セミナーを受講して思った税務調査対策

先週金曜日にセミナーを受講しました。

内容は税務調査について。

調査官として税務調査の現場にいた私が、退職して初めて受ける税務調査セミナーです。

自分のこれまでの考えや取り組みの確認を踏まえて受講してきました。

ポイントは「エビデンスの収集と開示」です。

「エビデンス」とは何か

エビデンスという言葉はWikipediaですとこう書かれています。

証拠・根拠、証言、形跡などを意味する英単語 “evidence” に由来する、外来の日本語。一般用語として使われることも増えてきており、多くは、学術用語や業界用語としてそれぞれに異なる意味合いで使われている。一般的には、発言の証拠や提案の根拠を指す用語。経理処理のための、証憑性を担保する請求書や領収書を指す場合がある。
引用:Wikipediaより
税務調査においては、エビデンスを収集・明確にして調査官を説得させられるかが重要になります。
税務調査では、お客様側で正しいと思って処理をしていたけれど調査官側が納得しない「見解の相違」が非常に多く起こります。
この見解の相違は、エビデンスいかんで変わってくると思っています。
エビデンスにそって正しく処理をしているとお客様側から主張し反論することもできます。
それに基づき調査官側もその主張・反論に対抗しないといけなくなるのです。
ただエビデンスがない・不明な場合はどうでしょうか?
いくらお客様側が主張しても調査官は納得しないでしょう。
調査官の判断材料としては、エビデンスが開示されて内容を確認することにあります。
それがお客様側から開示されない以上は攻め込んできます。
ひょっとしたら強硬な態度に出られるかもしれませんし、エビデンスがない=不正をしているのではないか、というあらぬ疑いをかけられるかもしれません。
最悪は、脱税行為=重加算税という非常に重たい罰金がかせられることもあるのです。
なので、このエビデンスを収集・明確化して調査官に開示するということが重要になると考えています。
また、税理士の立場してもお客様側からエビデンスを開示してもらえるかどうかで計上の可否などを判断することも可能になってきます。

エビデンスを収集するとは具体的に…

エビデンスとは具体的にはこのようなものです。

  • 請求書(見積書、発注書、納品書など)
  • 領収書(レシートなど)
  • 契約書
  • 通帳
  • 売上明細
  • 仕入明細
  • 消費税計算明細
  • クレジットカード利用明細
  • 給与明細
  • 源泉徴収簿(扶養控除等申告書など)  などなど

まとめると、元帳や申告書・決算書を作成する際の根拠資料です。

もちろん、現金なのか、振込み・キャッシュレス決済などの決済方法や、取り扱うもの(商品販売なのかサービス業なのか)により根拠資料は異なります。

「申告書に記入した数字には根拠があるでしょ」ということです。

税務調査では調査官はこの数字の根拠を質問してきます。

その拠り所となるのが根拠資料つまりエビデンスです。

ただエビデンスを保管しておくというだけでなくて検討するということも大事になってきます。

例えば、交際費として計上した根拠として飲食店の領収書を保管していたとします。

もし税務調査で調査官がこの領収書を見たときにこう質問してきます。

  • 誰と行きましたか?
  • 何人で行きましたか?
  • どういう目的ですか?

これらのことを口頭で説明するだけでは不十分です。

そもそも交際費として計上するのは、接待など事業に関係する場合に限定されます。

もしこれが個人的に使っているとなると経費になりません。

事業できちんと使われた経費であるという根拠を示して調査官を説得させることが大事になります。

具体的にどうするかというと、領収書の裏などに誰と・何人で・目的まで記録して保管しておくことが必要です。

もしそれをしていなかった場合でも、一緒に接待を受けた人に聞き取りが行われることも想定して事前に連絡をしておくとか、手帳に記録しておく・メモしておく

保管しておくだけでは調査官を説得させるには不十分です。

売上より経費でエビデンスが活きてくる

事業所得として確定申告するときには、売上から経費を差し引いた所得を計算します。

売上に関して、もし不正をしようとするなら帳簿に計上しない=除外をするということが行われます。

絶対にやってはいけないことですが、これは調査官からしたら非常に見つけづらいのです。

なぜなら、帳簿にそもそも計上されていないのでその部分から推測し検討しないといけないので時間がかかるからです。

一方経費は、もし不正をしようとするのなら帳簿にウソの金額を計上したりそもそもないものを計上しておくということが行われます。

調査官とすれば、すでに帳簿に計上されているので見当がつけやすいんですよね。

その金額について請求書や領収書などエビデンスを確認すればいいのですから。

なので、エビデンスの効果を発揮するのは特に経費の調査の時です。

見つからない・作っていない場合

請求書や領収書が見つからない・作っていない場合、

エビデンスがない=ダメだ、と決めつけるのはまだ早いです。

原則的には、エビデンスがないと調査官はダメだと言ってきますし消費税では帳簿と請求書など両方の保存が要件になっている場合もあります。

しかし、まったく経費として認められないかというとそうではありません。

例えば、請求書や領収書がない場合は、

まず、先方に請求書や領収書の再発行を依頼します。

それでもし発行されないとしても、

  • 手帳やメモなどに金額や人数・内容が書いてある
  • 計算根拠を明確にしている
  • 仕入や売上明細は保存してある

などがあれば主張はしやすくなります。

ただ調査官がすべて受け入れてもらえるか、納得してもらえるかどうかはわかりませんが、何もないよりはましで不正だという判断はしづらくなってくると思います。

計算根拠と書きましたけど、これは例えば家事用の経費とプライベート用の経費が一緒になっている場合(家事按分)に口頭ではなく書類として作っておくことです。

口頭での回答は調査官からは信用されにくいので文書で残しておきましょう。

事前準備がいかに大切か

これまで書いてきたエビデンスの収集については、調査前からできることです。

普段の経理から意識しておくこと。

そして、エビデンス収集をするだけでなく開示できるように整理しておくことも重要です。

究極は、元帳とエビデンスはすべて見られてもいいようにしておくこと。

セミナーでもおっしゃられていましたけど、元帳1冊・エビデンス1冊を調査官に提示するくらい準備しておく。

そうするともう見ていただくことはなくて調査を終了していただく、滞在時間を短くしてもらえる=調査の早期終結につながるということになるわけです。

そこまでやるのは無理かもしれませんが、そういう心づもりは持っておくといいかなと思っています。

準備して損なことは一切ありません。

準備なしで調査に来られるほうが怖すぎます。

まとめ

今回のセミナーで自分の考えていたことを再確認できました。

やっぱり調査ではエビデンスを調査官に提示できるかどうかです。

その部分で事前準備からしっかり対応していくことがポイントだと思います。

では。

[事務所お知らせ]

編集後記

先週から昨日まで、いろいろな資格試験が行われました。

受験された皆様、本当にお疲れさまでした。

この日に向けて努力されてきたのですから、少しゆっくりしてから今後のことをじっくり考えてもいいのかなと思います。

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