一人親方の税務調査ポイント ⑩印紙税

一人親方の税務調査ポイント10回目。

今回は印紙税を取り上げます。

一般的な税務調査では後回しにされがちな論点ではありますけど、建設業を営んでいると意外と盲点になったりします。

【事務所お知らせ】  

印紙税って?

では、そもそも印紙税とは何かを簡単に。

工事請負契約書や領収書などの書類を作成すると印紙税という税金がかかります。

印紙税は、

  1. 郵便局やコンビニなどで必要な金額の印紙を買ってくる
  2. 作成した契約書などに貼り付けて、印鑑を押して再び使えないようにする(=消印をする)

で納めたことになります。

通常、契約書は契約の当事者、領収書は発行者が印紙税を負担することになります。

相手から契約書が2部送付されてきた場合には、そのうちの1部に印紙が貼ってあることを確認し、印紙が貼っていないほうの契約書に自分の印紙を貼ります。

その後、両方の契約書に押印をして、先方には自分の印紙を貼った契約書を返送sい、もう1部は自分の控えにする、という形です。

一人親方の工事請負契約

建設業を営む一人親方は、建設業法で請負契約について以下のように定められています。

建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結の際に工事内容や請負代金の額など決められた事項を書面に記載して署名または記名押印をして相互に交付しなければならない。

つまり、工事請負契約書を作成することが前提です。

ただし、小規模工事等の契約にあたっては注文書や請書により請負契約を締結することができるとされています。

印紙税の税務調査

印紙税の税務調査で確認されるのは、契約書に印紙が貼られているかどうかと印紙税が正しい金額かどうかです。

印紙税が課税されるかどうかは、契約名ではなくてその契約書の記載内容によりますが、建設業では以下のような契約書名で交わされます。

  • 注文書
  • 注文請書
  • 工事請負契約書(建築請負契約書)
  • 工事請負変更契約書
  • 工事請負基本契約書

これらの契約書はすべて課税(印紙を貼らないといけない文書)であることが一般的です。

工事請負契約書に関しては、ほかの請負契約書とは異なり印紙税の金額が安くなっています。

また、基本契約書の場合、個々の取引ではなく共通条件を決めるための文書と判断されたら一律4千円となります。

印紙が貼られているかどうかチェック

保管されている工事請負契約書を見て印紙が貼られており消印がされているかが確認されます。

もし印紙が貼られていないことが明らかなら早急に添付することも大事ですが、時代とともに印紙のデザインが変わります。

後で貼った場合には契約時点では存在しないデザインのものを貼ったことが明らかになってしまう点に注意が必要です。

もし税務調査で印紙を貼り忘れていることが明らかになると、原則として本来の金額の3倍が徴収されます。

ただし、実際は「不納付事実申出書」を税務署へ提出することで1.1倍の徴収に軽減されます。

また、貼ってあっても消印をしていない場合には、本来の金額と同額を追加で徴収されます。

これらはいわゆるペナルティなので全額経費となりません。

正しい金額かどうか

基本的には、国税庁ホームページにある印紙税額一覧表で確認をします。

請負に関する契約書は「第2号文書」とされています。

国税庁ホームページ 印紙税額一覧表

請負のうち、建設工事の請負契約書については、太枠内のように印紙税が安くなっています。

「建設工事請負契約書」については、令和6年4月1日から令和9年3月31日までに作成されるものについても、印紙税の軽減措置が適用されます。

この中で印紙税が安くなる建設工事に当てはまらない請負契約書がありますので注意が必要です。

  • 建物の設計のみ
  • 建設機械等の保守のみ
  • 船舶の建造又は家具・機械等の製作若しくは修理等のみ

なお、工事請負契約書に建設工事以外の請負に係る事項が併記されていても軽減措置の対象となります。

(例)建物建設工事の請負(契約金額5,000万円)と建物設計の請負(契約金額100万円)に関する事項が記載された契約書
⇒この契約書に記載された契約金額は5,100万円(建物建設工事の契約金額5,000万円+設計の請負金額100万円)ですから、印紙税額は3万円となります。

印紙税は税理士業務の対象外だけど…

税理士は印紙税についての代理業務を行うことができません。

「税務調査で印紙税の話になると税理士は口出しできないよ」ということを意味しています。

ただし、実際の税務調査の現場では、納税者である一人親方と直接やり取りするよりも税理士に間に入ってもらったほうが話しやすいということがあります。

そのため、調査官が税理士に意見を求められたり、また誤り等がある場合に税理士が処理をしたりすることがあります。

建設業の電子契約

建設業法の改正により、注文書や工事請負契約書などは電子契約で行うことが可能になりました。

電子契約とは、これまで紙の契約書に捺印をして行っていた契約をメールやPDFなど電子データでやり取りするものです。

電子契約の場合には、そもそも課税文書にあたらず印紙税がかかりません。

印紙税はそもそも書類(紙)に印紙を貼るということですから、PDFやメールで作成した契約書データは印紙は不要です。

私の事務所では「クラウドサイン」という電子契約を使っています。

まとめ

今回は印紙税について取り上げました。

税理士が代理できない税目ですが、もし印紙を貼ったらいいのかどうか判断に迷う場合には最寄りの税務署に確認するということも可能です。

その際は、事前に予約をして作成した契約書をもって税務署に伺うようにするといいかと思います。

では。

 

 

 

 

 

 

 

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