年金請求で「公的年金等の扶養親族申告書」が必要な場合は少ない

年金の支給開始年齢の3か月前になると日本年金機構から年金請求書が送付されてきます。

年金請求書を見ると最後のページに「公的年金等の扶養親族申告書」があります。

この申告書、年金請求書で記入する場合は限定的ですので書かなくていいことのほうが多いです。

扶養親族等申告書は「年末調整の年金バージョン」

年金には老齢・障害・遺族という種類がありますが、このうち障害・遺族は非課税とされており、老齢は雑所得として所得税がかかります。

老齢年金の年金額が65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上であれば年金から所得税が天引き(源泉徴収)されます。

このため、年金を受け取る方の場合には、配偶者控除や障害者控除などの控除が受けられるようにこの書類を提出することになっています。

年金請求時以外にも毎年10月前になると日本年金機構から郵送されてきます。

お勤めをされていて給与を受け取っていると勤務先で年末調整されると思います。

年金は年末調整の対象ではありませんので確定申告が必要ですが、年金のみ受け取っている方に毎回確定申告をさせるのは大変です。

そこで、扶養親族等申告書を提出してもらうことで年末調整のようなことをして確定申告をしなくてもいいようにしています。

いわば、「年末調整の年金バージョン」といったところでしょうか。

【事務所お知らせ】  

年金請求時に扶養親族等申告書の記載が必要なケース

令和5年度において、男性は支給開始年齢の64歳になる方と女性は支給開始年齢が62歳になる方が新たに年金を受け取る権利が発生しています。

厚生年金に1年以上加入されていますと、この支給開始年齢から厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)が支給されます。

そのため年金請求書にも年金支給額によっては扶養親族等申告書を提出する必要がありますが、今現状として65歳未満で108万円以上の方はあまり見かけません。

年金は偶数月の15日に受け取りますので、本年2月~12月までに受け取った年金が108万円以上の場合って多くないのかなと。

年の途中での受取開始だとさらに少ないでしょうね。

また、年金以外に勤務先から給与をもらっている場合には、勤務先で年末調整をします。

勤務先に扶養控除等申告書を提出しているかと思いますが、こちらの扶養親族等申告書は提出しません。

といいますか、扶養控除等申告書・扶養親族等申告書という「扶養~申告書」は支払先(勤務先か日本年金機構)1か所にしか提出できないことになっています。

もし扶養控除等申告書と同じ内容で提出してしまったら、配偶者控除や障害者控除などの控除を二重で受けてしまうことになります。

年金は雑所得として所得税の対象となりますが、給与は給与所得という別の所得となりますので足し合わせる必要があります。

そのため給与だけでなく年金も足し合わせるという意味で確定申告が必要になります。

勤務先を年内で退職予定の方も同じです。

退職をされますと勤務先でもらう給与も年末調整されません。

そのため年金と足し合わせることで確定申告する必要があります。

確定申告書に配偶者控除や障害者控除等の控除内容を記載しますので、扶養親族等申告書を記載する意味がありません。

扶養親族等申告書を書く場合は、

  • 老齢年金のみを受け取る
  • 1年間の老齢年金の支給額が108万円以上
  • 配偶者控除や障害者控除・扶養控除など人にかかわる控除を受けたい

くらいしかありません。

毎年送付されてくる扶養親族等申告書

老齢年金を受け取るようになりますと毎年10月前に扶養親族等申告書が送付されてきます。

勤務先から給与の年末調整を受ける場合にも似たような書類を書くと思いますがそれと同じです。

こちらの記載が必要な要件としては基本的に年金請求時のものと変わりません。

しかし、老齢年金のうち老齢基礎年金(国民年金)だけを受け取る場合もこの申告書の記載は不要です。

つまり、以下のような場合に扶養親族等申告書を提出します。

  • 老齢年金のみを受け取る
  • 老齢基礎年金(国民年金)のほか老齢厚生年金も受け取っている
  • 1年間の老齢年金の支給額が108万円(65歳以上は158万円)以上
  • 配偶者控除や障害者控除・扶養控除など人にかかわる控除を受けたい

この内容をフローチャートにしてまとめてみましたので参考にしてみてください。

「本人が障害者・寡婦・ひとり親である」から先が配偶者控除や障害者控除・扶養控除など人にかかわる控除の判定になります。

65歳未満の方の場合、在職中の方も多いですし年金を請求されても年間108万円に達しない方も多いので年金請求時に扶養親族等申告書を記載しないことがほとんどです。

まとめ

今日は扶養親族等申告書について書いてみました。

この申告書を提出しなかったら配偶者控除や障害者控除など人にかかわる控除が受けられませんが、出す出さないで税率は変わりません。

一律5%です。

もし税率に大きな差があるのなら提出をお願いするわけですが、近年はそれほど効果もありません。

年金請求時に記載する扶養親族等申告書はなくしてもいいんじゃないかなと個人的に思ったりはします。

では。

 

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