税務職員として勤務していたころ、「どうにかなりませんか」という言葉をよく聞きました。
どうにかなりませんかー。
つまり、嫌なことが自分に降りかかってきて困っている状況です。
しかし、ここまで来てしまうとどうもできません。
渋々納得していただくことになりますが、「もっと早く相談していただければこうはならなかったですよ」、とお伝えするようにしていました。
今後同じようなことを起こしてほしくないからです。
確定申告をせず放置していたら税務調査の連絡が来た
よくあるのは、開業以来確定申告をしていないケースです。
申告をしようと資料の収集はしていたけど経理の仕方が分からず放置していたとか、そもそも申告しないといけないことを知らずに放置していた、という場合が多いかなと。
一番悪質なのは申告をしないといけないことを知りながらあえて申告をしていない場合です。
確定申告をしていない場合は、いつか必ず税務調査に入られます。
もうかっている・いないにかかわらずです。
「こんなところには来ないだろう」という考えはやめたほうがいいと思います。
実際に売上が年間数百万の事業主(会社)へ調査に行くこともあります。
税務調査ですと、通常の調査は3年間さかのぼって調査が行われますが、申告をしていない方の調査は5年間です。
年間の売上が少ないからといっても5年間さかのぼれば数千万。利益が出ていれば税金を徴収することができるわけです。
ただ、税務調査へ行くまでにいくつか段階を踏むことがあります。
税務調査前までは行政指導といって調査ではありません。
素直に状況を報告することで税務署側も対応を考えてくれます。
しかし、税務署側が申告書を作成してくれるわけではありません。
あくまで申告書を作成するのは個人です。
よく調査官が代わりに作成するということもありますが、受けられるはずの税金を安くする特例などは加味されないなど、原則通りの処理しかしません。
不利になる一方ですし、案件を多く抱える調査官からすればたった1件の申告書の作成に時間をかけたくないのが本音です。
その時は税理士に相談するといいかなと思います。
税理士に依頼するとお金はかかってしまいますが、相談に応じてもらえますし申告書の作成・提出まで引き受けてもらうことができます。
税金をできるだけ減らせるように申告書を作成していただけると思いますしね。
もし税務調査が来てしまっても初期の段階だと負担感は減らせます。
調査日当日までに必ず相談を
確定申告時に納付する税金を本税といいますが、確定申告の本来の期限である3/15を過ぎてしまうと本税のほかに加算税という税金がかかってきてしまいます。
加算税は罰金という認識でOKです。本税の5%かかります。
税務調査が始まるとこの加算税も率が増えてしまいます。
- 申告期限から事前通知まで:5%
- 事前通知から更正の予知まで:10%
- 更正の予知から:15%
事前通知とは、「調査に行きますよ」と税務署の調査官から電話で連絡が来ることです。
更正の予知とは、正直判断は難しいところではありますが、調査官から誤りや間違いを指摘された後で申告書を提出した場合は更正の予知があったと判断されます。
目安としては「調査日当日まで」くらいをイメージされるといいかなと。
したがって、調査に行くという連絡が来た段階で申告書を提出したというだけでは更正の予知があったことにはなりません。
もし調査が来るという連絡が入ったら早めに税理士に相談し申告書を作成してもらうといいでしょうね。
この時は正直にお話をして、税理士から調査官に連絡をしてもらいましょう。
申告書を作成したら調査自体が簡略化されることもあります。
だって本来の申告をさせるという調査の目的がすでに達成できているわけですから。
調査官からすれば調査案件としてボツになってしまうことになりますので形として調査をすると言われるかもしれませんが、リスクは大きく減ります。
また加算税の率が5%と低いですから、少しでも追加でかかる税金を少なくするためには早めに相談して対応してもらうほうが得策です。
税理士などに依頼する前に
もし税務調査が来た場合はすぐに相談することは大切ですが、具体的に何を用意しておけばいいのでしょうか?
申告していないからやってほしい、と依頼されても何もないと困ります。
そこで、私が考える用意しておいてほしいなと思うことを書いてみます。
現金・預金残高を合わせておくー事業用資金の確認
事業で使っている現金や預金の残高は、元帳と一致していますか?
なんとなくで経理していると合わないことが多いです。
残高が合わないと税務調査では一番不審に思われます。
資金の流れが分からなくなってしまっているからです。
お金の入出金をしっかりと把握しておくことが大事です。
請求書や領収書などの証拠資料を保管しておく
事業に関する請求書や領収書などの証拠書類は捨てずに保管しておきます。
もし捨ててしまった場合は、相手先に再発行を依頼したり入出金明細を取り寄せるなどして手元に残しておくようにします。
まず経費として認められるためには、これらの資料の保管をしておくことが基本です。
経理していなければエクセルで簡単に集計しておく
資料の保管はしているけど経理なんてやったことがない場合。
その場合でも、資料をそのまま税理士に渡すのではなく、自分で整理をしたうえで簡単でいいので集計をしておくことをおススメします。
最低限、日付・金額・内容がわかるようにエクセルなどで集計しておきます。
借方、貸方・勘定科目などは理解できればベストですけど、もし分からないなら内容がきちんとわかるように記入しておきましょう。
内容とは、経費でいうと「●●様外注費支払い」「××様と会食」などと具体的に書いておくと税理士も確認しやすくなると思います。
これを1年間エクセルに入れてみて、請求書や領収書をその入力順に整理してみます。
バラバラになってしまうこともあるので、クリップで止めておくとかノートに貼っておくでもいいでしょう。
量が多くないなら、月ごとに封筒を用意してそこに一緒にまとめて入れておいてもいいと思います。
こういう準備をしてから税理士に相談するとスムーズかなと思います。
何も相談しないのは一番危ない
普通に生活していて困ったことがあったら相談しますよね?
それと同じで、申告していないことを何も相談せずに先延ばしにすることが一番問題です。
積り積もって多額の税金を納める羽目になってしまうケースはよくあります。
税金を納めるために運転資金がなくなってしまう、ということもありえます。
それくらい、黙っておくことは危険です。
後悔しないために、誰かに相談しましょう。
もし相談して断られた場合は、別の人に相談してみて何人か接触してみましょう。
ただ一方で、お客様自身のほうも「無理難題を言っていないか」も考えていただいたほうがいいかなと思うこともあります。
すべての経理記帳をお願いする・安くしてほしい・直前に依頼する、などなど。
依頼するからには事前準備をお願いしたいですし、誠意みたいなものが感じられないと誰も依頼を受けてくれないと思います。
税理士としてもできる限りお手伝いしたいと思うものですが、態度に出てしまっているとやめとこうかなと思ってしまいます。
まとめ
今回は、税務調査・無申告関係で早く相談することの大切さを書いてみました。
もちろん税務調査ではなく、労働基準監督署調査や年金事務所調査などの役所調査でも同じです。
相談すること。
そのためには事情をしっかり説明したうえで専門家に動いてもらいましょう。
では。
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