法人税申告書に添付する勘定科目内訳書  ②異常値

勘定科目内訳書とは決算書にある科目の内訳書で、法人税の確定申告書を提出するときに添付が必要となっているものです。

調査官は事前にこの勘定科目内訳書はチェックしてから調査に臨んできます。

私も調査官の時は必ずチェックしていました。

そこで本日は勘定科目内訳書のポイントの2つ目。

テーマは「異常値」です。

決算書と勘定科目内訳書を最低5年分比較する

調査前に必ず調査官は過去の申告書を必ず確認しています。

数字の面ですと、申告書のほか決算書や勘定科目内訳書を比較していきます。

そのときには決算書の数字だけ並べても分からないことが多いので、勘定科目内訳書にある売掛金や買掛金・借入金や貸付金なども注目します。

数字を並べてみて初めて気づくことがあります。

【事務所お知らせ】  

問題点① ラウンド数字

売掛金と買掛金の明細の中で、ラウンド数字があると気になってしまいますね。

ラウンド数字とは、1,000とか10,000とかキリのいい数字が並ぶものをいいます。

もちろんこの数字だけでおかしいなと判断することはありませんが、不審な取引先を判断するひとつの材料となることがあります。

適当な数字を書いている可能性も否定できませんし、ちょっと怪しいかも?と思ってしまいます。

問題点② 桁がおかしい

ほかの取引先と明らかに1桁多い金額が計上されていたりすることもあります。

もちろん大口取引先なのかもしれませんので一概には言えませんが、ただ大口取引先があるということで調査展開を考えることができます。

  • 大口取引先以外はきちんと申告できているか
  • 大口取引先との資金移動は適正か

など想定はいくらでもできます。

また、過去の数字と比較して金額が多額になっているところは注目してしまいます。

特に、特別利益や雑損失・特別損失など臨時的に発生した利益・損失は気になってしまいますね。

明らかに今年だけ金額が多いということは十分ありえます。

  • 本当にその金額を計上してよかったのか
  • 損失を計上するだけの証拠書類が保管されているのか

など、異常値があると調査官は見逃さずチェックします。

問題点③ 本来ある数字がない・本来ない数字がある

あとあまり多くはないのですが、あるはずの数字が計上(記入)されていないということもあります。

勘定科目内訳書の以下の欄で私は見かけました。

  • 役員報酬(事前届出確定給与)
  • 源泉所得税預り金
  • 貸付金利息

源泉所得税預り金として数字がずっと残っていると、源泉所得税の納付もれが考えられます。

納めたら源泉所得税預り金は減っていくはずですから、残っていてはおかしい数字です。

ただ単純に書き漏れていただけという場合もありますが、疑問点がわくところではあります。

異常値は準備調査の段階で目をつけることができる

昨日のブログでご紹介した「取引先」についてはあくまで調査官の想定の域を超えない部分が多いです。

しかし、「異常値」は明らかに勘定科目内訳書に載っている数字そのものですから、調査が来る前にここが怪しいと決め打ちすることができます。

調査が来る前に調査官が調査先の準備をすることを「準備調査」といいますが、この準備調査の段階でほぼ注目点が見えているといっても過言ではありません。

実際私も準備調査の段階で雑損失の金額がおかしいことに目をつけ、その点を指摘したということもあります。

異常値は目立ちます。

決算書上では見えてこない異常値が、勘定科目内訳書上で明らかになることもありえます。

まとめ

昨日と今日2回にわたって、法人税決算書に添付する勘定科目内訳書について書いてみました。

調査をするうえである程度調査でどういう流れにしていくかを想定するのですが、何かしら誤りがあることを想定していったほうが調査への取り組み方も変わります。

何も誤りがなさそうと思ってしまうのが調査官としてやってはならないことです。

勘定科目内訳書はもちろん調査官の手助けになっている部分があることは否めません。

しかし、それを適当に書いてしまうとやっぱり逆効果です。

いい意味でビビればいいと思うんですよね。

勘定科目内訳書に記入したことが正しいのならその旨を主張できればいいわけですから。

なにも誤ったものを記入しろとは言っていませんので。

では。

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