上司の調査手法を見ていた

私が税務調査に出始めたころ、最初数件は上司である統括官や上席に同行して調査をしていましたが、そのあとは基本的に1人で調査をしていました。

正直たった数件では何も身についていませんでした。

2年目は1人で調査をしていましたが、「正直これでいいのだろうか」と思いながら調査をしていました。

そんな気持ちでも正直なんとかなっていたのです。

しかし、3年目になるとさすがにまずいなと思うようになってきました。

法人特別国税調査官の調査手法を見る

3年目は以前このブログにも書きましたが、特別国税調査官付きとして幹部経験者である特官と一緒に比較的規模の大きな法人に調査に行っていました。

1件目の調査から私の調査の仕方のまずさを指摘されるようになりました。

  • 質問の仕方が悪い
  • 次の展開を考えていない
  • それを聞いてどう調査展開をしていくのかが分からない
  • 何が問題点か把握できていない
  • 相手方の言い分を理解していない

容赦ないダメ出しです。もちろん凹みましたよ。

でも、それ以上にこれまで適当にやってきた自分の調査方法を見直すいいきっかけになりました。

その都度マンツーマンで指導してくださる環境にあったわけです。

では、私がこれまでの調査でやっていたことを具体的に比較してみようと思います。

2年目までの調査の仕方

  • 準備調査:適当。一応は申告書の中身をチェックするが、正直行かないと分からないという認識のもとで問題点の洗い出しは細かくしていない。
  • 調査当日:午前中いっぱい話を聞くように指導されていたが質問事項を整理していないため質問からどういう問題点に結びつくのか理解できない。午後からの帳簿調査も問題点がぼやけているため見当違いのところばかりを確認。
  • 調査終了後帰署:統括官からの指導事項に答えられずに怒られる。
  • 調査日以後:なんとなく資料をまとめ、なんとなく否認事項があるから修正申告書を依頼する→審理担当から資料チェックのダメ出し

3年目の調査で変えたこと

  • 準備調査からしっかり時間をかける:疑問点など自分がおかしいなと思うようなところはすべてメモしていく。事前に条文や質疑応答にも目を通し、どうしても分からないときは周りに聞いておく
  • 調査日当日:話をしっかり聞いて流れをできるだけ把握する(正直難しかった)。恥ずかしいけど何度でも聞き返すようにした。2人だと1人は売上を見ていたらこちらは消費税と違うことをしているが話している情報は聞き逃さないようにしていた。
  • 調査終了後帰署:その日のうちに資料整理とまとめができるものはしていた。審理担当に事前に確認しておくこと、問題点を整理しておくメモ作成
  • 調査日以後:資料まとめと確認。とにかく丁寧な資料づくりを心掛ける。

上司を見ていて気づいたこと

一番印象的だったのは、調査が始まる前から入念な準備をされていたことでした。

なぜ準備調査をするのかがいまいちよくわかっていなかったので、前日にちょこっと見直して調査へ行くという、今思えば無謀なことをしていました。

よくおっしゃっていたのは、「準備調査から調査だから気を抜くな」ということ。

想定できる問題点はいくつでも挙げておく、できる準備は抜かりなくやること。

申告書のチェックだけでなく届出書の確認、資料の有無、過去の調査内容の把握。。やればきりがないのですが、とことんやっていました。

そして、調査日当日。

上司が質問した内容も聞き逃さないようにしたり次の展開を考えていく。

もし分からなければ質問をする。恥をかいてもいいやと割り切るようになりました。

実際に帳簿調査に入っても、上司の帳簿の見方を参考に自分も取り入れてみようと思ったり。

自分がした質問のどこがいけなかったのか、上司からダメ出しされたときはメモしておくようにしました。

とにかくじっくりと帳簿書類を見てから落ち着いて相手方に質問していく。

突拍子もない質問はまずありませんでした。

想定している問題点になると何度も確認して納得できるまで引き下がりませんでした。

こういう調査を目の当たりにしていると、自分のダメさを改めて実感し情けなくなりました。

何度となく怒られましたよ。

最後まで調査ができるという自信をつけることはありませんでしたが、その時の姿勢というか手法が今の自分の基礎になっています。

調査終了後の資料のまとめ方も取り組み方を変えました。

ただ漫然と整理するのではなくて、どの人が見てもわかるように整理すべきだと。

その時はなるほどな、と思った次第です。

まとめ

調査の際に上司の調査手法をそばで見る機会って調査官でも最初のうちの数件だけという方が多いと思うのです。

通常は自分で調査手法を身に着けていくのですが、私は特官部門という部署で再度手法を学ぶ機会を得ることができました。

出来の悪い調査官でしたので本当ならもっと身についてもよかったと思うんですけどね。。

今思うといい機会だったなと。

もし税理士でも調査の立会いが未経験なら一度別の税理士のそばで見させてもらうのが一番いいのかなと。

それができないのなら、立場は違いますが調査官の動きを見てみるというのもありだと思います。

今後の調査に活かせるかもしれませんし、調査官の考えも見て取れるようになります。

調査官によってやり方は様々です。

その手法を目にするとこちらとして対応するときの心の余裕も出てくると思います。

では。

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