シリーズでお送りしている建設業経理から学ぶ税務調査対応の第4弾。
今回は工事経費についてみていこうと思います。
経費としては工事にかかる経費と事務所と工事両方でかかる経費・事務所内でかかる経費があると思います。
事務所内でかかる経費は一般管理費となるわけですが、今回は工事にかかる経費を中心に気になるところを書いてみますね。
工事経費とは
ここでいう工事経費とは、材料費・労務費(人件費)・外注費以外で工事にかかるものです。
例えば、
- トラックの修理代(修繕費)
- ショベル、バックホウなどのリース代(賃借料)
- ダンプなどのガソリン代(燃料費)
- 材料以外の消耗品の購入(消耗品費)
- 近隣対策費(交際費)
など考えられるかと思います。
修繕費や燃料費などといった勘定科目は決まっているわけではありませんが、一度決めてしまったら基本的に変更はしません。
なぜなら、過去3期分の業績を比較したいと思った時に勘定科目が変わっていると比較できないからです。
ただ、燃料費をガソリン代・軽油代などと分けても問題はありません。
【事務所お知らせ】工事経費のポイント
では工事経費のポイントについてです。
経費ですから、増やせば税金を計算するもととなる所得(もうけ)が減ることになります。
つまり、経費を増やしたいと考えるならじゃあ経費を払っていないのに経費にしたらいいやと考えてしまう方が多いのです。
これを「架空経費」といいますけど、税務調査でこれが発覚すると不正となり重加算税という重たい罰金がかかってくることになります。
調査官としては、本当にこれが工事にかかる経費なのかというのを注目してみていくことになります。
工事にかかってくる経費かどうかがポイントです。
現金払い・証拠書類なしは注意
経費で問題となるのは、現金払いをしたけど領収書などの証拠書類がない場合です。
基本的にレシートは受け取られるはずですがそれを捨ててしまっている場合、なかなか経費であるという立証はしづらくなります。
領収書よりもレシートのほうが「何を・いつ・どこで・いくらで買ったのか」が分かるので証拠書類としてはいいと私は思っています。
ただ何もない場合でも経費がまったく認められないかというとそういうわけでもありません。
出金伝票を作っておき、何を・いつ・どこで・いくらと書いておくと調査官への説明はしやすくなります。
ただし、あくまで領収書やレシートがない場合の例外です。
基本的に証拠書類は保管しておくべきです。
個人的に使うものを工事経費にしていないか
例えば、自宅の修理に使う工具を工事経費にしていたとします。
これはあくまで自宅用ですから、現場で使っているものではありません。
個人的に使うものなので工事経費にできません。
レシートや領収書の内容だけでは分からない場合もありますので、工事名などを補完記入しておくこともいいかなと考えます。
交際費に注意
工事現場の近くに住む方に「これからご迷惑をおかけする」ということで謝礼などをお渡しすることがあります。
いわゆる「近隣対策費」と呼ばれるもので基本的に交際費として処理されます。
この交際費が意外と多額になることがあります。
- 果たして本当に交際費なのか?
- 交際費としてふさわしい支払か?
をチェックされることになります。
私が出くわした事例では、交際費の支払先を明かせないという会社の言い分があり反面調査を実施した結果、反社会的勢力に支払ったものであることが分かりました。
帳簿にも記載がなかったため仮装隠ぺい行為として重加算税を賦課したうえ、さらに使途を明らかにせずに秘匿したとして「使途秘匿金課税」までされました。
金額が大きい・イレギュラーな経費
調査にも時間的な制限がありますので、すべての経費を一から全部見ているわけではありません。
金額が少ないものまで見て行ったら時間がなくなります。
なので、ある程度金額が大きいものや数年間を比較してイレギュラーな経費があればきちんと内容を確認しておきます。
証拠書類が保管できているのか、なぜその金額を支払う必要があったのか、何に使ったのかを説明できるように準備しておきます。
修繕費のうちダンプの修理代などは金額が大きくなる傾向があります。
本当に修繕なのかどうか、固定資産に計上しないといけないものかどうかも確認します。
あと、除却損や廃棄損など臨時的に支払った経費についても同様に廃棄証明書があるのかどうか、経費にしていいのかどうかは検討しておきます。
まとめ
今回は建設業経理から見る工事経費の税務調査ポイントについて気になるところを見て来ました。
経費には多くの勘定科目があり、その分調査するポイントも多いです。
まず基本は工事にかかる経費かどうかから検討を始めます。
あとは証拠書類は必ず保管しておくことです。
調査官を納得させられたらいいわけですからね。
では。