赤字法人・赤字個人事業主に税務調査は来ないのか

法人や個人事業主を営んでいるといずれは税務調査が来ます。

しかし、

「うちは赤字だから税務調査なんて来ないでしょ!」

と決めつけておられる方も多いです。

しかし、実際は赤字でも税務調査はやってきます。

そもそも「赤字」って?

赤字、赤字って言われますけど、おそらく税務調査でいうところの赤字って世間とはイメージが異なるかもしれませんね。

ここでいう赤字とは、事業を営んでいる場合ですと、

売上から必要経費を差し引いたのこり(もうけ=所得)がマイナスの状況

をいいます。

また法人ですと、売上から費用を差し引いた利益をもとに税務調整を行い所得を計算しますので、単純に「利益=所得」ではありません。

所得がマイナスの状態がここでいう赤字です。

国税庁企画課 平成30年度分「会社標本調査」調査結果によると、日本法人のうち赤字法人は62.1%、つまり全法人の2/3は赤字です。

税務調査を黒字法人・黒字個人事業主のみに限定して調査することは不可能に近いわけです。

では、なぜ赤字法人・赤字個人事業主でも税務調査が来るのでしょうか?

【事務所お知らせ】  

調査は法人税・所得税だけではない

法人の一般的な税務調査は、法人税のほか、消費税・印紙税・源泉所得税を一緒に調査します。

また、個人事業主の一般的な税務調査は、所得税のほか、消費税・印紙税・源泉所得税を一緒に調査します。

赤字という考え方はあくまで法人税や所得税を計算するもととなった所得がマイナスであるということだけです。

消費税は売上と経費から計算しますし、印紙税や源泉所得税は所得から計算するものではありません。

赤字法人・赤字個人事業主だからといってお金はたくさんあるというところもあるでしょう。

法人税や所得税は赤字なので税金は払っていないけど、それ以外は納めているわけです。

そうなると、消費税や印紙税・源泉所得税は追加で税金を取ることができます。

調査官の実績になりやすい

税務調査を行う調査官には実績が求められます。

赤字法人や赤字個人事業主の調査を行う際にはある期待も込めて調査指令がされます。

それは、税務調査で誤りを見つけ修正させることで所得が増えて赤字から黒字へと転換させた場合の評価が高いからです。

もちろん税務調査を受ける納税者からしたら黒字になるということは法人税や所得税が発生して納付しなければならなくなりますのでたまったものではありません。

しかし、調査官としては赤字から黒字への転換を狙いたいのです。

そのため統括官もあえて赤字法人や赤字個人事業主を選んでいます。

赤字から黒字へすぐ転換できそうなくらいの少額な赤字は特に狙われやすいですね。

税金を払えるかどうか

ただむやみやたらに赤字法人・赤字個人事業主の税務調査をするわけではありません。

赤字であることは資金繰りに困っているとか、売上が前年より激減したり経費が多くかかってしまったなどやむを得ない事情を抱えていることもありえます。

税務調査に行って追加で税金を納めさせることになったとしても払えない状況なら結局それが滞納になってしまい事業活動を苦しめてしまう結果になってしまいます。

なので、税務調査が来ても納税できる資金があるかどうかを考えて調査先を選んでいます。

例えば、

  • 今滞納している税金がないか
  • 貸借対照表を見て現金預金や借入金などから財産状態が悪くないか

などを検討します。

ただ統括官によりけりで、実績だけ求める方だとここまで考えない方も多いようです。

私は調査の経験豊富な統括官の下で選定業務をしていたことがあります。

赤字法人・赤字個人事業主は資金繰りに苦しいケースが多いから資金面も含めて慎重に選ぶように指示されていましたね。

まとめ

赤字だからといって税務調査が来ないということはありません。

むしろ、意図的な赤字が想定された場合は狙い目となり重加算税という重たい罰金が科せられます。

ただ、一般的に赤字法人や赤字個人事業主が調査先に選ばれる場合、納税面やほかの税金が取れるのかも含め検討されていることを知っておいていただければと思います。

では。

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