先週金曜日、あるセミナーを受講しました。
内容は、「労働保険・社会保険の行政調査に関する対応」について。
事業者が行政調査を受ける際に社会保険労務士がどのように対応すればいいのかというセミナーです。
申し込んだのが7月でしたので2ヶ月経過し待ちわびておりました。
今日はこの研修で学んだことをまとめてみたいと思います。
行政調査の主な種類
まず行政調査の種類の説明がありました。
- 社会保険(健康保険・厚生年金)に関する調査:資格取得や喪失、傷病手当金、算定基礎届、賞与支払届、2以上勤務
- 労働保険料に関する調査:雇用保険加入資格、賞与、出向者
- 労働基準法・労働安全衛生法に関する調査:割増賃金、36協定、労働時間、健康診断、産業医、ストレスチェック
この他、直近行われた調査で令和2年に改正された労働者派遣法に関する調査についての説明も行われました。
労働者派遣法の調査に関しては目新しいこともあって、労働局から送付されてきた書類の説明も行っていただきました。
調査の対応として社労士は、ただ調査対応をするだけでなくて、法令を遵守してもらうように事業者を指導するという側面もあること。
調査を受けると是正するように勧告を受ける事業者について、問題ないように訂正修正させるいいチャンスだと思ってうまく調査を利用するように、という話でした。
確かに、是正を受けても直さずに公表されてしまう事業者もいるわけで、こういう事業者を説得させて整備させるというのも社労士の役割なのかなと思います。
また、調査終了後はどうしても迅速な対応が求められます。
事業者に説明するのは当然ですが、そこで勤務されている従業員にも説明をして保険料を負担していただいたりすることがあります。
ただその原因が社労士のミスであった場合も考えられます。
その場合は、ごまかさずにすぐに謝罪すること・丁寧な説明を心ががけるようにして万が一事後的に対応しなければならないことがあれば最後まで付き合うこと。
実際にあった事例では、社労士事務員に任せていた処理が遅延してしまい追徴金を払う羽目になってしまった。社労士本人はそのことに気づいていなかったというもの。
結局は、事業者と話し合い追徴金は社労士側で負担したという話をされていて、その後事務所では社内教育を徹底するようにしたようです。
なるほど、事務処理の誤りはどの業界でもあるなと(税理士でも公務員でも)。
ただそこにいかに早く気づいてすぐ対応できるかが大事ですね。
間違いは誰だって起こる可能性がありますから。
その後、労働基準監督署による調査の説明がありました。
労働基準監督署は司法警察官であるということで、逮捕できる権限がある。
定期監督はある程度業種を絞って調査されていることを説明されました。
実際の調査の流れの説明では、是正勧告書や是正報告書の見本を参考にどのようなことが記載されているのかを確認していきました。
最後に調査依頼のされ方についての説明があり、調査を受けることは顧問先の労働条件を是正するいい機会であること。
もし新規でスポットで請け負う場合には新規の顧客獲得につながるのではないかと。
一方、調査がうまくいかないと社労士の責任にされてしまうので、訪問するたびに事業者に話しておくこと、業務量が多くて報酬に見合わない場合もあるとのことでした。
社会保険及び労働保険における行政機関の調査
社会保険における調査対応として、算定基礎届の時期における調査・総合調査・会計検査院立会いの調査があります。
その中で総合調査の対応を中心にポイントを説明していただきました。
実はポイント自体は知っていることも多かったのですが新たに気づいたことをまとめますと、
- 資格取得日は適正か:2022年10月1日から2ヶ月以内の期間契約の取り扱いが変わる(2ヶ月を超えた日から→最初の雇用期間を含めて当初から)
- 随時改定:2019年10月の消費税改正の通勤手当、在宅ワークに伴う給与体系の変動
- 資格取得もれ:短時間労働者への区分変更届の手続きもれ
- 70歳以上被用者が退職したときの資格喪失手続きが忘れがち
一方、労働保険における調査対応も知っている内容もあればそうでないものもあり、
- 雇用保険の被保険者の取得もれに関して、基本的に2年遡及されて保険料を支払うが、2年遡及の考え方が異なる
が新しいことでした。
あと、全体を通じて調査後の対応の説明があり、
- 調査官からの指摘事項には速やかに対応すること(追加や訂正の届け出)
- 追加で保険料を支払わなければならない場合の対応について、従業員本人にどう説明するか、事業者にどう説明するか。特に社会保険の遡及加入は額が大きくなる。
- 社会保険の遡及加入により国保脱退に伴う療養費の手続きなどが発生してしまい手間を取らせてしまうこと
の説明があって終了となりました。
気になっていたこと 事業者には個人も含まれるの?
セミナー中にチャット機能を使って質問ができました。
その質問を取りまとめてセミナー終了後にお答えいただきました。
私が気になっていたのは、調査対象者に個人事業主も含まれるのかどうかでした。
もちろん会社は対象になるのは想像できましたけど、従業員を雇う個人事業主はどうなのかなと。
社労士の勉強をしていると、労働保険は従業員を雇っていれば加入しますし、社会保険も従業員5人以上の法定業種ですと加入する必要があります。
でも実際に調査に来たという事例が身近になかったので質問したところ、「当然個人事業主にも来ます」とのこと。その方の事務所では年に何件かあったようです。
要件に該当すれば会社でも個人でも調査される可能性があります。
会社の場合でも規模はまったく関係ないとのことでした。
まとめ
このコロナ禍になってからの調査時間についての話になりました。
郵送で書類を送付して調査されているのですが、どうもじっくり見られているのかもしれない、ということでした。
なぜなら書類を送ってから1か月くらい音沙汰がないそうです。
「たくさん書類が届いているので…」とも言っていたみたいなので。
以前は1~2時間で調査が終わっていたようですが、調査の方法も変わってきているのかもしれませんね。
このセミナーで新たに知ったことも、確認できたこともあったので受けてよかったです。
では。
[事務所お知らせ]
編集後記
今回受けたセミナーはあくまで机上の話で、実際に経験してみないと分からない部分も多いかと思います。
私も税務調査のときは研修時に事例やマニュアルを参考にしていましたけど、実際始めたらほとんど忘れていたというのが事実です。
実際にやってみて初めて気づく部分、勉強になる部分があります。