源泉所得税の「納付のお尋ねハガキ」が来てしまう理由

税務署で源泉所得税担当をしていると「未納整理」と呼ばれる事務があります。

未納整理とは、源泉所得税の納付がまだ確認できない法人や個人事業主に納付の督促を行う事務です。

もし納付が確認できない場合は、納付のお尋ねハガキが届きます。

納めたけどなんで来るの?

給与の支払いないんだけど…

そんな感想をお持ちの方も多いかなと思いますので、今日はお尋ねのハガキが来てしまう理由をご紹介したいと思います。

源泉の納付が確認できない分を抽出

源泉所得税担当では、7月と12月の納期特例納付が済んだ8月と2月頃に源泉所得税の納付が確認できない分を抽出します。

その判断は先方から納付または提出された納付書で行います。

納付書に金額の記載がない場合、納付されたかどうか判断できませんから当然ハガキを送付する対象として抽出されることになります。

もちろん、事前に納付データは確認してできるだけハガキの発送を止めるように努力します。

しかし、都心の税務署ですと源泉所得税を納めなければならない事業者は数万件ありますからすべてのデータを一から確認するのは非常に困難です。

ハガキが送られてしまうケース

ではハガキが送られてしまうケースをいくつかご紹介します。

給与の支給がないのに0円の記入・提出がない

設立間もない場合などで給与の支給がないと、源泉所得税は0円です。

0円であったとしても納付書は税務署へ提出していただく必要があります。

その提出がないと納付の確認が税務署ではできません。

また、税理士報酬のみ発生しており給与の支給がない場合、給与の欄を空欄のままで納付される場合があります。

その場合も給与の支給がないということは判断できません。

この場合は、

①給与の支給人数・支給額・税額欄に「0」と記入いただく
②摘要欄に「給与の支給はない」と記入いただく
③ ①と②両方記入いただく

のどれか対応いただけると個人的に判断しやすかったです。

【事務所お知らせ】  

移転前の税務署の納付書で納付してしまった

税務署では、税務署ごと・会社(個人事業主)ごとに整理番号が割り振られています。

納税地を移転して管轄の税務署が変更になった場合は、整理番号が変わります。

移転前の税務署の納付書で納付をしてしまうと、納付データが入らず宙に浮いてしまうことになります。

そのため納付データを移転後の税務署へ移動させるという手続きが必要となります。

これには時間がかかってしまうため、ハガキ抽出の段階に間に合っていない可能性があります。

その場合は、

①移転前の税務署と整理番号をハガキに記入する
②その時の納付書の控えをコピーして提出または郵送する

といいかと思います。

グループ法人の別法人の納付書で納付

同じ納税地に数社グループ法人がある場合に起こりやすいことです。

本来はA法人で納付すべき給与の源泉所得税を、B法人で納付してしまった場合です。

グループ法人の納付書をすべてご確認いただくと、どこかで間違いに気づくはずです。

その場合は、

①解明した理由をハガキに書く
②もし納付もれや納めすぎがあればその都度対応する

といいかなと。

あと、これに関連して、

例えばグループ法人CとDがあるとします。

本来CとDそれぞれで給与の源泉所得税を納めるべきところをCで合算して納めてしまった場合です。

そうなるとDは源泉所得税の納付済みであるという確認が取れません。

この場合は、

①ハガキに正しい金額を記入する
②C社の納付書の写しとD社の給与の支給状況(支給人数・支給額・税額)をご報告いただく

必要があります。

納期特例の勘違い

半期の途中で「納期の特例の承認申請書」を提出した場合、申請書提出月は翌月10日までに納付する必要があります。

例えば、7月中に申請書を提出すると、

  • 7月分(8/10納付):翌月10日まで(毎月用)
  • 8月分~12月分:翌年1月20日まで(納期特例用)

となるわけです。

これを7月~12月まで納期の特例が適用になると勘違いされていることがあります。

そうなると、7月分の給与の源泉所得税の納付が確認できないという状況が発生してしまいます。

あくまで申請月はまだ承認されていません。

通常どおり翌月10日までに納付しなければならないのでご注意ください。

未納とは言わない

「未納整理」と言われている事務ですが、会社や個人事業主の方には決して未納とは言いません。

未納=税金を納めていない

と言い切ってしまうことになりお客様とのトラブルの原因になります。

未納というと職員からもこっぴどく怒られます。

税金を徴収する権限はありませんのであくまで納付を促すということしかできません。

納付データが来るだけでどんな計算をして納付されたのか税務署では把握できません。

なのでお客様から連絡が来た場合は、未納とは言わず「納付の確認が取れない」という表現を使うようにしています。

まとめ

7月後半から8月にかけて、ハガキの抽出の準備が始まります。

納付データを見ながらできる限り解明するよう努力しているところかなと思います。

ハガキがもし送られてきてしまった場合でも慌てないことです。

どの月の納付が確認できていないか印字されてきますので、今日のブログでハガキが送られてしまうパターンをご紹介しましたので参考にしてみてください。

ヒントとして書かせていただいた対処方法ですが、ハガキの書き方はいろいろあり別に決まっているわけではありません。
もしハガキで回答したあとに税務署から連絡が来た場合はその職員の指示にしたがっていただければと思います。

では。

今回のお話は納付書の記載方法とも密接にかかわってくる内容です。
セミナー「納付書の書き方」についてお話させていただいています。
オンラインSHOPにて販売しておりますのでぜひどうぞ。
タイトルとURLをコピーしました