いつ税務調査が来るかと考えると不安だとおっしゃる方がいます。
報道で「脱税」という言葉が取り上げられることもあり、怖いイメージもおありかと思います。
しかし、税務調査当日に調査官がやってくるまで時間が空くのが通常です。だいたい2週間くらいは空けておきたいところです。
その期間に何もしないのはもったいない。
少しでも税務調査に対応できるように準備をしておくことが大切です。
この準備期間に調査官も相当念入りに準備をして調査にやってきます。
調査官が準備してくるのにこちら側が何もしないのは問題です。
今回はそんな調査官の立場でどういった準備をしているかを書いてみようと思います。
準備調査の流れ
調査官が実際に調査当日までにやる準備のことを「準備調査」といいます。
この準備調査の流れについて書いてみます。
*あくまで私個人が当時やっていた流れを書いてみますね。
統括官から調査事案の指令を受ける
上司である統括官から、調査に行く対象の事業者(「調査事案」といいます)の指令を受けます。
ここを調査してくれ、と指示されるわけです。
税務署内には申告書のファイルや過去の調査資料などを閉じておくファイルがあって、それとともに調査官に渡されます。
それらファイルを見ながら準備調査を開始していきます。
調査先との日程調整をする
調査先として指令される事業者はいくつもあります。だいたい一気に10件とか。
まず調査に行くからには調査先へお伺いする日程を調整する必要があります。
いきなり調査に来るというのはまれで、基本的には一定の調査手続にのっとって行われます。
しかも、調査日時は「この日でお願いします」という意向確認ですので、電話がかかってきても即答する必要はありません。
例えばいきなり来週お伺いしたいとか言われても「そんなすぐに動けないよ」とか「予定がある」ということもあるでしょう。
なので、いったん保留にして電話を切り都合のいい日を検討してから折り返しこちらから電話をして回答するようにします。
調査官もそのことは重々承知なのですが、10件もの調査事案を持っているとなるべく1つの週が調査ばかりにならないよう均等にスケジュールを管理したいのです。
この週は毎日出張は避けたいから、できればここで調査へ行っておきたいとかいろいろ調査官も考えるのです。
毎日調査後は上司に必ず報告する必要がありますし、調査日以後は報告書の作成などの業務に追われることになりますからね。
上司からの指示事項を確認する
日程調整をしつつ、上司から調査事案について指示されている事項があるので確認します。
上司もこれらの事案をやみくもに選んでいるのではなく、一定の根拠を持って選んでいます。
例えば、過去の申告書と比較して異常な数字があるとか、本来は申告しないといけないと思うがしていない、業界全体で好況である、とか。
この指示に基づいて次は調査官の目線でこれらの内容を審査していくことになります。
申告書やファイルなどを見て検討する
その後、提出された確定申告書や届出書、過去に行われた調査資料など情報が集約されたファイルを見て内容を検討します。
そして、自分で調査しようとする事項を整理していきます。
もちろん、他の調査事案も同時並行で検討するのですが、調査日まで時間が空くとそれだけ準備できる時間もあるわけです。
例えば、ネット取引をしている場合は、専門部署から情報が回ってきて調査前にもかかわらず確実にチェックされています。
もし調査でそんな取引がないと言ってしまったらそれは明らかな嘘だと分かってしまいます。もう情報はつかまれていますからね。
結果的に、脱税行為と判断されてしまい重加算税という重い罰金が科せられてしまいます。
調査官はあらゆる方法で調査前に多くの情報を入手しています。
1日中情報収集してどういうところを調査するかを検討する時間があるのです。
時間をかければいいというわけではないですが、相当入念に調べているというのは思っていたほうがいいです。
例えば、取引のある事業者(会社)の情報も確定申告書から情報を得ていますし、取引先の税務調査の結果から情報をつかんでいることもあります。
自分たちもしっかり準備しておこうーでも気負うことはない
調査官は調査前に何日もかけて準備していますので、自分たちもしっかり事前にできる準備はしておくべきです。
しかし、気負う必要はありません。
経理をやって、請求者や領収書・契約書を保存しておく。
ちょっと例年より多くかかった経費は内容を確認して説明できるようにするという、普段からきちんと行っている事業者であれば心配することはありません。
ひょっとしたら調査官から意図しないような質問が調査中にされることがあるかもしれませんが、それはいったん保留にして後日回答するでもいいわけです。
「見解の相違」とよく言われますが、正しいと思っていたら調査官からみたら誤りだと主張してくるということもあります。
それは実際に調査が始まってみないと分からないことです。
そのときにどういう風に対応するか、事前に検討するのも大事です。
どうしても不安なら税理士へ相談する
もしひとりで調査の対応をするのが不安な方や、どういうところがチェックされやすいかというのは、顧問をされている税理士などに依頼されることをおすすめします。
実際に調査が始まってから税理士に依頼されるかたもいらっしゃいますし、調査が始まってしまうともう手遅れということはありません。
税務調査を事業者ひとりで対応されるのは非常に不安になると思うのです。
また、調査後に税務署と何度も連絡を取って交渉をすることが出てきますので、本業もおろそかになってきてしまいます。
できるだけ税務署との交渉は税理士にお願いしたほうが無難です。
依頼することで料金はかかってしまうかもしれませんが、税務署との交渉でうまくいかずに多額の税金を払うという話はよくあります。
税務署の話をうのみにしてそのまま受け入れてしまうのです。
税理士がいたらひょっとしたら追加で取られる税金を減らせたかもしれません。
また、税理士をつけることで税務署からも信頼されます。
ただ、あまりに急すぎると税理士も困ってしまうので、できれば調査官から連絡があって調査が始まる前までには税理士に依頼しておくことをおススメします。
税務調査の直前だと受けつけもらえない税理士もいらっしゃるかもしれませんので、できれば早めに相談するほうがいいでしょう。
まとめ
今回は、税務調査へ来る調査官も事前に時間をかけて準備している、ということを書いてみました。
私は調査がなく税務署内で仕事をしているときは何社も事前準備していました。
ちょっとずつ積み重ねていって疑問点や検討事項を整理して、調査時の展開までシミュレーションしていました。
それでもまだまだ準備不足だと言われていましたから。
でも調査官からは調査当日に質問されるので、実際調査官はそれまでどういうことを考えているか正直分かりません。
しかし、事前に準備することで「ここは聞いてくるかも」という想定ができてくると思うのです。
もし想定までできないにしても、
- 請求書や領収書など証拠書類を収集し整理しておく
- 事務室内を掃除する(パソコンやゴミ箱など)
- 過去の申告書を見比べて異常な数字をチェックする
をしておくことでずいぶんと気分的に楽になると思います。
あとは、税理士に依頼して対応してもらうことですね。
事前に一緒に準備していただいて、税務調査終了まで一貫して対応していただける税理士だと安心してお任せできるかと思いますので。
ちなみに私は開業したらこのような税務調査における事業者のお手伝いを専門にできればと考えています。
では。
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