税務調査で必ず確認されるのが、経費として認められるものかどうか。
法人でも個人事業主でも、本来は個人的な支出を経費として入れてしまっている場合があります。
事業にかかるものだけ経費にする、それ以外のものはダメ。
公私混同がどうしても多く見受けられます。
調査官もそこが狙いどころで、実は見つけられやすいところなのです。
調査官の思惑
こういうのが見つかると、代表者の給与になり損金計上できず、個人事業主ですと経費として認められなくなります。
特に法人の場合、経費否認で法人税徴収・もしその経費が課税仕入れとしていれば消費税徴収・給与となるので源泉所得税も賦課できるため、調査官の実績としてはおいしいのです。
さらに、もし仮装や隠ぺいの事実があれば、重い罰金である重加算税が賦課できます。
例えば、売上の除外ですと、そもそも帳簿に計上していないものを明らかにする必要があります。
しかし、経費はすでに帳簿に計上されていているものが経費ではないということを、請求書や領収書から判断すればいいので調査官としては見つけやすいのです。
なので、絶対に検討してきます。
個人事業主の場合は確実にチェックされる
特に個人事業主の場合には、支出が商売から発生するものと生活から発生するものという2つの側面があるという特徴があります。
商売から発生するものは売上にかかるものとして必要経費として認められますが、家族の食事代のように生活にかかるものであれば必要経費になりません。
つまり、事業分と生活分とを区分していない(公私混同している)ような支出はチェックされます。
必要経費になる、ならない
原則として、商売(事業)にかかる支出(費用)なら必要経費になります。
しかし、支払金額がすべて経費となるわけではありません。
以下の3つは必要経費になりません。
- 家事費:家族での食事代など生活にかかるもの
- 所得税などの税金:利益に課される税金(事業税や印紙税など事業上発生する税金は必要経費になります)
- 罰金:交通違反の反則金など
また、支払金額は必要経費にならないが、その後徐々に経費に計上できるものとして「減価償却資産」があります。
減価償却資産とは、パソコンや車など高額な資産を購入した場合には、複数年にわたって経費にしていくという処理をします。このことを減価償却といいます。
さらに、次のものは支払っていないが必要経費となります。
- 貸倒損失:取引先が倒産した場合、貸し付けていた売掛金など
主なものを挙げましたが、例えば自宅兼事務所で生活し事業を営んでいる場合にかかる電気代や家賃や水道光熱費などはどうなるでしょう?
これらは、事務所分と自宅分を合理的に区分できれば、事務所分を必要経費として計上することができます。
したがって、その経費を合理的に区分する基準(按分基準)を明確にしておく必要が出てきます。
以下、具体的な按分基準の例を挙げておきます。あくまでご自身の使用実態に応じて決定してください。
項目 | 内訳例 | 按分基準例 |
家賃 | 家賃 更新料 | 床面積の使用割合 |
マイホーム購入費用 | 減価償却 ローン金利 火災保険料 固定資産税 | 床面積の使用割合 |
通信費 | 電話代 携帯電話代 インターネット代 | 使用時間 |
水道光熱費 | 電気代 | 床面積・使用時間・コンセント数 |
自動車購入費用 | ガソリン代 駐車場代 各種税金 修理代 | 使用割合 |
個人事業主が調査で指摘されやすい必要経費
先ほども書きましたが、個人事業主の場合にはその支出が事業のためのものか、個人で使ったのかの区別がつきにくくなります。
必要経費になるものは、あくまで事業を行う上で必要で、必要である部分を明らかに区分できるものです。
これから調査でよく指摘される科目と、その対策についてまとめてみたいと思います。
科目 | 項目 | 対策 |
交際費 | 食事代 慶弔費 | 自分の食事代や家族との食事代が経費になっていないか
領収書やレシートに誰と何のためかを記載して事業で使ったことを示しておく 慶弔費は、案内はがきやメモを残す |
福利厚生費 | 食事代 | 自分の食事代は入れられない |
地代家賃・通信費・水道光熱費など | 生活費との区分 | 全額経費はダメ 事業と生活を合理的に区分して説明できるようにしておく 水道光熱費の中で「ガス代・水道代」は仕事で使う以外は経費にならない |
雑費 | 生活費 | 生活費が混入しがち できる限り雑費という科目は使わないようにする |
まとめ
今回は、個人事業主を中心とした必要経費について書いてみました。
私は税務職員の時は法人担当でしたが、法人でもやはり代表者が個人的な費用を会社の経費にしていたということがたくさんありました。
個人事業主の場合はさらに目を付けられることだと思います。
「事業に必要な経費」が必要経費です。
その大原則をいつも覚えておけば間違えないかと。
事業と生活両方発生するものは区分して事業分だけ経費にする。
けっこう難しいところかもしれませんが、調査時にこう区分したと説明できればいいと思います。
では。
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