社会保険労務士の資格を取得してからかなり時間がたっていますが、実務であまり活用できていません。
毎年改正が行われるので、テキストは購入して勉強はしているつもりですが、机上で学んだものなのでそれが活かされることもなく。。
今後、調査を専門にしていこうと思った時に、社会保険労務士の資格も活かしていきたいなと思っていたところ、年金事務所や労働基準監督署(労基署)の調査があることを知りました。
実際に実家の会社にも年金事務所から書面が届いたことがあるなという記憶がありましたけど。
今回、調査の経験がない私が、社会保険労務士の勉強で得た知識で使える調査の対策について書いてみようと思います。
最初は年金事務所調査です。調査未経験なのに偉そうに書いています。すいません。。
社会保険労務士試験の試験科目
試験としては1つですが、試験科目が分かれています。
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む)
- 雇用保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む)
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
引用:社会保険労務士試験オフィシャルサイト
この中で、年金事務所が担当するのは、社会保険である健康保険と厚生年金保険です。
ここからは、自分なりに他の社労士のブログやサイト・書籍などから学んだことを書いていきます。まだ勉強中のものやあやふやなところもあるのでそこはもっと経験したり調べてから書きます。
ご理解ください。
年金事務所調査の目的と種類
目的
お勤めされている方だと、給与から社会保険料として健康保険料(+介護保険料も)と厚生年金保険料が天引きされているかと思います。
まず会社ですと、社会保険に加入しなければなりません。
しかし加入をしていないことも多いようです。
特に新規で会社を作った方は、社会保険の加入をしたものの保険料の支払いが正しく行われていない場合もありますし、加入すらしていない場合も考えられます。
従業員にとっても大問題です。
厚生年金に加入していれば将来厚生年金が国民年金に上乗せしてもらえます。
健康保険も、扶養している家族分の保険料は無料になるわけです。
もし加入していないことが発覚すると、最大過去2年間保険料を支払わなければならなくなります。
社会保険料は従業員本人と会社が半分ずつ負担することになっていますので、従業員にも負担がかかってきてしまいます。
調査の種類
名称はいろいろありますが3つに分けられることが多いです。
総合調査 | 4年に1回程度 正しく社会保険に加入しているかの確認 |
算定基礎調査 | 4年に1回程度 算定基礎届などの提出についての確認 |
新規適用調査 | 加入後6カ月以内 新規に適用になった事業所に対して行われる |
調査で指摘されやすいものをチェックする
どの社労士も、書籍でもそうですが調査でチェックされやすいところがあるようです。
会社には事前に年金事務所から通知が送付されてきて、そこに持参してほしい書類が指示されていてその書類を持って年金事務所へ行くことになります。
まずは指示された書類を準備すること。
そして、書類準備だけでなく調査で指摘されそうなところをあらかじめチェックしておく。
ネットでも書かれていましたが、書類の準備だけで終わっている方が多く結局誤りを指摘されてしまうことが多いようです。
チェックされやすいところを知っておくこともかなり有効だと思います。
ここからは、チェックされやすい4つの点について書いてみたいと思うので参考にしてみてください。
社会保険加入もれー加入する事業所と加入する人
まず、加入しなければならない事業所は、以下の2つです。
- 法人
- 従業員5人以上の個人の事業所で、適用除外以外の業種
適用除外(=適用のない)の業種だと、個人事業所であれば従業員5人以上でも加入しなくてもいいというわけです。
適用除外の業種とは以下のものです。
- 農業、牧畜業、水産養殖業、漁業
- サービス業(ホテル、旅館、理美容業、料理店、飲食店、娯楽、スポーツ、レジャー産業)
- 法務業(弁護士、会計士、税理士、行政書士、社会保険労務士、弁理士など)
- 宗教業(神社、寺院、教会など)
また、社会保険に加入する人を被保険者といいます。
- 法人に雇われている従業員のほか、取締役や役員も被保険者となります
- 個人事業所に雇われている従業員は、適用除外以外の業種(=通常)なら被保険者になります
- 個人事業主本人は社会保険に加入できないので、国民健康保険・国民年金に加入します
この被保険者となる人は、常勤の従業員に限定されていません。
パートやアルバイト、外国人や学生・高齢者などに関係なく一定の労働時間や労働日数を満たせば、被保険者となります。
したがって、パートやアルバイトでも社会保険に加入し保険料を支払わなければならない場合があります。給与の多い少ないは関係ありません。
そこで、社会保険に加入しなければならない場合とは以下のとおりです。
この3/4以上という目安ですが、こんな感じになります。
ちなみにここでいう労働時間と労働日数は、法律で定められたもの(法定労働時間)ではなくて会社が定めているものです(所定労働時間)。
正従業員の労働時間 | 社会保険加入義務あり |
週40時間 | 40時間×3/4=30時間以上 |
月22日勤務 | 22日×3/4=16.5日以上 |
このパートやアルバイトなどの加入もれが多いとのことです。
資格取得日の誤り
従業員を雇用すると、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」という書類を年金事務所へ提出することになります。
この書類に従業員の「資格取得日」を記載する欄があります。
この資格取得日は、実際に雇い始めた年月日を記載します。
よく試用期間を経て採用される従業員の方もいますが、試用期間も社会保険に加入する必要がありますので注意です。
標準報酬月額の計算誤りー保険料の計算
毎月の給与支給額から天引きされる社会保険料は、その都度計算しているわけではありません。
4月~6月までに実際に支払われた給与の平均額(「報酬月額」と言います)から「標準報酬月額」を求めて、年金事務所へ「算定基礎届」というものを提出します。
つまり、こんな感じです。
4月から6月に支払った給与÷3か月=報酬月額➡標準報酬月額
- 3月分を4月に支給している場合(翌月支給)は、3月分~5月分の給与から計算します。
- 残業手当も含みます。
算定基礎届は7月10日までに提出が必要なので、7月1日からの10日間程度で作成しなければなりません。
その後、年金事務所から届く「標準報酬決定通知書」に基づいて、9月~翌年8月分までの保険料を天引きしていくのです。基本的にこの期間は一定額になります。
標準報酬月額を計算する際に、通勤手当や残業手当の取り扱いが間違えやすいです。
なぜなら、税金(所得税)と取り扱いが違うので混同しがちなのです。
ここで、手当と社会保険・税金についてまとめてみます。
通勤手当 | 残業手当 | |
標準報酬月額 | 含める(プラスする) | 含める(プラスする) |
所得税の計算 | 含めない(プラスせずそのまま) | 含める(プラスする) |
所得税では、通勤手当は一定額は税金はかかりません(=非課税)。しかし、標準報酬月額を計算する際には非課税のものも含めます。
また、保険料は、当月分を翌月末日までに納付しなければなりません。
保険料は、被保険者負担分(半分)を給与から天引きして、保険料全体を事業主が納付します。
具体的に、当月11月分の保険料は12月末までに納付しなければならないということです。(12月末の場合大みそかでお休みなので年明け最初の平日まで)
したがって、11月分給与を12月2日に支給した場合(翌月支給)には、以下のようになります。
- 11月分の社会保険料を計算して12月2日に天引きします
- 12月末に12月2日に天引きした分も合わせて事業主が納付します
- 給与を支払った月の翌月末日が納付期限ではありません!
さきほどの、「標準報酬決定通知書」に基づいて保険料を天引きする期間は9月分からスタートですので、納付期限が10月末からのものになります。
これは事業所によって給与の締め日や支給日が異なってきますが、当月分の給与を当月中に支給する事業所は、保険料だけ前月分から天引きし当月末が納付期限になるので混乱しがちです。
月額変更届や賞与支払届の提出もれ
基本給や毎月決まって支給される手当(通勤手当や役職手当など)に変更があったときに、「月額変更届」を年金事務所へ提出する必要があります。
なぜなら、先ほど出てきた保険料の計算のもととなった「標準報酬月額」が変わることで保険料が増えたり減ったりするからです。
届出がないと差額分の調整が必要になってしまいます。
また、賞与(ボーナス)を支払った場合、支払われるごとに「賞与支払届」を5日以内に年金事務所へ提出する必要があります。
賞与額については、毎月の保険料とは別に賞与の保険料を支払う必要があります。
したがって、賞与の支払いの事実があるのに届出をしていない=賞与分の保険料を支払っていないということになってしまいます。
まとめ
他にも持参すべき書類として、源泉所得税の納付書などもあります。
賃金台帳や出勤簿(タイムカード)を見ながら調査が行われます。
書類の準備と、先ほど書いた指摘されそうなポイント4つを確認しておくと安心かなと思います。
年明けに各ポイントについてもっと詳しく説明してみたいと思っています。
ちょっと言葉が難しいですしね。
明日は労働基準監督署調査のポイントについて書いてみますね。
では。
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