ご本人が65歳で老齢年金を請求するときには、状況に応じて将来に受け取りを繰下げることができます。
一方で、繰下げの請求をやっぱりやめて65歳時にさかのぼって年金を受け取ることもできます。
年金の請求を忘れていて65歳を過ぎてから請求をした場合でも、5年以内であればさかのぼって支給ができたりします。
今回は年金をさかのぼって受けた場合のメリット・デメリットについて書いてみたいと思います。
年金をさかのぼって受けるメリット
最近では65歳を過ぎてもお勤めをされている方が多いですね。
例えば、68歳のサラリーマンの場合を考えてみます。
65歳で支給する老齢基礎年金(国民年金部分)と老齢厚生年金(厚生年金部分)の繰下げ支給をして70歳から年金を受け取る予定にしていたとします。
しかし、家を改修するためにお金が急遽必要になりました。
この場合には、65歳までさかのぼって65歳から68歳までの3年間の年金を一括で受け取ることができます。
ほかにも、台風が来て自宅が損傷したなど災害が起こった時、生活に変化があり急遽お金が必要になったときに受け取ることができるのがメリットです。
【事務所お知らせ】年金をさかのぼって受けるデメリット
年金をさかのぼって受ける場合にはデメリットもあります。
65歳時の年金額で割増がつかない
65歳にさかのぼって年金を受け取る場合には、65歳時の年金額で支給されることになります。
したがって、繰下げ支給に伴う割増はありません。
繰り下げた場合には月に0.7%増額になるため、例えば65歳から68歳まで3年間繰下げた場合には、
の割増となるはずですがそれがもらえなくなります。
税金の問題
実は税金への影響が大きいのです。
まず老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取ると「雑所得」として所得税がかかります。
年金をさかのぼって一括で受け取った場合でも税金計算上は各年分ごとに行われます。
例えば、
令和4年10月に65歳(令和元年)からの年金をさかのぼって一括で受け取った場合、
令和4年分だけ計算するのではなく、令和元年分、令和2年分、令和3年分、令和4年分とそれぞれの年分で税金を計算する必要があります。
年金を受け取ると源泉徴収票が発行されますが、この源泉徴収票もそれぞれの年分で送られてきます。
したがって、仮に給与を受け取っている場合ですと年末調整で済んでいる場合が多いですが、さかのぼって受け取った年金がある場合には両方合わせて確定申告が必要です。
しかし、令和元年分の確定申告の期限は令和2年3月15日です。
令和4年10月に年金を受け取り令和元年分の確定申告をした場合には、期限後申告となってしまいます。
期限後申告をしてしまうと、無申告加算税という罰金と延滞税という遅延利息がかかってきてしまいます。
無申告加算税は本税×5%ですが本税10万円未満はかからないことになっていますのでそれほどかかることはないのかなと。
一方で延滞税は日割計算で、提出・納付が遅くなればなるほど増えていきます。
さかのぼって受け取ったものの税金が取られさらに期限後の罰金までかかってくるのは納得がいかない方もいらっしゃるかもしれませんね。
自分でこのように受け取ることを選んだんだから仕方ないでしょ、ということのようですけど、正直このままでいいのかなと個人的に思ってしまいます。
さらなる課題 「5年前繰下げみなし増額」
令和5年4月1日から、70歳後に繰下げを取りやめてさかのぼって請求する場合には、5年前の時点で繰下げ請求したものとみなされ、5年分が支給されます。
これを「5年前繰下げみなし増額制度」と言われたりします。
例えば、72歳時に繰下げ支給をしないでさかのぼって請求をすると、67歳時点で繰下げ請求をしたものとみなされます。
したがって、65歳から2年間(24月)の増額=16.8%増額の年金が5年分支給されることになります。
私が個人的に懸念しているのは、やはり「税金」。
年分ごとに雑所得として税金を計算するわけです。しかも増額されていますので税金が増える可能性もありますよね。
もし確定申告が必要になるのなら期限後申告⇒加算税や延滞税の問題が当然出てきます。
今後法律が改正されるのか、そのまま変わらないのか注視していこうと思っています。
まとめ
これまで年金を請求していなかった方も5年間であれば請求をすることができます。
この場合も同じように年分ごとに源泉徴収票が発行されることになり税金の問題が発生してきます。
ちょっと酷な話だなと個人的には思っているので改善されることを願っています。
では。