中小法人の税務調査ですと、法人税・消費税・源泉所得税が同時に行われます。
この中に印紙税も含まれることがありますが。
この場合、法人税に調査の重点が置かれ、消費税・源泉所得税は時間的に限られてしまうために後回しまたは見ないということもあります。
しかし、実は法人税より源泉所得税や消費税は知っているかどうかで判断できてしまいますので調査官からしたら狙い目でもあるんです。
つまり、油断しがちな調査項目でもありますので、事前の準備でも注意が必要であると考えています。
消費税は届出と課否判定
消費税は、課税売上高から仕入税額控除を差し引くことで納付税額が計算されます。
課税方法には、本則課税と簡易課税とがあります。
簡易課税は、売上を区分ごとに分けてそれにみなし仕入率という決まった率をかけることで仕入税額控除を計算しますので、売上業種区分の判定が大事になってきます。
一方、本則課税は、仕入税額控除を計算するもととなる経費項目をひとつひとつ確認してそれが仕入税額控除ができるのかどうかという判断が必要になります。
この消費税においては、届出書の提出がきちんとされているかと、課税かそうでないかの判断、つまり「課否判定」が重要になってきます。
簡易課税制度は事前に選択届出書を提出しておく必要がありますし、選択をやめたいときにも届出書を提出する必要があります。
届出書が出ているかどうかの判断だけで済む話ですので、税務調査へ来る前に調査官はチェックできます。
また、課否判定については、消費税の計算明細書を作っているはずですので、調査官からそのコピーなどの提出を求められます。
つまり、その計算明細書だけで判断できることもありますし、経費の領収書をチェックしていく中で計算明細書と照らし合わせながら課否判定ができます。
私の場合は、計算明細書を帳簿調査が始める前(初日の午後すぐ)にいただいていました。
ざっと見てみて「あれ?」と思った経費科目には一応チェックをしてから調査をすすめていましたね。
見てすぐに誤りが分かるということはそれほど多くはありませんが、想定はできます。
【事務所お知らせ】源泉所得税は課税もれが分かりやすい
源泉所得税が出てくる可能性があるのは経費を支払った場合ですね。
給与や報酬などを支払ったときに源泉所得税を天引きして国に納付するわけですから。
それも経費の領収書や請求書を見ているだけで課税されるかどうかは分かります。
しかも、調査官は事前に源泉所得税の納付状況は必ず把握しています。
なので、事前準備の段階で納付もれは想定ができるというわけです。
源泉徴収がもれているかどうかは非常にわかりやすいです。
だって支払ったという事実がある以上隠しようのない事実ですから。
誤りが見つかりやすい⇒調査官に楽させてしまう
このように法人税に比べて、消費税や源泉所得税は誤りを見つけやすいです。
調査官は実績を残すために調査においていくつの誤りを発見して上司に報告できるかという側面があります。
明らかな誤りなので納税者や税理士ともめようがありませんから、1件の誤りとして確定するわけです。
そうすると、調査官は強気の姿勢で調査に臨むことができるようになります。
誤りがあることで調査官を勢いづけてしまうことになってしまいます。
調査官心理として、やっぱり1件誤りが見つかると気持ちよくなるものです。
調査ポイント まず手元にある資料から確認を
このように納税者側と税理士で確認すべきこととして、まず手元にある資料から確認をして、明らかな誤りを事前につぶしておくことが大事です。
領収書や請求書を見て、
- どのような内容だったのか
- 消費税の課否判定は?
- 届出はきちんと確認したか?
- 源泉所得税は納付できているか?
- 納付状況はきちんと管理できているか?
などは、事前の準備で十分対応できるものだと思います。
正直法人税はもめる部分も多い印象です。
一方で知っているか知らないかで損をしがちなのは、消費税や源泉所得税です。
法人税に目がいきがちな同時調査ですが、油断をすると失敗します。
まとめ
調査官の中には同時調査ならやっぱり法人税の誤りを見つけたほうがいいと考えている方も多いです。
でも実際は1件の誤りがあるかが評価されるのであって、その1件は別に消費税でも源泉所得税でも一緒です。
少ない労力で誤りを見つけやすいのが消費税と源泉所得税です。
まずはこの2つからきちんと対応できるようにしておくのもありかなと思います。
では。