税務調査で指摘されるものの中で「売上や仕入れの期ずれ」というものがあります。
期ずれはまず一番最初に帳簿を見て確認されるものですが、指摘されないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
今回は、そのポイントと対応策について書いてみたいと思います。
【事務所お知らせ】その年の所得は「期間計算」を行う
個人事業主を例にとりますと、1/1~12/31の1年間の売上から経費を差し引いて所得(もうけ)を求めます。
この1年間という期間を区切って計算を行うことを「期間計算」といいます。
経理をおこなううえで、また税務上でもこの期間計算を正しく行うことが求められており、例えば本年の売上を翌年に計上することは認められていません。
意図的に売上計上を操作することはもちろん、単なるミスも許されないということになっています。
税務調査では、通常調査1日目の後半から会計帳簿を見て請求書や領収書などをチェックされます。
売上から仕入れ・経費と順番に行くわけですけど、まず最初にこの期ずれがないかどうかを確認するのが一般的です。
期ずれが起こりやすいのは?
この期ずれが起こりやすい項目があります。
それは、売上・仕入・在庫です。
これらはいわば営業をしていくうえで大事なものですから金額的にも高額になります。
一方で、そのほかの経費については金額的に大きなものにはならないことと、少額の経費は厳密に期間計算をしなくてもいいという例外があります。
つまり、経費については税務上でも支払った年の経費にしてもいいという場合があるということです。
ですので、一般的に期ずれとして問題になるのは売上・仕入・在庫だとされています。
期ずれが起こる理由
期ずれは商品の流れに連動します。
一般的には商品を仕入れて販売するわけですけど、期間計算が求められている以上売れ残り(在庫)が生じます。
売上を計上するのは入金時ではなくあくまで取引があったとき(相手に引き渡したときが原則)に計上します。
取引があったあと入金が行われるのが一般的ですから、もし取引が令和5年・入金が令和6年で入金時に売上を計上していたら期間計算上は間違いです。
本来は令和5年で売上計上をしないといけません。
一方で、仕入れた商品は令和6年に売上計上するときに売上原価ということで経費になりますけど、令和5年では売上になっていませんので在庫扱いになっているわけです。
令和5年で売上計上をすると、在庫になっている商品は売上原価として経費にしないとバランスが悪くなります。
売上に対応する経費をきちんと集計するという期間計算からすると、経費の計上もずれてきます。
期ずれの調査方法と対応策
期ずれを指摘されるのは、大量の商品を販売するような業種が多いです。
卸売業や小売業がよく指摘されます。
一方で、建設業や製造加工業など注文生産かつ大口な取引先が多いと期ずれの誤り件数も少ないかと思われます。
期ずれの調査方法としては、その年だけではなく翌年1月から3月くらいまでの請求書や領収書を確認します。
具体的に、令和5年分の税務調査が行われた場合、令和5年分だけでなく令和6年1月から3月くらいまでの請求書や領収書などを確認します。
なぜかというと、入金時が令和6年でその時点で売上計上していたら間違いだから。
本来は令和5年に売上を計上しないといけないわけですので令和6年に入ってからの請求書や領収書から期ずれを見つけ出す、というのが行われます。
仕入についても、令和5年12月末近くに買ったものや、12月から翌年3月くらいまでの売上との照らし合わせから見つけ出します。
在庫に関しても棚卸表を作成しているはずですから棚卸表もチェックすることになります。
翌年には期ずれはなくなるけど…
例えば、令和6年に売上を計上していたけど令和5年の売上だと指摘された場合には、令和5年の売上は増えます。
一方で、令和6年の売上は減りますよね。
つまり、翌年には期ずれは解消されますので、長い目でみたら修正申告による加算税と延滞税だけを納めさせるということで終わるケースが多いです。
なのであまり力を入れる調査項目ではないはずです。
しかし、なぜこの期ずれを最初に指摘するかというと簡単に指摘できることとここがきちんとしているかどうかで調査の進捗度合いが変わってくるんですね。
もし期ずれを指摘できなければ調査官は「ここはひょっとしたら誤りが少なそうだ」と思ってもらえて調査が早く終わるという可能性も出てきます。
まとめ
調査官の中にはこの期ずれだけを指摘するという方もおられますが、期ずれはどの調査官も確認すると思っておいた方がいいです。
ただ期ずれだけを指摘する調査官はあまり優秀だとは思いません。
むしろもっと見ないといけないところがありますし、上司はもっと違うところを確認してくるように言っていると思いますので。
では。