先日Twitterを見ていたら法人税申告書に添付する勘定科目内訳書のことが話題になっていました。
勘定科目内訳書とは決算書にある科目の内訳書で、法人税の確定申告書を提出するときに添付が必要となっているものです。
調査官は事前にこの勘定科目内訳書はチェックしてから調査に臨んできます。
そこで本日と明日2回にわたって勘定科目内訳書のポイントについて書いてみたいと思います。
実際に私が調査官時代にやっていたことを書いてみたいなと。
今と違うところもあるかもしれませんので参考までに。
本日のテーマは「預金」と「取引先」です。
公表外預金の確認
勘定科目内訳書の最初に、預金口座を記入するところがあります。
ここでチェックするのは、公表外預金があるかどうかです。
事業用口座とは別にプライベート用口座に売上入金され、それを申告していないとなると売上除外となり脱税になります。
このプライベート用口座がここでいう公表外預金ということになります。
法人成りしたばかりで、個人事業主時代の預金通帳に売上入金されていたのに申告をしていなかったという場合もあります。
調査官は売上先に調査が入った時などに調査先の情報をたくさん収集しています。
その情報と突き合わせて不審点がないかどうかを事前に確認しているわけです。
ただ、最近はこの預金に関してほぼ適切に処理されています。
まあ計上がもれているなんてあってはならないですからね。
【事務所お知らせ】取引先の情報を確認
取引先は、主に買掛金や売掛金の内訳書で確認することができます。
- 買掛金ですと、相手は仕入先
- 売掛金ですと、相手は売上先
ということになります。
ほかにも貸付金や借入金、仮払金や前払金なども内訳書があります。
これら内訳書から取引先にどういう会社や事業主があるのかを把握しています。
取引先といっても様々あります。
- 毎年変わらずの超お得意先
- 今年突発的にあった取引先
- グループ法人
- 取引先が外国
- 遠隔地にある取引先
そして、毎年経常的に登場する会社よりはイレギュラーな取引先に注目します。
具体的には、内訳書に書かれている取引先の申告状況を確認して稼働している法人かどうか(ペーパーカンパニーなど)を確認したりします。
もし取引先が同じ税務署管内であればどのような法人なのかをもっと深く確認したりします。
ただし、内訳書を見ていただくと、
買掛金(未払金・未払費用)の内訳書:期末残高50万円以上(50万円以上のものが5口未満のときは多額のものから5口程度)については、
各別に記入し、
その他は一括して記入してもよいことになっています。
明細ごとに取り決めがありますのでそれぞれの用紙にある(注)を見ていただく必要があります。(かなり細かい字で書かれています)
ただし、取引先が多い場合は一括で記入した取引先も含めた一覧表を調査官から依頼されることもあります(私も依頼したことがあります)。
グループ法人間取引
さらに注意すべきなのは、グループ法人間で取引がないかどうかです。
ここでいうグループ法人とは、親子関係のある法人だけではなく、
- 住所が同じ
- 代表者が同じ
- 代表者が親族(息子や妻など)
- 株主が一緒
のいずれかがあるような「関係のある法人」というイメージです。
法人税申告書別表二「同族会社の判定に関する明細書」などを参考にグループ法人があるかどうかをまず確認します。
そのうえで売掛金や買掛金などの内訳書にグループ法人があると注目ランクが上がります。
たまに業務手数料などグループ法人間で一方は経費・もう一方で売上計上がなされていることがありますが、本当に実態のある取引なのかどうかが問題になります。
よっぽど資金困窮や倒産回避目的の資金融通ならまだいいのですが、単なる資金移動となると実態がない取引となり、「寄付金」として処理されることになります。
寄付金処理されるということは、全額が経費として認められないということになります。
このグループ法人間取引で寄付金認定は意外と多いです。
非居住者等との取引
最近、中小法人でも外国法人や非居住者との取引が多くなってきています。
まず売掛金や買掛金などの取引先に外国法人や非居住者の名前があると注目されますね。
問題点として以下のようなものが想定されます。
- 国外関連者との取引が適正か
- 消費税の課否判定(海外取引)
- 源泉所得税の課税もれ(不動産売買・賃貸、使用料など)
もし直近で国外との取引が増えたのならさらに注目度が増します。
やっぱり非居住者等との取引は誤りが多いです。
まとめ
今回は、勘定科目内訳書の中で、預金と取引先を中心に説明してみました。
売掛金や買掛金だけでなく、貸付金や借入金などほかにも記入するところがあります。
ただひとつ注意してほしいのは、勘定科目内訳書にほとんど書かないのは逆におかしいなと思われてしまいます。
- 税理士が会社の状況を把握できていない
- 関与状況がよくない⇒会社のやりたい放題?
- 調査時間が長くなりそう(取引先が不明のため)
余計な誤解を与えないためにも適正な記入をしておくと安心です。
では。