ネットでは「経費を使うと税金が安くなります!」と謳って節税方法を紹介しているものを見かけます。
実際、確定申告期の相談で個人事業主の方から「ネットやTVで経費を使うと税金が安くなるって聞いた」と確認で来られる方もいらっしゃいます。
本当に正しいのでしょうか?
経費と税金の関係
個人事業主の方を例に説明すると、
1年間の所得(もうけ)に対して所得税(税金)がかかるわけですが、その所得は以下のように計算されます。
計算式から見れば、売上が同じならば経費を増やせば所得は減りますので、それにかかる所得税は減ります。
しかし、気を付けたいのは、差し引いた経費の全額が税金を減らすことにはならないということです。
何が言いたいのかというと、所得から所得税を計算するには「税率」を使います。
引用:国税庁ホームページ タックスアンサー 所得税の税率
具体例で説明してみる
では、実際具体例を使って計算をしてみます。
経費を使う前
売上が500万円、経費が200万円だったとします。
売上500万円ー経費200万円=所得300万円
これを先ほどの税率表に当てはめますと、300万円×10.21%-97,500円=208,800円となります。
経費を100万円使った場合
売上が500万円で一緒だとして、経費が300万円になりますと、所得は200万円。
これを先ほどの税率表に当てはめますと、200万円×10.21%-97,500円=106,700円となります。
計算結果からわかること
経費を100万円増やしたことにより、208,800円ー106,700円=102,100円の所得税を減らすことができました。
しかし、見方を変えれば経費100万円を使っても所得税は102,100円しか減らないということです。
「経費を使うと税金が減る」は正しくもあり間違っていることでもあります。
経費を使う=お金が出ていく
経費を使うということはあるリスクを潜んでいます。
それは手元にお金が無くなるということ。
例えば、所得がたくさん出そうなので節税のため経費を使いたいと思い営業用の新車を買うとします。
経費になりますけど営業に使えるお金が減っていきます。
先ほどの例を使って経費から所得税を差し引いた手取り額を計算してみますと、
②売上500万円ー経費300万円ー所得税106,700円=1,893,300円
①-②=897,900円
→②のほうが897,900円手元からお金が出て行っています
*このほか住民税なども差し引かれますが省略します
もし営業資金が潤沢にない場合には資金繰りが悪化してしまう可能性もあります。
経費を増やしたいがために無理にお金を使う必要はないと思います。
それよりも、本業をかせぐ=売上を増やすことで税金を納めたあとお金をどう残すのかを考えていくのがいいと私は考えています。
無理やり経費にする可能性→税務調査のリスク
経費を増やしたいと思うと、ある方はこう考えます。
じゃあ生活費も経費にしちゃえばいいんじゃないか
って。
例えば、経費を増やしたいので家族で行った旅行代を経費にしていたとします。
ほかにも家族で出かけた飲食代も経費にする。
本来プライベートで使ったものですので経費とは認められないわけですが、一見すると経費を増やすことができています。
この場合、過去の決算書と見比べると明らかに経費が増えているので税務署から目を付けられてしまいます。
税務調査においては、過去の決算書や申告書の数字の動きは必ずチェックされていますので、経費が増えているとその原因をつきとめたくなります。
結局経費とは認められないことにより修正申告が必要になり追加で税金を支払うことになります。
領収書や請求書を破棄してしまっているとか経費と仮装した不正行為や悪質であると調査官から判断されたら重加算税という重たい罰金が科されてしまいかねません。
経費ではないものを経費だとしてお金を支払った結果、税務調査でさらに税金を支払い罰金まで支払うとなるとお金が出ていく一方です。
経費を増やすことを安易に考えてしまうと税務調査へのリスクが高まります。
まとめ
経費を使うときは、まず本当に事業に必要なものか、手元に残る資金で事業を継続できるのかまで慎重に考える必要があると感じます。
経費を使ったからと言って税金が丸々安くなるわけではないです。
リスクもあるということをご理解いただけたらと思います。
では。