先日、河野太郎デジタル担当大臣が「書かない申告書」の取り組みを始めると会見で明言されました。
e-Taxを利用したオンラインの確定申告にてさらなる自動化を推し進めていくようですがふとある疑問がわきました。
「書かない確定申告」とは
河野太郎氏公式サイトには以下のように書かれてあります。
e-Taxを利用したオンラインの確定申告について、「書かない確定申告」を目指した取り組みを進めます。
国税庁には、e-Taxの利便性向上に大変、努力をいただいております。
今年の確定申告をオンラインでやられた方はおわかりになると思いますが、マイナポータルと連携した医療費控除やふるさと納税の寄附金控除などの情報が自動入力されるようになってまいりました。
この利便性をさらに向上させるために「書かない確定申告」を実現していきたいと思っています。
次のステップとして来年2月の確定申告から、給与所得情報についても自動入力の対象とするように、国税庁においてシステムの準備を進めていただくことといたしました。
確定申告をしている方のうち、給与所得のある方は1,000万人以上いらっしゃいますが、給与所得情報の自動入力の対象となりますのは、このうち企業・事業者から国税庁に源泉徴収票がオンライン提出されている場合に限られます。
多くの方々がこの「書かない確定申告」の恩恵を受けるためには、雇用者、各企業事業者が源泉徴収票をオンライン提出していただく必要があります。
2011年時点で、オンライン提出の割合は約5割でしたが、ぜひ事業者・企業には従業員の利便性向上の観点から、ぜひ源泉徴収票をオンライン提出するように切り替えていただきたいと思います。
源泉徴収票の提出義務があるのは年間500万円を超える場合ですが、500万円以下の方でも確定申告をされる方がいらっしゃいますので、500万円以下の方の分もオンラインで提出していただければ対象といたします。
企業にとっても、オンラインで出す、出さないを区別する必要もなくなりますし、従業員の確定申告の手間の軽減につながりますので、500万円を超える場合のみならず、500万円以下も幅広く、給与所得の源泉徴収票の提出はオンラインでということでお願いをしたいと思います。
寄附金控除とか、雑所得の経費とか、そこはやはり個人で入力をしていただく必要が残りますけども、その他の部分は自動入力にどんどんしていきたいと思っております。
デジタル庁として、デジタル化を進めることで、国民の利便性を向上させるために、まずは源泉徴収票のオンライン提出、これについて積極的に働きかけを行い、確定申告は一々提出者が書かなくてもできる、それを目指していきたいというふうに思っております。
引用:河野太郎氏公式ホームページ 記者会見4月27日 より
書かない確定申告 記者会見4月21日...
私なりにポイントをまとめると、
- マイナポータル連携の利便性をさらに高める
- 来年2月の確定申告から給与所得情報についても自動入力の対象とする
- そのためには給与所得の源泉徴収票の提出はオンラインでお願いしたい
- (源泉徴収票の提出義務は500万円超であるが)500万円を超える場合のみならず、500万円以下も幅広く対象とする
- 個人で入力をしていただく部分は残るがその他の部分は自動入力にどんどんしていきたい
- 確定申告は一々提出者が書かなくてもできる
ということなのかなと。
【事務所お知らせ】みんな確定申告すればいいんじゃないの??
これを見て私は思ったんです。
給与をもらっていると通常勤務先で年末調整をしますので確定申告をする必要がありません。
年末調整という制度があるのは1年間を通じて勤務した給与所得者だけであり、ほかの人は確定申告をするわけです。
源泉徴収票をオンラインで提出する方向にするのであれば年末調整はしなくてもいいと思うんですよね。
年末調整が要らないのなら源泉徴収制度もいらないのではないか、というのが私のホンネです。
「源泉徴収制度の意義」を確認してみる
もともと所得税は、本人が1年間の所得金額と税額を計算して自主的に申告し納付する「申告納税方式」が採用されています。
しかし、給与や報酬料金など一定の所得は、所得の支払の際に支払者である会社などが所得税を徴収して納付しています。
これを源泉徴収制度と呼ぶわけですが、この制度は利子所得は明治32年から、給与については昭和15年から採用されています。
外国でも多くの国で採用されている制度だとされています。
引用: 国税庁 令和5年分 源泉徴収のあらまし より
実際、この源泉徴収制度があることで多くの給与所得者が年末調整により課税関係が終了し確定申告をしなくてもいい状況になっているわけです。
当初源泉徴収制度自体、全国民に確定申告をさせると税務署の事務処理が膨大になることを防ぐ制度だとされていました。
しかし、現状年末調整事務を担当されている方は、扶養控除等申告書などの年末調整関係書類が複雑化していることもあって苦労されていることかと思います。
源泉徴収制度の限界が来ているんじゃないかなと感じます。
「確定申告制度」に一本化を
今後、源泉徴収票がオンラインで提出できることやマイナポータルの充実が図られることで税務署の事務処理が増えるのではなく効率化されるはず。
だったら、すべての人に確定申告をさせてもなんら問題ないのかなと私は考えます。
年末調整だけで完了していた給与所得者が自分で確定申告をされる際戸惑っているのをよく見かけます。
これまでは自分で確定申告をする必要がなかったからどうしたら分からないのです。
税金を自分で払っていることが実感としてわかないのかなと。
だったら、すべての人に確定申告制度を理解してもらうことで税金への興味を持ってもらうこともできるでしょう。
年末調整をした給与所得者でも還付を受けたいと思った場合には確定申告をします。
年末調整をする人って確定申告を2回やっているのと同じ。
だったら確定申告制度に1本化させて1回で済ませる方が給与所得者も意外と楽なのかなと思うんですよね。
下手に年末調整があるから混乱するし負担感も感じるのではないでしょうか。
まとめ
先日の河野大臣の記者会見の記事を見ながら考えたことを書いてみました。
私は税務署で源泉所得税担当をしていましたので源泉徴収制度のメリットは説明することがあります。
一方でデメリットも多くあり、今回のように「書かない申告書」を実現されようとしているのであれば源泉徴収制度自体もうやめてもいいんじゃないかなと。
あくまで私見ですので実際は源泉徴収制度も生き残っていくでしょうし、複雑怪奇な年末調整も変わらないかもしれません。
しかし、ひとつのきっかけで制度を考え直すのも大事ではないかと感じました。
では。