一人親方や一定の自営業者に限って特別に労災保険に加入することができます。
勤務中や通勤途中でケガや病気になった場合には労災保険から補償を受けることができます。
今回は、その特別加入制度と保険料を支払った時の経理はどうなるのかについて説明してみようと思います。
【事務所お知らせ】労災保険の特別加入制度
本来、個人事業主は労働者ではありませんので労災保険の対象ではありません。
しかし、一人親方や柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・歯科技工士は本人も労働者であることとケガや病気のリスクが高いために特別に労災保険に加入できます。
特別加入の手続きとしては、一人親方労災保険などの特別加入団体に加入をして、その団体経由で手続きを行ったりします。
この場合、保険料や休業補償給付など給付額を計算するもととなる給付基礎日額は、申請に基づいて労働局長が決定します。
年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365日)にそれぞれの事業で定められた保険料率をかけたものです。
例えば、建設業の場合の保険料率は17/1000となっていまして、給付基礎日額が4,000円なら保険料算定基礎額は1,460,000円、年間保険料は24,820円となっています。
業務または通勤によりケガや病気をした場合には労災保険から給付が行われます。
ただし、保険給付の対象となる業務は加入者ごとに一定の業務に限られています。
例えば、建設業の一人親方の場合は以下のものとされています。
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
- 請負工事現場における作業
- 請負契約に基づくもので自家内作業場で行う場合
- 請負工事に関する機械や製品を運搬する作業
- 台風や火災などにより予定外に緊急の出勤を行う場合
労災保険料を支払った場合
労災保険料は本来労働者が支払うべきものです。
もし勤務先で労働者が支払うべき労災保険料を支払う場合には「法定福利費」として経費になります。
しかし、労災保険に特別加入した場合には、一人親方などが個人的に加入したものになりますので事業の経費とはなりません。
事業の経費にはなりませんが、一人親方自身の確定申告において社会保険料控除に含めることができます。
例えば、一人親方が労災保険に特別加入して保険料30,000円を事業用の普通預金口座から支払ったとした場合、
(借方)事業主貸 30,000円 (貸方)普通預金 30,000円
となります。
本来、法定福利費としてしまいそうですけど経費になりませんので「事業主貸」とします。
一方で、支払った保険料30,000円は社会保険料控除に含めますので、国民年金保険料や国民健康保険料とともに労災保険特別加入分も控除されます。
というのがポイントです。
毎年質問を受けます
今回、労災保険の特別加入制度とともに経理について書いてみたのは、実は確定申告期の相談や記帳指導にて質問をお受けすることがあったからなんです。
個人事業主でも労働者を雇うことはあるはずで、従業員の労災保険料を支払った場合には経費になることはご存じなんです。
ただ、本人が労災保険に特別加入した場合の経理についてはよくわからないとか、経費にしてしまっているケースもありました。
社会保険料控除に含めることに気づかない方もいらっしゃいました。
社会保険料という言葉をそのまま解釈したら労災保険の特別加入保険料がここに入れていいとは思えませんからね。
まとめ
今回は、労災保険の特別加入制度と保険料を支払った時の経理について書いてみました。
毎年この手の質問をお受けしているなと思っていたので今回整理してみました。
では。