先週書いたブログの内容の続きになります。
税務調査で非居住者等の源泉徴収漏れを指摘されたときに租税条約の取り決めにより軽減・免税になる場合に還付請求することができるのか。
税務調査で指摘されているからできなそうな感じがしませんか?
事例の紹介
事例を取り上げてみたいと思います。
日本法人である当社は、アメリカにあるA社との間でソフトウエアのライセンス契約を締結しており、それに伴う使用料を支払っていました。
しかし、今回の税務調査により源泉徴収の課税もれを指摘されてしまいました。
追徴された源泉所得税は、日本の所得税法に基づいて支払額の20.42%で計算されたものを納付していますが、アメリカとの租税条約によれば税率が0%(免税)になります。
この場合、使用料の支払後ですが、A社に租税条約に関する届出書を当社の所轄税務署に提出させることにより税額の免税を受けることができますか?
また、税額の免除を受ける場合には、追徴された源泉所得税(税率20.42%)と免税(0%)適用後の源泉所得税との差額は税務署から還付されるのでしょうか?
使用料支払後の租税条約に関する届出書の提出
まず、アメリカとの間に租税条約が締結されておりライセンス使用料は免税となっています。
その際には租税条約に関する届出書を当社を通じて当社の管轄する税務署に提出をすることになっています。
アメリカでは、このほか特典条約に関する付表と居住者証明書の提出を求められます。
租税条約に関する届出書は、A社が支払いを受ける日の前日までに提出しないと効力がありません。
したがって、租税条約に関する届出書を提出しない場合には、ライセンス使用料の支払の際に税率20.42%により源泉徴収されることになります。
今回の事例では、税務調査により源泉徴収もれが発覚していますので租税条約に関する届出書を提出していなかった場合にあたり、税率20.42%で源泉徴収されます。
では、後日租税条約に関する届出書を提出して租税条約により免除を受けることができないのかというと、
つまり、後日租税条約に関する届出書を提出することにより、源泉徴収税額20.42%の還付を受けることができます。
「税務調査で指摘を受けたら後出しで届出でて還付なんか無理でしょ!」となりそうですけど、後日提出がダメという規定にはなっていないんですね。
源泉所得税の還付手続きと還付先
税務調査により追徴を受けた源泉所得税については、アメリカのA社が当社を経由して当社を管轄する税務署に以下の書類を提出することで還付を請求することができます。
- 租税条約に関する届出書(様式3:使用料)
- 特典条項に関する付表(様式17-米)
- 居住者証明書(IRS発行)
- 租税条約に関する源泉徴収税額に関する還付請求書(様式11)
これってどうなの??
過去の税務調査で指摘を受けた非居住者等の支払いの源泉徴収もれについて、後日還付を求めて上記の書類の提出をされることがよくあります。
アメリカの場合にはライセンス使用料は租税条約に基づけば0%です。
もし非居住者等が支払いを受ける日の前日までに租税条約に関する届出書を提出しておけば0%ですから源泉徴収について税務調査で指摘を受けることはなかったでしょう。
しかし、もし税務調査で指摘を受けたところで後で租税条約に関する届出書とともに還付請求書を提出すれいったん納めた源泉所得税分を還付することができます。
アメリカの場合、いったん納めさせたものを後日全額還付ー。
悪い言い方ですが、税務署の実績作りなのかなと感じてしまいます。
だって、源泉徴収もれであることは事実ですし金額も多額になります。
しかし、税務調査終了後に租税条約に関する届出書を出せばいったん納めた分が還付されるっておかしくないかなと。
指摘した際の不納付加算税(源泉所得税の罰金)を稼いでいるだけだと感じますし、源泉所得税担当をしていてこの調査で成績優秀とされているのがよくわかりませんでした。
まとめ
現状では、支払後でも租税条約に関する軽減または免除を受けることができます。
その際には、還付請求書と併せて租税条約に関する届出書一式を提出すれば還付を受けることができます。
では。