会社で年末調整を行った翌年、税務署から扶養控除や障害者控除が適用できないというお尋ね文書が送られてくることがあります。
誤りであることがわかったら、会社側で昨年の年末調整の再計算を行い追加で所得税を納めて誤りのあった従業員からお金を回収することになります。
手間もかかりめんどくさい。
できるだけそのような事態を避けるためにはどうしたらいいのでしょうか?
扶養控除等の見直し
税務署の源泉所得税担当の事務の中に「扶養是正」というものがあります。
扶養是正とは、扶養控除等の見直しを行うための事務です。
年末調整を行って給与所得の源泉徴収票と同じ形式の「給与支払報告書」を従業員のお住まいの市区町村に提出します。
その情報をもとに市区町村でチェックを行い、住民税の誤りがあれば市区町村から連絡があります。
さらに市区町村から所得税も誤っている情報が税務署に送られてきて税務署もチェックを行いお尋ね文書を発送します。
扶養控除等の見直しとして指摘されやすいのは、配偶者控除や扶養控除の所得要件を超えてしまって適用が受けられないことです。
ダメージが大きい順に対策を
扶養控除等の見直しという仕事があるということは、年末調整において従業員から提出される配偶者や扶養親族の情報の確認が大事になるということです。
ただ、この中で誤りだったことによりダメージを受ける順番があります。
これは控除額の大きい順に並べ替えてみるといいです。
例えば、従業員で扶養控除38万円を受けていた子どもが所得48万円を超えていて扶養控除が受けられないということになれば控除額は0円になってしまいます。
従業員が追加で支払う所得税は、税率10%の場合ですと38万円×10%=38,000円と計算できます。
では、控除額が大きい(ダメージが大きい)順番に並べ替えてみます。
- 特定扶養親族:63万円
- 同居老親等:58万円
- 老人扶養親族:48万円
- 配偶者控除:38万円
- 扶養控除(一般):38万円
- 配偶者特別控除:38万円~0円
ですので、最優先として19歳以上23歳未満の特定扶養親族、つまり従業員のお子さまの所得がいくらになるのかを把握するように努めます。
アルバイト収入であれば給与収入103万円以下なら所得48万円以下になります。
年末調整の書類が会社から配布された際にお子さまの収入を確認いただきますが、その時点で明らかに所得48万円以下なら特定扶養親族として届けていただけたらOKです。
ただ、お子さまの収入状況が分からないとか所得48万円を超えるかどうか微妙なら2つの選択肢があります。
-
特定扶養親族として届けて、所得が確定した時点で再度年末調整を会社にしてもらうか従業員本人が確定申告をして追加で納める
-
特定扶養親族として届け出ず、所得が確定してから再度年末調整を会社にしてもらうか従業員本人が確定申告で還付を受ける
再度の年末調整を会社に依頼するのは、あくまで税務署に法定調書を提出する期限である翌年1月31日までです。
しかし、実際はもっと早めに期限を切ってしまう会社が多いですので源泉徴収票が送られてくるまでに、という形になるのが一般的です。
ちなみに、配偶者の所得が超えていた場合は配偶者控除は受けられませんが配偶者特別控除が受けられることがあります。
結果的に控除額が少なくなることがあるくらいでそれほど大きなダメージにならないケースが多いです。
障害者である子どもの所得が超えている場合
障害者の中でもアルバイト程度のお勤めならできる方もいらっしゃいます。
その場合に給与収入103万円を超えてしまう方がいらっしゃいます。
例えば、20歳の障害者(一般)である子どもがいたとします。
障害者控除は、扶養親族が一般障害者に該当すれば27万円の控除を受けることができます。
扶養親族は所得48万円以下である必要があります。
19歳から23歳未満の特定扶養親族なら所得48万円以下であれば63万円の控除を受けられます。
さらに、障害者控除27万円も受けることができますので、この例の20歳の一般障害者の子どもは、
合計で90万円を従業員本人の所得から控除することができます。
しかし、もしこの子どもが所得48万円を超えてしまった場合には、そもそも扶養親族にあたりません。
扶養親族にあたらないということは扶養親族であることが要件となっている障害者控除も受けられません。
つまり、扶養控除も障害者控除も受けられないのです。
90万円の控除が0円になってしまいますのでダメージが一番大きいです。
まとめ
今回は、年末調整後の扶養控除等の見直しを見越した対応方法について書いてみました。
参考になれば幸いです。
では。