年末調整において、社会保険料を支払っていると支払った全額を控除することができます。
ただし社会保険料は、給与から天引きされる場合のほか本人が直接払うこともあります。
未納分を払ったら?とか、年金から天引きの場合は?口座振替は?など今回も事例を踏まえながら解説してみたいと思います。
【事務所お知らせ】社会保険料控除
まず社会保険料ですが、大きく2つにわけることができます。
- 給与から天引きするもの:健康保険・厚生年金保険・雇用保険
- 直接自分で支払うもの:国民健康保険・国民年金保険
社会保険料を支払ったらその社会保険料の全額を社会保険料控除として控除することができます。
給与から天引きされる社会保険料は、保険料控除申告書で申告する必要はなく源泉徴収簿に記入しておき年末調整の際に集計すれば済みます。
しかし、本人が直接支払った社会保険料は、保険料控除申告書により申告した全額が控除されることになりますので、その申告の内容を確認する必要があります。
国民年金保険料の証明書類の添付
年末調整における社会保険料控除のうち、国民年金保険料については保険料控除申告書に証明書類(領収書や証明書)を添付(提示)することになっています。
年末調整において社会保険料控除を受けた国民年金保険料があるときには、給与の源泉徴収票に国民年金保険料の金額を記載する必要があります。
社会保険料控除のよくある事例
ここからは社会保険料控除で間違いやすい事例をご紹介していきます。
未納分を支払った場合
国民年金保険料が未納である場合には、2年前までなら納めることができます。
一方で、学生納付特例や保険料猶予制度などは10年前まで納めることができます。
前年以前の国民年金保険料を本年に支払った場合には、本年の年末調整で社会保険料控除の対象とすることができます。
この場合、保険料控除申告書の社会保険料控除欄に記載する必要があります。
父親の年金から差し引かれている社会保険料
介護保険料が年金から天引きされるようになるのは年齢65歳以上です。
それまでは、お勤めされている場合ですと健康保険料に含まれて天引きされていました。
この介護保険料も社会保険料控除の対象となります。
本人が社会保険料控除を受けるためには、本人または配偶者その他の親族が支払うべき社会保険料を支払うことが必要です。
今回の事例の場合、父親の年金から介護保険料が差し引かれているため払っているのはあくまで父親であり本人が払ったものではありません。
したがって、本人の所得から差し引くことはできません。
口座振替により支払った後期高齢者医療制度の保険料
後期高齢者医療制度とは、年齢75歳以上の方が加入するもので原則として年金から保険料が天引きされます。
保険料を支払った人は年金を受け取っている親本人になるため、親の社会保険料控除の対象になるのが原則です。
しかし、市区町村へ一定の手続きをすることで、年金からの天引きではなく、世帯主または配偶者の預金口座から口座振替により保険料を支払うという選択ができます。
この場合は、口座振替により保険料を支払った人が社会保険料控除を受けることができます。
今回の事例では、Xが口座振替により後期高齢者医療制度の保険料を支払っていますのでXが社会保険料控除を受けることができます。
支払った保険料については、保険料控除申告書の社会保険料欄に記載して、年末調整の時までに申告してもらってください。
まとめ
社会保険料控除は支払った金額が全額控除されますが、誰が支払ったのか・いつ支払ったのかは気を付けたいところです。
今回挙げた事例は年金相談でもお受けしたことがあります。
ちなみに、国民年金保険料の控除証明書は日本年金機構から送付されてきます。
令和5年分の発送スケジュールも決まっておりますので確認しておくといいでしょう。
また、ねんきんネットで電子送付を希望されていると早めに確認をすることができますのでお勧めです。
では。