コロナの感染が始まってから、税務調査の方法もずいぶんと変化してきています。
これまでの調査はというと個人事業主のところへ訪問して行う「実地調査」がメインでした。
しかし、コロナの感染拡大によりこの調査もできなくなってきています。
そこで今回は、今後の調査の方法や予測を踏まえて書いてみたいと思います。
ポイントは「誰でも調査される可能性がある」ということです。
従来の調査方法
コロナ前の調査方法は、基本的に実地調査がメインでした。
実際に調査官がお伺いして、その場で事業主と話し合い申告書や決算書を作成するもととなった請求書や領収書などの証拠書類の確認を行うというものでした。
調査を行うということは、実際に現場に赴くということを意味していました。
しかし、コロナの感染拡大によって従来どおり事業主のもとにお伺いするということが難しくなってきました。
事業主に感染すると問題になりますし。
税務署側も職員の感染を恐れ、職員を自宅待機させる・リモートで仕事をさせるなど調査に従事できる職員が少なくなってしまいました。
実際に、昨年より大幅に実地調査の件数は減っています。
また、調査にお伺いする日数も従来は丸1日ないしは2日かけていましたが、これもできなくなってきました。
調査にお伺いしても短時間で終わらせるという工夫も必要になってきたのです。
税務調査がなくなる??
では、実際に事業主のもとにお伺いする実地調査がまったくなくなるのかというとそういうわけではありません。
つまり、税務調査自体は何かしら行われるということ。
そこで生まれたのが、文書を送付し修正させる・電話をかけるという方法です。
これですとわざわざ事業主と長時間対面することも少なくなりますし、調査官側も短時間で終了させられるというメリットがあります。
文書・電話は誤りが少ない事業主向け
文書や電話で回答を求めるものは比較的軽微な誤りで済みそうな事業主向けに行われると思っています。
- 申告書の数字の転記誤り
- 明らかな税法の適用誤り
- 記載誤り
など、特に判断に迷わない・明らかに誤りがあるものに関してはこの方法が取られます。
私が危惧しているのは、少しでも誤りがありそうだと想定される事業主全員に文書を送付したり電話をかけたりできるということです。
本来の実地調査ならスルーされるだろうなという細かな誤り・金額が少額であるものまで取り扱うことができるのではないかなと。
この文書や電話は実際には調査ではないですけど、これも調査方法だととらえると対象となる事業主が大幅に増えるのではないかなと思われます。
ようは誰でも調査を受ける状況にあるということです。
これまでずっと誤って申告していたかもしれないけど金額的に少額だったからスルーされていたという事業主まで対象に入ってきてしまうのです。
実地調査が来るのは問題のある事業主
では、実地調査はまったく行われないかというとそうではなく、件数は少なくなるものの、
- 確実に誤りがあると認められる
- 不正常習者
- 逃げそう
- 文書や電話に回答しない
という、明らかに怪しいな・問題があると想定されている事業主です。
言葉は悪いですけど「行けば確実にモノになる」という案件が対象になってくると思われます。
実地調査にかける時間は従来より相当かかると思われます。
だって、件数が少なくなる分、深い調査ができるのですから。
ひょっとしたら従来は1日だけしか伺っていなかった調査が2日・3日と伸びてくるかもしれません。
また、従来は税務調査に来る調査官は1人が基本でした。
しかし、調査を短時間で終わらせることと1人だけだと負担感が増すので2人以上で調査が行われるようになっています。
そうなると、1人で行っていた実地調査よりはるかに時間もありますし1人あたりで見られる分量も増えますので、細かなチェックがされるということも考えられます。
実地件数は少なくなるけど、深い長期間の調査を予定しないといけないのかなと思います。
文書・電話で件数かせぎ
従来はあまり調査に行かないような事業主も文書や電話で回答させればそれで終わります。
そうなると調査件数が少なくても実績としては十分残せます。
過去には「件数稼ぎ」のようなことが行われていたことがあります。
1年間に何件調査しろと指示され、実際に調査しても何も問題がないようなところまで調査に行っていたこともあります。
しかし、今後はそういうところは文書や電話で確認すればそれで済みますから、本当に誤りがある・怪しいところに絞って調査をすればいいわけです。
今後ますますこの傾向は強まっていくと予想します。
まとめ
今回は今後の調査方法について書いてみました。
この文書や電話で回答させる方法は、労基署や年金事務所では従来から行われていました。
しかし、今後は本当に怪しい・誤っている事業主だけを訪問するという方法に変わっていくでしょう。
どこも同じです。
これまで大丈夫だったから、は通用しなくなります。
そこは注意していただければと思います。
では。
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