年金相談をしていますと、勤務先からの給与やボーナスが高いため年金が調整されるケースがあります。
個人事業主など自営業をされているお客様からのご相談で年金が調整されるのかどうかを質問されたら気を付けたいことがあります。
【事務所お知らせ】在職老齢年金の調整
厚生年金に加入しながら働き給与やボーナスを得ますと、一定金額以上なら年金額が調整されます。
これを「在職老齢年金の調整」と言ったりします。
在職老齢年金の基準額は令和6年4月から50万円です。令和5年は48万円だったので変更が行われています。
在職老齢年金の調整の仕組みは、
②調整する月の給与額(日本年金機構に登録している標準報酬月額)
③過去1年間の賞与の1/12の額
→①+②+③と基準額50万円を比べます。
合計額が50万円以下であれば、年金は全額支給されます。
一方で合計額が50万円を超えますと、超えた額の1/2が年金額より差し引かれます(停止)。
厚生年金に加入しているか
在職老齢年金の調整が入るのは厚生年金に加入して一定以上の給与やボーナスをもらっている場合です。
つまり、
ということなんです。
結局、厚生年金に加入しているかどうかで調整がかかるので、お客様がおっしゃる内容をそのまま鵜呑みにしてしまうとミスにつながります。
在職老齢年金の境目を知りたい
代表者の方の役員報酬を決める際に、年金額が調整されないようにしたいというご相談があります。
毎年基準額が変更になっていますので気にされる方も多いです。
給与計算を担当されている社労士や税理士の方がお越しになられたりもします。
以前こちらのブログでもご紹介しました。
「給与をいくらにすれば年金は満額もらえますか?」に回答してみる
今回は、年金額がわかっている場合に役員報酬をいくらにしたらいいのかについて解説をしてみます。
厚生年金の報酬比例部分が月13万円だったとしますと、
基準額50万円-13万円=37万円と計算できます。
これを健康保険・厚生年金保険の保険料額表にあてはめます。
和歌山県 令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 より
37万円という標準報酬月額(一番左側)はありません。
「36万円」と「38万円」という標準報酬月額ならありますが、ではどちらを取ればいいのか。
この場合は、小さいほうを選択します。
②38万円+13万円=51万円>50万円 でNG
となります。
表の見方をご案内するときに意外と慎重になるのがこのお話です。
標準報酬月額が36万円になる範囲は、35万円以上37万円未満の間です。
この範囲で役員報酬を決めていただくというご案内になります。
老齢基礎年金には影響しない
65歳以降の年金は、老齢厚生年金のほか老齢基礎年金ももらうことができます。
ここで在職老齢年金の調整になるのは老齢厚生年金のみです。
なぜなら、老齢基礎年金は誰でも加入して国民年金を40年間払うことになるからですね。
働いているかどうかに関係ないわけです。
あくまで調整がかかるのは厚生年金に加入して働いている場合のみです。
まとめ
今回は、年金相談で勘違いされている在職老齢年金の調整について書いてみました。
よく話を聞かないと厚生年金に加入していないのに調整されると思っている方がおられます。
自営業の方で収入が多いから年金が止まってしまうのではないかというご相談はよくあります。
その場合もきちんと話を聞かないとお互いミスをしてしまう可能性がありますので気を付けて対応するようにしています。
では。