今回は、パートタイムで働かれている方のための税金(所得税・住民税)と保険(雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険)について書きたいと思います。
パートタイムの方については、特に保険関係で問題となります。
健康保険か国民健康保険か。厚生年金か国民年金か。
線引きが難しいところがあり判断に迷うところもあります。
まず最初に税金と保険とを比較しながら進めてみたいと思います。
*分かりやすくするため条文の表現を崩しているところがあります。
パートタイム労働者の税金と保険
パートタイムで労働されている方でも、一定金額の収入がある方は所得税や住民税、健康保険や厚生年金保険料を負担する必要が出てきます。
・所得税は合計所得金額48万円超:給与収入103万円超
・住民税は前年の合計所得金額が35万円超(本人だけの場合)
・健康保険、厚生年金保険料は原則として収入130万円以上
税金ですと103万円、保険ですと130万円と金額が異なりますし、保険の場合収入130万円ちょうどだと保険料を負担しなければならなくなります。
パートタイム労働者の健康保険と年金制度
パートタイム労働者として勤務する人が、どのような健康保険に加入したり年金制度に加入するのかについてです。
大きく3つのグループに分かれてきます。
グループA:厚生年金・健康保険の被保険者となって、保険料を事業主と折半で負担
グループB:国民年金(第3号被保険者)・健康保険(被扶養者)となって、保険料の自己負担なし
グループC:国金年金・国民健康保険の被保険者となって、保険料は全額自己負担
ただし、家族が健康保険の被保険者であれば、健康保険の被扶養者になれる場合あり
用語 | 意味 |
被保険者 | 保険料を払っていく人、労働者本人 |
事業主 | 会社も同じ |
第3号被保険者 | 厚生年金の被保険者(第2号被保険者といいます)の配偶者で、20歳以上60歳未満の人 |
被扶養者 | 被保険者により生計を維持されている人 生計維持かどうかは原則年収130万円未満かどうかで判定 |
ポイント1 勤務先の状況を確認
勤務先が、厚生年金・健康保険に加入しているかどうかをまず確認します。
ここで、厚生年金や健康保険に加入している事業所を「適用事業所」といい、
適用事業所のうち被保険者総数(短時間労働者を除く)が501人以上等、または、短時間労働者の加入について労使合意がある事業所を「特定適用事業所」といいます。
また、「短時間労働者」とは以下の5つの条件に全て該当する者をいいます。
①特定適用事業所で働いている
②1週間の所定労働時間が20時間以上
(所定労働時間=休憩時間を除いた実労働時間)
③賃金の月額が88,000円以上
④雇用期間は1年以上の見込み
⑤学生ではない
つまり、
「特定適用事業所」に該当すれば無条件にグループAとなります。
また、「特定適用事業所」に該当しないけれど「適用事業所」に該当する場合には、常用的に労働していればグループAとなります。 *グループA:折半負担
用語 | 意味 |
適用事業所 | 法人の事業所、個人の事業所のうち5人以上労働者がいる一定の事業所 |
常用的に労働 | 1週間の所定労働時間が通常の労働者の3/4以上、かつ、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の3/4以上であること(「4分の3基準」と呼ばれます) |
ポイント2 配偶者が厚生年金・健康保険の被保険者か
ポイント1に該当しなかった場合、つまり、
「適用事業所」に該当しない・または該当しても「常用的に労働」していない場合、
本人ではなく配偶者が厚生年金・健康保険の被保険者かどうかを見ます。
ポイント3 本人の年間収入を見る
配偶者が厚生年金・健康保険の被保険者で、本人の年収が130万円未満かつ配偶者の年収の半分以下であれば、グループBになります。 *グループB:負担なし
しかし、
①配偶者がそもそも被保険者ではない
②本人の年収が130万円以上または配偶者の年収の半分を超える
この場合は、グループCに分類されることになります。 *グループC:全額負担
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、ポイントの順番で判断していくといいかなと思います。
「勤務先の状況→配偶者の状況→本人の年間収入」の順番です。
パートタイム労働者の雇用保険・労災保険
雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上雇用が見込まれる場合に被保険者となります。(健康保険と異なります)
労災保険は、すべての労働者に適用されます。
まとめ
今回は、パートタイム労働者の税金と保険について書いてみました。
実は条文や書籍を参照してみると複雑な文章と図解がされており、ちょっと戸惑ってしまっていました。
特に、「特定適用事業所」の要件は今後改正が行われる予定です。
年金事務所の調査で、被保険者に該当するはずなのに厚生年金・健康保険に加入していないと指摘されることがあります。
このパートタイム労働者の加入状況も調査のポイントになっています。
実は以前はパートタイム労働者も加入要件は厳しくありませんでした。
今後はもっと加入してほしいという、国の現れ→「保険料を多く徴収したい」という思惑が透けて見えてしまいます。
今後も改正に注目です。
では。
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