1年間会社などに勤務されていて給与を受け取っていると基本的に年末調整を行うことになっています。
給与支払者である会社などがその年最後に給与支払いをする際、その年1年間の給与総額を合計し、その給与総額に対して納めなければならない税額(年税額)を計算します。
年税額と月々の給与支払いの際に源泉徴収をしてきた税額の合計額を比較して過不足額を計算するのが年末調整の流れです。
この図のように源泉徴収税額より年税額のほうが少なければ還付になりますし、年税額のほうが多ければ不足となり納付をすることになります。
還付になれば従業員はうれしいわけですよ。
お金が戻ってくる感覚ですから。
しかし、不足になれば追加で納付してもらうことになりお金が出ていきます。
次の給与から追加で天引きする会社もあるようです。
不足額が出るケース
年末調整は1年間の源泉徴収額の精算の作業ですから、還付というよりも天引きしすぎていた源泉徴収額が戻ってくるだけです。
しかし、年末調整を行った結果還付額が出るケースなら従業員側としてはうれしいですよね。
しかし、不足額が出るケースは納得できないかもしれませんね。
特に、昨年までは還付だったのに今年不足が出たという場合は「計算おかしくない??」って疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
では、ここから不足額が生じるケースを挙げてみたいと思います。
【事務所お知らせ】本年の中途で源泉控除対象者を有しないこととなった
給与を支払う際に発生する源泉所得税額は、「税額表」と呼ばれる一覧表で計算します。
計算をするにあたっては「扶養親族等の数」が何人なのかを把握する必要があります。
配偶者が源泉控除対象配偶者に該当すれば扶養親族等の数は1人となります。
単身者の場合は扶養親族等の数は0人。
人数が増えていくほど税金は安くなっていきます。
源泉控除対象配偶者とは、給与の支払を受ける人(本人)の合計所得金額が900万円以下の場合に、合計所得金額95万円以下の配偶者のことを言います。
例えば、本年の中途において配偶者の合計所得金額が95万円を超えてしまう・またはしそうだという場合を考えてみましょう。
給与収入に置き換えると、150万円を超えてしまう・またはしそうだという場合です。
配偶者の勤務先で給与収入が150万円を超えた場合には源泉控除対象配偶者には該当しません。
本来は150万円もらえる状況が分かった段階ですぐに会社に提出済みの扶養控除等(異動)申告書を訂正して月々の源泉徴収税額に反映させなければなりません。
もし訂正しないと月々の給与の支払時に計算される源泉徴収税額は1人とカウントして計算してしまっています。
年末調整により0人と正しく計算し直すことになるため、不足額が生じてしまいます。
本年の中途で控除対象扶養親族の数が減少した
源泉控除対象者と同じように、税額表で使う「扶養親族等の数」は、控除対象扶養親族等がいれば1人となります。
控除対象扶養親族等とは、給与の支払を受ける人と生計を一にする親族などで合計所得金額が48万円以下の人のうち年齢16歳以上の人を言います。
例えば、年の中途で控除対象扶養親族が就職した場合です。
就職した場合は、自分で生活できる資金があるでしょうから生計別になると考えられていますので控除対象扶養親族にはあたりません。
また、年の中途でバイトを入れすぎて合計所得金額が48万円を超えてしまう場合。
給与収入ベースで103万円を超えてしまった・しまうケースですね。
本来は103万円もらえる状況が分かった段階ですぐに会社に提出済みの扶養控除等(異動)申告書を訂正して月々の源泉徴収税額に反映させなければなりません。
もし提出をしないと、月々の給与の支払時に計算される源泉徴収税額は1人とカウントして計算してしまっています。
年末調整により0人と計算し直すことになり不足額が生じてしまいます。
年間の賞与が比較的多かった
賞与を支払う月の前月分の給与が通常月より少なかった
賞与(ボーナス)の税率は、前月分の給与の金額をもとにして求めることになっていますので、前月分の給与が大きいか少ないかにより税率が変わってくることになります。
また、この税率は、年に5か月分の賞与が支払われることを基準として計算されているため、賞与がこれよりも多かったりすると年末調整の際に不足額が生じます。
控除誤り・計算ミス
本来控除を受けるべき控除を忘れていたり、計算ミスをしている場合不足額が生じることもあります。
誤りやすいものとしては以下のものがあります。
- 配偶者特別控除と扶養控除の誤り
- 生命保険料控除の誤り
- 所得金額調整控除の誤り
- 住宅ローン控除の誤り
社会保険料の計算
社会保険料は毎年9月から翌年8月まで一定金額で計算されます。
4月~6月に支給される給与額を平均した標準報酬月額をもとに社会保険料が決まるわけです。
4月から8月までと、9月から翌年3月で社会保険料の金額が変わると毎月の源泉徴収税額も変わってくることになるため、不足額が生じる可能性があります。
年末調整計算の検証方法
では、年末調整の計算が正しいのか確認するためにはどうしたらいいのでしょうか。
年末調整の結果として従業員に届く源泉徴収票を分析してみるのが大前提になります。
源泉徴収票を読み解く
給与所得の源泉徴収票の見本を見てみます。
まず誤りの可能性が考えられるのは「所得控除の額の合計額」欄じゃないかなと。
具体的にこの源泉徴収票から「所得控除の額の合計額」2,935,745円を検証してみたいと思います。
- 配偶者控除あり〇:380,000円
- 特定扶養親族1人:630,000円
- (一般の)控除対象扶養親族1人:380,000円
- 社会保険料控除:908,245円←社会保険料等の金額
- 生命保険料控除:107,500円←生命保険料の控除額
- 地震保険料控除:50,000円←地震保険料の控除額
合計すると、380,000+630,000+380,000円+908,245+107,500円+50,000=2,455,745円となります。
あれ?
所得控除の額の合計額2,935,745円-2,455,745円=480,000円の差額が出てきますね。
これは、
- 自分の基礎控除=480,000円
を加えることで一致します。
自分で確定申告する
源泉徴収票をもとに計算した結果、もし誤りが分かった場合はどうしたらいいのでしょうか。
方法は2つあります。
- 会社へ再度年末調整を依頼する
- 自分で確定申告する
しかし、すでに確定申告時期を迎えているのであれば自分で確定申告をしたほうが早いです。
年末調整が終わったら確定申告ができないかというとそうではありません。
年末調整が終わっていても確定申告で正しく申告することも可能です。
手元に源泉徴収票を置いておき、確定申告書を作っていきます。
ちなみに国税庁HPの確定申告書等作成コーナーでは、源泉徴収票の画面の入力の指示があるので分かりやすくで便利です。
源泉徴収票のとおりに入れていくとともに、間違っている部分があればそれを加えて申告します。
計算ミスや転記ミスもありません。
会社へ報告をしておく
年末調整の再計算を会社には依頼しないものの、計算をしたのは会社の担当者でしょうからその旨を報告をしておき来年の参考にしてもらうようにします。
計算ミスが起こる理由として、扶養控除等申告書など各種申告書の見落としではないかなと思いますので。
まとめ
長々と書いてきてしまいましたが、年末調整で不足額が出てくるとやっぱり給与担当者としても嫌なものがありますね。
税金を徴収しないといけないわけですからね。
でもその理由がある程度想定できるのならそれを事前に伝えることも大事なんじゃないのかなと思います。
では。