年金と扶養親族の判定~税金の話~

街角の年金相談センターや市役所の年金出張相談で相談員としての仕事をしていると、税金の話も併せて聞かれることがあります。

今回は、年末調整の時期ということもあり、ご家族の中で年金収入がある方がいたときに扶養控除を受けられるのかどうかについて書いてみたいと思います。

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扶養親族と扶養控除

扶養親族とは、給与の支払を受ける本人と生計を一にする親族で合計所得48万円以下の方をいいます。

生計を一にするという言葉は、生活費をひとつのサイフで払っているという意味です。

必ずしも同居していることが要件ではありません。

例えば、父親が病院に入院している場合、たまたま別居している状況ではありますが常に生活費や治療費などを送金している場合には生計を一にしているとされます。

所得とは、収入から必要経費を差し引いたもうけをいいます。

給与収入・年金収入の場合には、必要経費を確実に計算することが難しいため概算である給与所得控除や公的年金等控除を収入から差し引きます。

給与所得控除の最低額は55万円、公的年金等控除の最低額は65歳以上だと原則110万円です。

このため、

  • 給与所得48万円を給与収入でいいかえると48万円+55万=103万円
  • 年金所得48万円を年金収入でいいかえると48万円+110万円=158万円

となるわけです。

「合計所得」となっていますので、給与と年金両方をもらっているのであれば足し合わせます。

なお、扶養控除は、控除対象扶養親族が受けることができます。

控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち年齢16歳以上の方をいいます。

今回は年金収入がある方を見ていきますので、年齢が60歳以上の方を想定してみると、

  • 年齢60歳以上69歳以下:控除対象扶養親族(1人38万円控除)
  • 年齢70歳以上:老人扶養親族(1人48万円控除)
  • 老人扶養親族で本人または配偶者と同居:同居老親等(1人58万円控除)

の3つが考えられます。

年金の税金関係

年金には、大きく老齢・障害・遺族の3つの年金があります。

このうち、所得税や住民税がかかるのは老齢年金だけであり、障害年金や遺族年金は所得税や住民税はかかりません。

なお、亡くなった方がもらう予定だった年金を遺族がもらう未支給年金は、遺族の方の一時所得となり所得税や住民税がかかることがあります。

未支給年金については「亡くなった方の相続財産となるから相続税がかかる」と思われそうですが、「遺族の方の」所得税や住民税に影響するお話ですので勘違いしないようにしましょう。

事例

では、ここで事例をご紹介します。

本年の年末調整の準備のため、従業員の「扶養控除等申告書」の内容を確認していたところ、従業員Aの扶養控除等申告書で扶養親族とされている母の収入内訳は、①パート収入70万円②遺族年金80万円であることが分かりました。扶養親族の判定上、遺族年金はどのようになりますか。

引用:大蔵財務協会 「令和5年版 年末調整のしかた」 より

扶養控除等申告書には、「所得の見積額」を記入する欄がありますが、これがもし48万円を超えてしまいますと扶養親族とはなりません。

ということは、扶養控除も受けられないわけです。

しかし、遺族年金は所得税や住民税はかかりませんので、遺族年金を除いたところで扶養親族の判定をすることになります。

Aの母はパート収入70万円だけをもとに判定を行いますので、給与所得控除額55万円を差し引いたあとの合計所得は15万円になりますので扶養親族になります。

年齢が60歳以上の場合、控除対象扶養親族・老人扶養親族・同居老親等のいずれかに該当するので扶養控除を受けることができます。

もちろん、障害年金をもらっている場合も障害年金を除いたところで扶養親族の判定を行います。

まとめ

今回は、年金と扶養親族のお話を書いてみました。

年金相談をしていて遺族年金を受け取ると税金がかかると思われている方が多いです。

年末調整時期なので税金の話を中心に書かせていただきました。

では。

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