消費税の課税売上げに含めなければいけないのにミスしやすいもの

消費税の確定申告をするときには、消費税が課税される売上を集計することになります。

この際、課税売上げに含めなければならないのに入れていないケースが毎年のように起こります。

消費税の課税売上げとは?

課税売上げとは、消費税の課税対象となる取引の売上高を言います。

個人事業主が事業として行う取引はほぼ課税売上げに該当します。

課税売上げの集計は、消費税の計算方法である一般課税や簡易課税どちらのケースでも行います。

このほか、免税事業者だった方がインボイス登録事業者になり消費税の確定申告が必要になった場合には2割特例による計算も認められています。

この2割特例についても課税売上げをもとに計算をしますので、課税売上げを正しく集計することがポイントとなります。

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所得区分と消費税

消費税が課税されるものは、個人事業主が事業として行う取引です。

所得税では、事業所得や不動産所得などの所得区分によって計算の仕方が異なりますが、この所得区分は消費税が課税されるかどうかとは無関係です。

個人事業主の消費税の計算を考えるときに、事業所得や不動産所得の売上を集計すればいいと勘違いしがちです。

たとえ、譲渡所得や雑所得であったとしても、事業として行う限りは課税売上げに含めることになります。

例えば、以下のような取引に注意が必要です。

①事業用車両の売却

  • 所得税の所得区分:譲渡所得の収入
  • 消費税:課税売上げ

②居住用アパートの売却

  • 所得税の所得区分:譲渡所得の収入
  • 消費税:課税売上げ

ちなみに、消費税の課税売上げに含めるのは譲渡収入です。

所得税の譲渡所得は、「譲渡収入-(取得費+譲渡費用)」と計算しますが、消費税の課税売上げは、取得費や譲渡費用を差し引く前の譲渡収入ですので注意が必要です。

譲渡所得は特に注意を

消費税の課税売上げに含めるかどうかは、所得税の所得区分とは関係ないと書きました。

所得税の所得区分のうち、土地建物の売却は譲渡所得(分離課税)にあたります。

例えば、個人事業主が店舗を売却した場合には、分離課税の譲渡所得になるもののその譲渡収入は消費税の課税売上げに含める必要があります。

事業用の建物の売却などは譲渡収入が大きくなりがちです。

所得税の確定申告書を見れば譲渡収入を把握することができますので、消費税の課税売上げが少ないなら申告がもれていることがわかってしまいます。

ちなみに、土地の売却は消費税がかからない取引になりますので、もし土地と建物を一緒に売却した場合には、建物の譲渡収入のみ消費税の課税売上げに含めます。

簡易課税の事業区分

個人事業主が、店舗を売却した場合には消費税の課税売上げに含めますが、この際簡易課税制度を選択していると事業区分を判定する必要があります。

店舗の売却は固定資産の譲渡になりますので第4種事業にあたります。

つまり、みなし仕入れ率は60%となります。

計算式は、

課税売上げ-(課税売上げ×みなし仕入れ率60%)=消費税

です。

マイホームを売却した場合は?

個人事業主がマイホームを売却した場合も、所得税では譲渡所得になります。

しかし、マイホームは事業で使っているものではありません。

自分が住むためのものですよね。

事業として行う取引に消費税がかかるわけですから、マイホームの売却は事業で行ったものではありませんので、その売却収入は消費税の課税売上げに含まれません。

2割特例がダメになるケースも

令和5年10月からインボイス制度がスタートしました。

免税事業者が新たにインボイス登録事業者になり課税事業者になったケースでは、2割特例が使えます。

その際、2年前の課税売上げが1,000万円以下である必要があります。

もし令和6年中に個人事業主が店舗を売却した場合には、課税売上げがこの年だけ1,000万円を超えてしまうことも考えられます。

すると、2年後の令和8年の消費税の申告では2割特例を使うことができなくなります。

2割特例が使えないとなると一般課税か簡易課税かの選択です。

簡易課税を選択する場合には前年末までに届出が必要ですが、2割特例が使える事業者は提出した年分から簡易課税により申告ができる、という特例が設けられています。

2割特例よりも消費税の負担が大きくなる可能性が高いですし、今後ここを狙った税務調査が行われる可能性があると考えています。

まとめ

先日この内容の研修を受けていてたしかにミスが多いのではないかと思って書いてみました。

税務調査を考えると、個人事業主は簡易課税を選択されることが多いので課税売上げをきちんと集計できているかというところがポイントになると思われます。

また、2割特例を選択している場合も課税売上げをきちんと集計する必要があります。

今後、消費税の課税売上げの集計のみにしぼった税務調査やお尋ね文書が税務署から送付されてきたりする可能性もあるのかなと思ったりはしています。

では。

 

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