まだ1月ですが、実は年金分野では大きな改正が待ち構えています。
令和4年4月から、
- 繰上げ減額率が変更
- 繰下げ支給の上限年齢が75歳に
- 65歳未満の在職老齢年金の見直し
- 在職定時改定の導入
- 年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替え
が主なものです。
今回は、多くの方に影響のありそうな年金の改正についてまとめてみたいと思います。
繰上げ減額率が変更
令和4年4月1日以降60歳になる人(昭和37年4月2日以降生まれ)の人から、繰上げ支給の減額率が、1か月あたり0.4%に改正されます。
ただし、昭和16年4月2日~昭和37年4月1日以前に生まれた方(すでに60歳を超えている方)の減額率は、令和4年4月以降も改正前と変わりません。
つまり、生年月日で減額率が異なりますので注意が必要になります。
生年月日 | 減額率(1か月あたり) | 最大 |
昭和37年4月2日~ | 0.4% | 0.4%×60か月=24% |
昭和16年4月2日~ 昭和37年4月1日 |
0.5% | 0.5%×60か月=30% |
ただし、この改正は平均余命が伸びたことにより変更になったもので、繰上げ支給に伴う注意点に変わりはありません。
余談ですけど…
昭和生まれの方の生年月日を計算するときに、
- 平成から昭和へ変換⇒平成の年の数に「+63」
- 令和から平成への変換⇒令和の年の数に「+30」
- 令和から昭和への変換⇒令和の年の数に「+93」
をすると計算できます。
令和4年を昭和に直すと⇒4+93=昭和97年
昭和97年ー昭和37年=60歳
と計算できます。
年金の加入月を計算するときも使えます。
繰下げ支給の上限年齢が75歳に
現在、繰下げ支給ができるのは70歳までですが、令和4年4月から75歳まで延長されます。
延長できるのは、令和4年4月1日以後70歳になる、昭和27年4月2日以降生まれの方です。
繰下げ率は現在と同じ、1か月あたり0.7%です。
65歳未満の在職老齢年金の見直し
現在、在職老齢年金の支給停止となる基準額は、
65歳未満:28万円
65歳以上:47万円
と65歳を境に大きな差が出ています。
令和4年4月からは、65歳未満の方も47万円に改正され、在職老齢年金の支給停止となる基準額はすべて47万円に統一されます。
65歳未満の在職老齢年金の支給停止額の計算式
(年金月額+総報酬月額相当額-28万円)×1/2
↓令和4年4月~
(年金月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2
・総報酬月額相当額
=給料(標準報酬月額)+直近1年の賞与(標準賞与額)×1/12
これにより65歳未満の在職者のうち、年金の支給停止になる人は大幅に減ると予想されています。
在職定時改定の導入
現在、65歳以降在職した場合(厚生年金に加入している場合)、年金額が改定されるのは退職したときまたは70歳到達時です。(これを退職時改定と言ったりします)
令和4年4月以降は在職中であっても毎年年金額が改定されます。
具体的には65歳以降、8月まで加入した年金額がその年10月から年金額に上乗せされていきます。
これを在職定時改定といいます。
年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替え
現在、20歳到達(20歳前に就職)など初めて公的年金に加入したときは、年金手帳が交付されます。
- 平成9年以後:水色
- それ以前:オレンジ
かつて、就職時には住所変更や氏名変更・年金請求時などその都度年金手帳の添付が必要でした。
しかし、現在は基礎年金番号通知書など「基礎年金番号を明らかにする書類」があれば手続きが可能となり、手帳形式の役割が不要となりました。
そこで、令和4年4月1日から年金手帳の交付は廃止され、新たな年金加入者には「基礎年金番号通知書」のみが交付されることになります。
ただし、現在交付されている年金手帳は、令和4年4月以降も「基礎年金番号を明らかにする書類」として利用することができます。
まとめ
今回は令和4年4月から行われる年金改正について大まかにまとめてみました。
今回の記事を書くにあたって参考にした本があります。
服部年金企画 公的年金のしくみ という本です。
非常に薄く定価600円という本ですが、社労士試験後年金から遠ざかっていた私が拠り所にしている貴重な本です。
毎年買い替えようと思うくらい分かりやすいですし、年金相談でも使えます。
(実際、年金相談研修もこれで十分でした)
この本にある改正部分を抜粋し修正を加えて今回記事を書かせていただきました。
ぜひおススメします。
では。
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