税務調査に来る調査官は、税務上正しい処理をしているのか、正しく申告しているのかを調査するのが目的というのが建前です。
でも実際は、上司や周りから評価をされて出世が決まったり給与変動があったりするので、業務成績を上げなければならない、というのが本音です。
ここで、今回はその調査官の本音について書いてみたいと思います。
誤りを多く見つける
調査での業務成績を判断する指標として、「非違割合」があります。
非違割合とは、その調査官の調査件数のうち誤りがあった調査件数のことを言います。
この非違割合が高い方が職場内評価は高くなります。
調査に行くと何かしら誤りを見つけなければならないという命題が課せられるのです。
調査先は上司である統括官から指令され自分で何が誤りか想定し調査に向かうことになります。
何かしら誤りを見つけたいという気持ちがあるために、調査先ではあらゆるものを疑いの目で見てしまいます。
評価が悪くなるのは「是認」をすること。
是認とは、調査に誤りはなかったことです。
その中でも一番評価が低いのは、「(是認)通知を送ること」なのです。
つまり、調査の終了時に「更正決定すべきと認められない旨の通知」を送付することが一番税務署側にとっては屈辱なのです。
この是認を連発してしまう調査官だと、業務成績の評価は低くなってしまいますし、それを指導する上司の評価も下がってしまうのです。
この非違割合は金額は関係ありません。
もちろん多額の誤りを見つけるほうがいいのは確かですが、調査先がすべて同じ規模の会社や事業主ということはなくて、売上が少ないところから数億円のところまでいろいろあります。
どうしても規模の小さいところですと誤りの金額は少額になりがちですし。
金額よりも誤りを見つけた調査がどれだけあったのかが評価されます。
また、非違割合もいろいろな税目があるとさらに評価が高まります。
どういうことかというと、法人税の調査ですと、法人税以外にも消費税や源泉所得税・印紙税も調査の範囲に含まれます。
法人税の誤りだけより、消費税や源泉所得税と2つ3つといくつの税目にもわたって誤りがあると調査としてよく見ていると評価されます。
つまり調査官はいろいろな税目にわたって多くの誤りを見つけたいと思っています。
重加算税対象の不正をどれだけ発見するか
誤りの中でも特に不正行為を発見すると評価が高くなります。
不正行為(=売上を抜く、経費を意図的に多く計上するなど)があると、重加算税の対象となります。
重加算税はお客様にとっては相当な痛手となります。
追加税金をたくさん支払うことになってしまいますからね。
しかし、調査官の内心は大喜びです。
なぜなら重加算税を取るような状況だと、法人税のほかに消費税や源泉所得税もすべて不正があるという状況に持ち込める可能性があるのです。
先ほど書いたように、すべての税目で不正ありとなるため評価が一番高くなるのです。
もちろんこれは妥当ですよね。
調査の目的として、きちんと税金を計算し納付しているのかというのが一番です。
調査官としては「不正」「脱税」をしていないかどうかを調査するので、これが見つけられるとなると評価されて当然です。
なのでいくら誤りをたくさん見つけられたとしても、不正に結びつかないような誤りだけだと調査がきちんとできていないのではないかという評価を受けてしまいがちになります。
結局は統括官の指示能力によるところが大きい
調査官にもさまざまな人がいますが、結局調査を指示するのは統括官と呼ばれる部門の長です。
統括官の指示いかんで調査の進め方が変わったりすることもあります。
特に、若い調査官や新人の調査官だと、自分で方向性を決められないことが多いので、統括官に指示をたくさん仰ぐことになります。
統括官が意図しない誤りを発見したら、指導事項として事後に直しておけば誤りとしないということもあります。
もちろん統括官の指令が全て想定通りにいくことはありません。
しかし、統括官もそれなりに誤りがあるだろうと想定して調査先を選定していますので、部下である調査官に誤りがないと言われると「きちんと見てるのか?」と思ってしまうのです。
調査から帰ってきたら、統括官に今日の調査の内容を報告する時間があります。
そこでいろいろな話し合いがおこなれ、時には統括官に怒られたり双方の意見がぶつかり喧嘩をしたりすることも。
ここで、統括官が意図した行動を取っていない調査官は評価は下がってしまいます。
私もよく統括官から怒られました…。
ただ、たまに統括官が選んだ調査先がことごとく是認になることもあります。
もちろん統括官もいろいろな方がいますから仕方ないと言えば仕方ないのかなと。
1年過ぎたらその統括官の評価もきっと下がるでしょうけどね。
まとめ
今回は、調査官の本音ということで書いてみました。
お気づきでしょうか?
誤りを「見つける」、不正を「発見する・見つける」と書いたことを。
調査官は、調査先では怪しい目を持っておかしいなと思うことを探しているのです。
誤りを探して・見つけて税金を取るというのが本音です。
調査先へ指導するという側面より、誤りをいかに見つけるかにかかっています。
たまに税金を取ることに思いがいき過ぎてしまって、訴訟になったりすることもありますけどね。
では。
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