「事業所得=収入金額ー必要経費」から税務調査の誤り例を検討してみる

個人事業主の方は、確定申告をする際には事業所得として確定申告をすることになります。

事業所得とは、事業から生じたもうけ(所得)にかかるもので、1年間に得た収入金額からかかった経費を差し引いて計算していきます。

税務調査では基本的に集計した収入金額や必要経費が正しいかというところがチェックされます。

そこで税務調査で誤りとして指摘されやすい点について収入金額と必要経費という2つの分野に分けて説明してみたいと思います。

間違いやすいものや勘違いしやすいものを取り上げました。

収入金額から誤りが見つかる例

収入金額は実際に入金した額だけでなく、年末までに取引が終わっていてもまだ入金がないものも売上として計上する必要があります。これを期ずれといいます。

この「売上の期ずれ」が誤り例としては多いです。

対策としては、年末年始3か月(特に年明け3か月程度)に先方に渡した請求書控えや領収書控えを確認して12月末までに売上に計上すべきものがないかを確認しておきます。

また、現金商売をしていると領収書を発行したものだけしか計上せず、意図的に収入に計上しないことがあり、それは脱税行為となります。

対策としては、領収書は必ず発行することです。ただもし発行できない場合や紛失してしまった場合は、日付・相手先・取引内容・金額をメモし保管しておく必要があります。とにかくきちんと記録を残しておき適正に計上することが大切です。

ほかに意外とあるのは、事業に付随した収入を計上し忘れるという場合です。

鉄くずの売却・自販機の収入・家事消費(家業の商品を使った)などがあります。

こういうものは領収書がある場合はきちんと保管すること、自販機や家事消費は領収書はないことが多いと思いますので、メモに記録を残して保管するといいと思います。
ここまで見てきたとおり、収入で問題となるのは入出金の記録の跡がつかない「現金取引」です。
振込みですと銀行口座に入出金の記録があるので、計上もれは減っていきます。
しかし、現金取引は計上もれが起きやすくなりますので注意が必要です。

必要経費から誤りが見つかる例

実は個人事業主が一番きちんとやっておいてほしいなと思うのが「必要経費の管理」です。

なぜなら、調査官は準備調査というものをしてから税務調査にやってきます。

事前に申告書や決算書を見て、問題点がないかどうかを検討してくるのですが、事業所得における決算書を見ていただくと仕入以下経費科目がたくさん羅列されています。

経費科目が事前に羅列されているので調査官としても過去の比較が容易にできます。

もしある科目の金額が上下変動していたらあれ?っと気づきます。

調査前に一番チェックされる項目が必要経費なのです。

経費にも単なる誤りと不正行為とがあります。

以下、各項目ごとにざっくりとまとめてみたいと思います。

仕入や外注費

仕入や外注費は、売上との対応関係が問題となります。

売上にかかる分の計上が適正かどうか。

売れ残った場合の在庫計上は正しくできているか。

あと、年末までに外注費を支払ったけどまだ仕掛中のものがあると経費にできない部分が出てきます。

つまり全額経費にできないこともあるということです。

不正行為としては、架空の領収書や請求書を使って経費を水増しすることです。

架空で仕入れたり、存在しない外注先の領収書などを作って支払ったかのように偽装し、そのお金を自分の懐に入れてしまうのです。

対策としては、先方から受け取った請求書・領収書をきちんと保管しておくこと。在庫管理表を作成して保管しておく。廃棄した場合は廃棄証明書を保管するなど、やはり書類管理が重要となります。

人件費

従業員に対して給与を支給している場合は人件費が発生します。

この場合問題となるのは、架空人件費と源泉徴収もれです。

架空人件費とは、存在しない従業員に給与を支払ったと偽装しそのお金を自分の懐に入れてしまうというものです。

給与を支払う際には、原則扶養控除等申告書を提出してもらい給与から天引き(源泉徴収)をする必要があります。

それを逆手にとって、扶養控除等申告書を作り源泉徴収をしておけば存在しない人でも人件費として経費にできると考え意図的に計上してしまうのです。

これは完全な脱税行為です。

源泉徴収のもれはよくアルバイトを雇っていると起きやすいです。

税額表の使い方が間違っているなどです。

あとは給与と外注の判断です。

正直この判断は非常に難しいので調査官ともめる原因になります。

調査官のいいなりになるのではなく、どうして給与と判断したかを反論できるようにすることです。

対策としては、給与計算の管理と扶養控除等申告書の保管です。源泉徴収をしたら納付書の控えが手元に残っていますので、すべてを照らし合わせながら確認をしておきます。

その他経費

その他経費とは、旅費交通費や交際費、地代家賃や通信費などです。

これらの経費はまず事業に関係のないものまで経費として計上しないことです。

多いのは、プライベートで使ったものまで経費に計上してしまうことです。

「領収書(レシート)があるからすべて経費でしょ!」ではありません。

あくまで事業で使ったものだけしか経費にできません。

ただ、プライベートでも事業でも使う場合は合理的な区分で按分して事業分を経費とすることができます。

合理的な区分というのは明確に決まっているわけではありません。

自宅兼事務所で地代家賃を払っている場合、事務所で使っている部分の床面積・コンセントの数・電気量などで按分することがあります。

ここで大事なのは、按分した根拠を残しておくことです。

どう按分したのか、計算根拠などを記録しておき調査官から質問が来た時に答えられるようにしておきます。

これくらいの割合だろうという、漠然とした按分割合は調査官は嫌います。

合理的な方法の「合理的」っておそらく誰が見ても判断できるだろうということかもしれませんね。

対策としては、先方から受け取る領収書や請求書をきちんと保管しておくことです。領収書はレシートでも当然かまいません。あと、プライベート用と混在しやすいもの(交際費など)は、領収書に直接メモ書きで誰と何のために会食したかを書いておくこといいでしょう。もちろんカレンダーなどに記録しておいてもいいでしょうし。

経費全般に言えることですが、根拠もなく計上するのがよくないのです。

根拠がある・請求書や領収書などの資料が保管しているからこそ計上できるもの。

なので、むやみやたらにすべてを経費にできるというのは完全に誤りとなります。

注意しましょう。

まとめ

今回は、事業所得を計算する式から、税務調査で問題となることをまとめてみました。

もちろん提出された申告書から問題点が出てくることがあります。

扶養控除や配偶者控除の誤り・税額控除の誤りなど。

しかし、まず最初は事業をした結果として決算書を作成するわけです。

その内容を調査官は重視しています。

申告書はそのあとです。

まず決算書をどう作成したのか。

その部分をしっかり検討していきましょう。

では。

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