障害者特例と税金への影響~障害年金との違い

障害年金とは年金制度に加入中の病気やケガで一定の障害を負ったときに請求することで受け取れる年金です。

一方で、65歳前の老齢厚生年金の特例的な制度として障害者特例と呼ばれるものがあります。

両者の違いと税金への影響について今日は書いてみたいと思います。

障害者特例とは?

65歳までの老齢厚生年金には、障害等級3級以上の障害であれば報酬比例部分のほか定額部分が加算されます。

報酬比例部分とは、お勤めいただいていた方が厚生年金に加入されていた期間と給与やボーナスの金額に基づいて計算されるものです。

定額部分とは、65歳からもらえる老齢基礎年金部分の金額で年間で約820,000円です。

例えば、64歳で老齢年金を請求することができる男性の場合に障害者特例を請求することで本来65歳からしかもらえない老齢基礎年金部分を1年早めてもらうことができます。

この障害者特例は、現在厚生年金に加入していない(退職していること)が条件となっています。

障害者特例は障害等級3級以上となっていますので今現在障害年金をもらっている必要があるのかというとそうではありません。

障害年金を受けていなくても障害等級3級以上「程度」の障害状態であれば障害者特例の請求をすることができます。

しかし、障害年金を受けていない方が障害者特例を請求する場合、手続きをした翌月分からの受取りとなりますので手続きが遅れた場合損をしますので注意が必要です。

あと、厚生年金の加入期間が12か月以上あることが必要となります。

【事務所お知らせ】  

障害者特例を請求する場合

障害者特例を請求するときには、厚生年金保険障害者特例・繰上げ調整額請求書(様式401号)の提出が必要です。

書類自体は年金事務所に備え付けられていますので請求したい場合には年金相談を合わせて受けていただくと書類の書き方も案内してもらえます。

障害年金をこれまで請求されていない場合には、初診日から1年6か月を経過した診断書の提出が必要です。

診断書には請求日前3か月以内の障害の状態(現症日)を記載したものが必要ですので医師に診断書を書いてもらう際には注意したいところです。

この診断書は年金専用の診断書であり年金事務所でもらうことができます。

障害年金のように初診日要件や保険料納付要件は問われません。

障害年金と障害者特例は選択

障害年金を現在受け取っている方については、障害者特例による老齢年金との選択になります。

老齢年金を請求できるようになった時にはもらえる金額の有利なほうを選択するのが一般的ですが税金面に影響を及ぼします。

税金面の有利不利

障害年金は老齢年金とは異なり所得税や住民税といった税金はかかりません。

しかし、障害者特例による老齢年金はあくまで老齢年金の範囲なので、所得税や住民税といった税金がかかります。

老齢年金の所得(税金をかける前のもうけ)の計算式は以下の通りです。

老齢年金収入ー公的年金等控除額=老齢年金所得

このうち公的年金等控除額とは、

  • 65歳未満:60万円
  • 65歳以上:110万円

が最低額となっています。

障害者特例による老齢年金は65歳より前に受け取ることになりますので60万円しか控除してもらえません。

したがって、65歳になるまでの間所得が増えてしまうことになり税金の負担というのも考えないといけない可能性があります。

ただ、65歳以降は基礎年金と厚生年金両方が支給開始になったり選択範囲も広がりますので65歳になるまでの期間限定の影響だという認識でいいと思います。

まとめ

年金相談の現場では、障害年金をもらっていないけど障害状態にあるだろうと思われる方がお越しになられます(例えば、車椅子に乗っているとか、杖を突いて歩いている)。

なるべくお声かけをして障害者特例の制度のご案内はするようにしていますが、あまり浸透していないように感じますのでご紹介してみました。

では。

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