冒頭の「会計ソフトに入力できたら教えることはない」という言葉。
ある税理士が記帳指導の際にお客様にこう言って途中で記帳指導を打ち切ったそうです。
【事務所お知らせ】記帳指導の意味
記帳指導は、税務署から依頼を受けた税理士が開業間もない、または希望する個人事業主のお客様に対して仕訳から決算書・申告書を作成する流れを指導するものです。
全4回で実施することになっており、一般的には、
- 1回目:仕訳など会計処理の説明
- 2回目:1回目の復習
- 3回目:決算書の作成方法
- 4回目:申告書の作成方法
の指導を行うことになっています。
自分で決算書・申告書が作成できるようになってほしい=自計化を促すという意味合いが大きいです。
さらに、昨年10月からのインボイス制度導入に伴い消費税の確定申告が必要になる方もおられましたので毎回少しづつ説明をさせていただいていました。
「会計ソフトが使えるから正しい」わけでもない
決算書を作るからにはそれぞれの勘定科目を集計する必要があります。
例えば、売上や通信費・減価償却費など。
集計の仕方はノートに手書きされている方もいればExcelで集計されている方もおられます。
一方で、今後残高管理までしたいとか青色申告特別控除で65万円を選択したい場合、データ連携をしたい場合に会計ソフトで入力される方もいらっしゃいます。
しかし、会計ソフトで入力するにしても手書きするにしても、そもそも経費のどの科目に集計したらいいのか、売上はいつ計上するのかなどはわからないこともあります。
「会計ソフトに入力したら完璧だ」というわけではありません。
仕訳の仕組みそのものがわかっていないとなかなか正しいものを作成するのは難しいでしょう。
冒頭の発言をした税理士は自分が手書きでしかやったことがなく専門家だから仕訳は理解している前提で話をされたのかもしれません。
会計ソフトが使えているのであれば仕訳や集計方法については会計ソフトに任せたらやってくれる。
根本の説明はいらないと思ったのかもしれません。
しかし、実際に会計ソフトを使っている方の記帳指導をしていますと、借方と貸方が逆になっていたり差額があったりと入力ミスが目立ちます。
勘定科目もそれでいいのかなと思うこともありますし、明らかに資産として計上しないといけないものを経費に入れていたりもします。
プライベートな経費を入れている方も目立ちますね。
その判断の基準は実は会計ソフト入力以前の問題で、手書きで集計する場合であったとしてもプライベートな経費は入れないなどは指導すべきですよね。
「会計ソフトの入力ができる=何も教えることがない」となぜ言い切れたのか不思議で仕方ありませんでした。
うーん、私の指導の仕方がまずいんでしょうか…。
操作方法がわからない方も
記帳指導では、会計ソフトの操作方法までは指導することはできません。
ご本人で会計ソフト会社に問い合わせていただくのが建前です。
しかし、そんなこと言ってもどう問い合わせたらいいのかわからないというご相談をお受けします。
会計ソフトの操作そのものがわからないというのです。
例えば、仕訳入力をした結果どの科目がいくらなのかの見方がわからないのです。
あと、仕訳の修正をしたいのに1月から1件ずつ見返している、とかですね。
そもそも会計ソフトに入力しているのに操作がわからないことで恩恵を受けていない方が多い気がします。
私もすべての会計ソフトの操作が分かっているわけではありませんが、例えば残高試算表を見てみるとか、仕訳の修正はこうやってやるとか指導することはできます。
会計ソフトの入力が間違えなくてきる方って多くないと思うんです。
記帳方法を教えてほしいとか疑問点があるから記帳指導を希望されたわけですから。
まとめ
「何も教えることがない」といった税理士は、結局2回目や3回目で担当しているすべての方の指導を打ち切りました。
お客様との合意があったようなのでいいのかもしれませんが、会計ソフトの入力だからこそ教えることってあると思うんです。
操作もしかり、そもそも仕訳ってどうやるのかも含めて。
なので、反面教師ではないですけど私は記帳指導全4回を途中で打ち切ることはしたことがありません。
ただお客様自身の疑問点が解決すれば1回の指導時間を若干早く終わらすことはありますけど、疑問点や不安を解決できるサポートは4回すべてを使って対応しています。
では。