働きながら年金を受け取るとき、一定金額を越えますと年金が一部または全額が停止になります。
その停止基準額が令和7年4月から変更になっています。
在職老齢年金の調整とは?
そもそもまず働きながら年金を受け取る「在職老齢年金制度」ついておさらいしておきます。
原則65歳以降になりますと、国民年金に加入した期間に受け取れる老齢基礎年金と、厚生年金に加入した期間に受け取れる老齢厚生年金を受け取ることができます。
このうち、厚生年金に加入しながら働きますと受け取っている老齢厚生年金が調整(一部支給停止または全額支給停止)されます。
このことを「在職老齢年金の調整」と言います。
したがって、影響があるのは老齢厚生年金だけであり老齢基礎年金が調整されることはありません。
【事務所お知らせ】在職老齢年金の調整額の計算方法
では在職老齢年金の調整額はどうやって計算をするのかですが、3つの数字をまずは計算します。
- 1か月分の年金額:老齢厚生年金額の報酬比例部分を12で割ったもの
⇒( )円/月 - 給与の額:日本年金機構で登録されている標準報酬月額(これは勤務先から日本年金機構に届出されているものです)
⇒( )円/月 - 過去1年間の賞与(ボーナス)の12分の1
⇒( )円/月
1.~3.を合計した金額が停止基準額を超えますと、超えた金額の半分(1/2)が厚生年金額から差し引かれます(→支給停止になるということです)。
この停止基準額ですが、令和7年3月までの1年間は月50万円でした。
しかし、令和7年4月からは月51万円になります。
したがって、停止基準額が上がることにより支給停止になる部分が少なくなるということになりますね。
令和7年4月以降の在職老齢年金の調整額の計算例
では、令和7年4月の停止基準額51万円を使って、実際在職老齢年金の調整額の計算をしてみたいと思います。
①老齢厚生年金の報酬比例部分の金額 150万円
②令和6年9月以降現在の標準報酬月額 40万円
③過去1年間の賞与額 120万円
- 1か月分の年金額:老齢厚生年金額の報酬比例部分を12で割ったもの
⇒150万円÷12=( 125,000 )円/月 - 給与の額:日本年金機構で登録されている標準報酬月額(これは勤務先から日本年金機構に届出されているものです)
⇒( 400,000 )円/月 - 過去1年間の賞与(ボーナス)の12分の1
⇒120万円÷12=( 100,000 )円/月
1.+2.+3.の合計額=125,000円+400,000円+100,000円=625,000円/月
在職老齢年金の停止基準額は51万円ですので、
625,000円/月-510,000円/月=115,000円/月が51万円を超えている金額となります。
超えている部分の金額の1/2が停止になりますので、115,000円/月×1/2=57,500円/月の老齢厚生年金が支給停止になります。
したがって、調整後の老齢厚生年金額は以下の通りです。
- 1か月の老齢厚生年金 125,000円-57,500円=67,500円
- 老齢厚生年金(1年分) 1,500,000円-690,000円(57,500円×12月)=810,000円
在職老齢年金の調整の境目を検討する
毎年株主総会が行われる際に役員報酬額を決めますが、厚生年金額の調整がかからない境目を確認したいということで年金相談の窓口にお越しになられます。
ねんきん定期便からでも在職老齢年金の調整の境目は計算することができます。
しかし、ねんきん定期便が手元にない場合や最新情報で試算をしたい場合は窓口に出向いたほうがいいかと思います。
その際は年金記録を確認しながら試算をするために年金事務所または街角の年金相談センターで事前の予約をお願いします。
まとめ
この在職老齢年金の停止基準額はここ数年毎年変更になっていますので、4月以降年金相談窓口でもこのお話はよく耳にするようになります。
特に顧問をされている税理士や社労士が代理で窓口にお越しになられます。
では。