税務調査は、事前に申告している法人や個人事業主だけに調査をするわけではありません。
申告をしていない法人や個人事業主に調査が入ることもあります。
申告していないのになぜ調査が来るの?税務署がなぜ申告していないことを知っているの?
そう思ってしまうのも分かりますが、
申告しなければならないのにしていない場合、いつか必ずバレてしまいます。
そのことについて今回は書きたいと思います。
無申告者に対する調査状況
国税庁ホームページには、無申告に対しての調査状況が掲載されています。
国税庁ホームページ 無申告に対する調査状況
ここでは、所得税と消費税のみですが、当然申告が必要な法人税や相続税・贈与税もあります。
この無申告者の調査は、毎年国税庁が重点的に取り組むべき施策として取り上げられています。
(主な取り組み)
1 富裕層に対する調査状況
2 海外投資等を行っている個人に対する調査状況
3 インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
4 無申告者に対する調査状況
引用:令和元年11月 国税庁 平成30事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について
( 主要な取組)
1 海外取引法人等に対する取組
2 無申告法人に対する取組
3 消費税還付申告法人に対する取組
引用:令和元年11月 国税庁 平成30事務年度 法人税等の調査事績の概要
(調査に係る主な取組 )
1 無申告事案に対する調査状況
2 海外資産関連事案に対する調査状況
3 贈与税に対する調査状況
引用:令和元年12月 国税庁 平成 30 事務年度における相続税の調査等の状況
つまり、無申告者の調査は必ず行われています。
ここでは、私が経験している法人税調査を中心にお伝えしますが、個人事業主の関係する所得税と消費税も同じだと思っていただいていいかと思います。
無申告の状況を税務署が知る場合
取引先の税務調査により把握
一番これが多いかと思います。
調査法人などが無申告者に外注費を支払っている場合に、相手先の氏名や住所、連絡先などを詳細に確認し無申告者かどうかを確認することがあります。
外注費を受け取る無申告者は、本来売上計上して所得が出るわけで、通常は申告が必要です。
しかし、それが出来ていないとなると、その情報が税務署内で共有され調査となります。
調査法人の確定申告書や支払調書より把握
確定申告書の「勘定科目内訳書」や支払調書から取引先に不審な者がいないか確認します。
調査時にその不審な取引先につき聞き取りを行い無申告者かどうかを確認しています。
また、ある時期まで申告していたのにここ数年無申告であるという法人などは、過去の確定申告書から情報の蓄積を行っていて、銀行口座も把握していることがあります。
数年後、調査が行われると思っておいていいでしょう。
無申告調査の場合、5年間行われることが多いです。
かなり多額の税金を支払うことになりますので注意しましょう。
無申告なのに、源泉所得税だけ納付している法人もありました。
そういうのは、過去から情報が蓄積されていますので、いつかは調査されます。
情報提供(外部や税務職員から)
外部から税務署宛てに匿名で文書が届き、申告していないのではという情報が来たりします。
もちろん鵜呑みにせずじっくり調べてから調査に行くかどうか判断します。
これよりも、税務職員から情報が来る場合が多いです。
広告類やインターネットから調べてくるものです。
よく広告が新聞受けに入っていたりしますよね?
あの会社や所在地などを税務署内で調べて情報を共有したりしています。
無申告者が全国展開している取引先があれば、その管内の税務職員からの情報だけでなく全国の税務職員から情報が集まってきます。
あと、これは私が実際経験した話です。
ある法人が無申告者で、統括官は何度か会社を訪れたものの会社が営業している形跡がなく、稼働状況が不明のまま数年が過ぎており、調査に着手しようか迷っていました。
その会社は運送屋でして、トラックを持って配達しているということでしたが、そのトラックすら見つけられないでいたそうです。
過去の申告書から売上の推計は5千万円。どう考えても毎年所得が出る法人でした。
部門内で情報を共有して、何か情報がほしいとのことでした。
数日後、私が早朝に税務署へ通勤しているとき、ちょうど交差点を曲がる一台のトラックの車体に無申告法人の名前があるのを見かけました。
荷物を載せ、運転手が運転しているのを目撃したのです。
そのことを統括官に伝えて調査に着手することになりました。
会社の話として、運送はほぼ早朝や深夜だけでトラックは別のところに置いてあるということで、日中は会社は閉めているような状況だったらしいです。
結局、最終的に5年間で数千万円の所得が発生し、数百万の納税となってしまいました。
ちょっとした情報でも、調査に発展することがあるのだなと実感した出来事でした。
対応策
「申告しましょう」。
まずこれが一番大事です。
税理士がいないから申告書が作れない、仕事が忙しく時間がない、は理由になりません。
税理士に頼まず自分で申告するのは結構ですが、意外と後で修正させられることも多いので面倒なこともあります。
できれば税理士に関与してもらいましょう。
無申告であった場合に、後日申告書を提出すると加算税という罰金が科されます。
本税の5%から25%の間で課税されます。
早く気づけば5%で済みますが、調査が入ると15%となり、5年間の間にまた無申告を繰り返してしまうと10%上乗せされ25%となります。
申告が必要だと思ったけど忘れていた。だったらできるだけ早く申告しましょう。
その時は税理士などに早めに相談しましょう。
その際は、銀行通帳や請求書・領収書などはきちんと保存しておくことが前提です。
それがないと金額の集計ができませんからね。
まとめ
無申告調査については、資料がそろっていないケースや破棄されているケースがあったり、税理士がそもそも関与していないために管理できていないなど、相当な時間がかかります。
また、いざ無申告者に調査に入ったものの所得金額がなく、時間がかかる割に成果が出ないこともあり、調査としては避けたいというのが本音のようです。
しかし、調査という形以外にも問い合わせという方法もあります。
問い合わせに応じないとやはり調査に入ります。
いつか来る無申告者の調査。早めに申告しておきませんか?
では。
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