今回の記事ですが、社会保険労務士試験の勉強をしていたときと、実際に給与計算をするようになってから不思議に思ったことについて書いてみます。
それは、健康保険料についてです。
中小企業などが加入することの多い「全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)」ですが、毎年3月分から保険料率が変わります。
この保険料率の変更と、毎年9月分から各個人の健康保険料の額自体が変更されます(これを「定時決定」といいます)。
保険料率の変更と保険料額の変更、基本的に年2回金額が変わるのです。
当たり前かもしれませんけど、理論だけしか勉強してこなかった私は気づくのが遅れました。
実務をやって初めてわかることもあります。
健康保険料率はどうやって決まるのか?
まずそもそも健康保険料率って何というところから説明してみます。
健康保険には大きく2つの組織があり、先ほど書いた「協会けんぽ」と大企業が独自に設立する「健康保険組合」があります。
大まかな区分としてこんな感じをイメージされるといいかもしれません。(絶対ではありません)
事業規模 | 組織 | |
協会けんぽ | 個人事業主・中小企業 | 都道府県 |
健康保険組合 | 大企業 | 企業 |
今回説明する「協会けんぽ」は、都道府県単位で健康保険料率を決定することになっています。
その変更が3月から行われることになっており、今年も3月分の保険料から変更が行われています。
3月分の保険料は翌月末日が納付期限ですので4月末までに納付します。
多くの会社は4月支給の給与から前月3月分の保険料を天引きすることが多いので、よく「令和3年3月分(4月支払い給与から)」と説明されることがあります。
健康保険料を左右する2つのポイント「標準報酬月額」・「保険料率」
ここで、健康保険料については以下のように計算されます。
計算された健康保険料は、会社(事業主)と本人で折半して負担します。会社は本人負担分を本人に支払う給与から天引きして会社負担分と合わせて納付します。
ここで、まず「標準報酬月額」という言葉について。
報酬という言葉があるように、勤務されている場合ですと毎月の給与をイメージされるといいと思います。
この毎月支給される給与をそのまま保険料として計算するのがいいような気もしますが、給与には残業代が含まれていたりして毎月変動が起こりえます。
残業が多い・少ないで毎月保険料が変化する可能性がありますし、これを毎月計算していくという事務が大変になってしまいます。
そこで、実際は毎年4月から6月までの3か月間の給与の平均額をもとに一定の幅に当てはめて決定した「標準報酬月額」を使うことになります。
決定された標準報酬月額は9月分から適用されます。
つまり、この「標準報酬月額」と「保険料率」は、変更される時期が異なります。
「標準報酬月額」:9月分から(10月支給給与から)変更
「保険料率」:3月分から(4月支給給与から)変更
結果として、これをもとに計算される健康保険料は、3月分と9月分の2回変わることになります。
「額」の変更・「率」の変更=保険料の変更
私が勘違いしていたのは、この2つのポイントのうち「標準報酬月額の変更=定時決定」のところだけに意識がいってしまったのです。
定時決定ですと、9月に決定されれば翌年8月まで標準報酬月額は変わりません。
1年間同じ金額のはずなのに健康保険料が3月分から変わったりするのが不思議で。。
しかし、3月分から保険料率が変わるために結果として健康保険料も変わるのです。
と覚えておくと、年に2回保険料が変更するというのも理解できるかと思います。
まとめ
4月は新たに変更された保険料率をもとに健康保険料が計算されているかと思いますので、この記事を書いてみました。
勉強していたときにはあまり感じなかったところで、給与計算をするようになって疑問がわいたところです。
当然私の気づきが遅かったところは否めません。
先ほど挙げた計算式を思い浮かべたらわかることではあるのですが、社会保険労務士試験を受験していたときはそれぞれの内容を暗記することで精一杯でしたので。
実務から学ぶこと、経験することも大事だなと思った瞬間です。
もし今試験勉強されていて実務経験がない場合もまったく心配ありません。
その後の実務で新たに気づくことができればそれでいいと思います。
そのほうが理解も深まりますしね。
では。