)がかかります。
この場合、日本と海外との二重課税を調整するため外国税額控除を受けることができます。
しかし、日本と海外の国との間で租税条約が結ばれている場合どうなるのでしょうか。
外国税額控除と租税条約
日本人が外国で外国所得税を納めることになる場合には、日本で外国税額控除を受けることができます。
外国税額控除があるのは日本の所得税法に規定されていますが、外国との間で租税条約があればそちらが優先されることになります。
日本が租税条約を締結している外国において課されている外国所得税のうち、
①外国所得税の軽減または免除の規定がある租税条約があること
②租税条約で決められた税率(限度税率)より海外において課税することができる額を超える部分の金額または免除することとされる金額がある
②租税条約で決められた税率(限度税率)より海外において課税することができる額を超える部分の金額または免除することとされる金額がある
この場合には、外国所得税であっても外国税額控除を受けることができません。
②については、租税条約で定められた限度税率を超えた部分の税額は外国税額控除は受けられません、ということを意味しています。
事例
事例をもとに取り扱いを考えてみたいと思います。
私は日本人です。個人でゲームソフトの制作を行っており、カナダにあるゲームソフト販売会社にゲームソフトを提供し、同販売会社から著作権の使用料(ゲームソフトの使用料)を受け取っていました。しかし、日加租税条約に基づく届出書を提出していなかったため、収入100万円から源泉所得税(収入の25%)が控除されていました。私は日本で確定申告を行うときに、カナダで控除された税金25万円を外国税額控除で控除することができますか?
私は日本人ですので、日本で得た所得も海外で得た所得もすべて課税対象ですので、カナダの著作権使用料収入も課税されます。
カナダでは非居住者となりますが、カナダの税制では非居住者に対する著作権使用料の支払いの際には25%の税率で源泉徴収(=外国所得税の納付)されます。
カナダの所得税(外国所得税)を納付することになる場合には、日本とカナダとの二重課税を調整するために外国税額控除を受けることができるのが原則です。
一方で、カナダからの著作権使用料収入については租税条約の検討が必要になります。
日加租税条約によると著作権使用料に関する限度税率は10%とされています。
カナダで課された所得税額のうち、租税条約で定められた限度税率を超えた部分の税額は外国税額控除は受けられません。
つまり、「カナダで課された25%ー限度税率10%=15%」が限度税率を超えた部分の税額となり15%分は外国税額控除はできません。
一方で、日加租税条約の限度税率である10%分は外国税額控除を受けることができますから、確定申告で外国税額控除の対象とできる金額は10%の10万円です。
確定申告の際に気を付けること
租税条約で外国所得税が軽減または免除が適用される場合には、その適用があったものとした軽減または免除後の外国所得税額で外国税額控除の計算を行います。
つまり、先ほどの具体例ですと、25%で源泉徴収されていたとしても租税条約を適用した限度税率10%で外国税額控除の計算を行う、ということです。
まとめ
今回は、外国税額控除と租税条約との関係について書いてみました。
居住判定⇒日本の所得税法の検討⇒租税条約の検討
という流れで考えていくことになりますが、外国税額控除は日本の所得税法で定められている話ですから、租税条約の規定があれば修正が加わります。
では。