不動産所得の事業的規模とは…「5棟10室基準」よりも大事なこと

アパートやマンションを貸しつけている個人事業主の方は、毎年不動産所得として確定申告をする必要があります。

不動産所得として申告するためには、白色申告ほか税制上の特典がある青色申告で申告される場合のほうがメリットがあります。

しかし、青色申告をするにあたって、そのアパートやマンションの貸付けが事業的規模なのかそうでないのかで取り扱いが大きく異なります。

「事業的規模」って何??

アパートやマンションなどを貸し付ける場合には、事業で行っている場合でも事業所得ではなく不動産所得として申告します。

先ほども書きましたが、青色申告ですと税制上の特典が得られます。

しかし、その特典の内容が事業的規模かどうかで分かれてくるのです。

では、事業的規模って何なのか。

まず、事業とは、簡単に言いますと、その仕事で暮らしができていることを言います。

アパートなどの家賃収入で生活できているということです。

しかし、「事業的規模」という判断が不動産所得にはあります。

STEP1 実態で見る「事業としてやっているか」

税法においては、実態として事業と言える程度の規模かどうかを社会通念上から判断します。

社会通念上という表現が微妙でして、収入状況や管理状況、事業の独立性など総合的に考えて決めるということになっています。

まあ曖昧ではありますけど、ただひとつ言えるのは、フルタイムで働く会社員などがアパートなどを貸し付けて家賃収入を得ている場合は、事業的規模にはあたりません。

会社員は勤務していると給与をいただいていますよね。

明らかにその会社員としてもらえる給与で生活できているわけですので、そもそも事業には当たりません。

ですので、会社員が運営する家賃収入については不動産所得ではありますが事業的規模ではないと判断されます。

【事務所お知らせ】  

STEP2 形式で見る「5棟10室基準」

STEP1だけだと、社会通念上やら総合的判断など曖昧な判断も多いです。

判断できない場合には、アパートやマンションなどで10室以上・貸家で5棟以上貸付けている場合には、事業と判断してもよいことになっています。

よく「5棟10室基準」と言われており形式的に判断します。

この基準を満たせば、不動産所得の事業的規模であると判断されます。

事業的規模かどうかでの違い

不動産所得を青色申告で行う場合、この事業的規模かどうかの判断が大きく左右されます。

特に影響が大きいのは、青色申告特別控除と青色事業専従者給与です。

事業的規模 事業的規模以外
青色申告特別控除 55万円(e-Tax65万円) 10万円
青色事業専従者給与 経費〇 経費×

ほかにも、違いがありますが、事業的規模以外になりますと制約があるので注意が必要です。

青色申告特別控除55万円・65万円と10万円

青色申告特別控除とは、収入から経費を差し引いた残りからさらに差し引いてもらえる規定です。

青色申告特別控除には55万円・65万円・10万円の3つがあります。

特徴も入れて比較してみます。

〇は必要なもの、×は不要です。

65万円 55万円 10万円
損益計算書
貸借対照表 ×
e-Tax × ×

損益計算書や貸借対照表は、青色申告をする際に添付していただく書類(決算書)です。

損益計算書は、収入や経費を集計し儲け分を計算する書類ですべての方につけていただく必要があります。

一方で貸借対照表は、現金や預金など12月末の残高を集計していただく書類ですが、10万円の場合は特に集計する必要はありません。

損益計算書と貸借対照表両方をつけたら55万円を受けることができますが、e-Taxで申告することで65万円を受けることができます。

何が言いたいかと言うと、不動産所得で事業的規模以外だと判断された場合、青色申告特別控除は10万円しか受けられませんが、貸借対照表は不要です。

残高管理ってとてもめんどくさいと思います。

現金や預金の管理・物件を購入されていたら固定資産の残高も管理する手間がでてきます。

もちろん残高管理はしていただきたいところですけど、10万円ならそこまで厳密にやる必要はありません。

まず「実態」・その後「形式」

今回の記帳指導で不動産賃貸業の方がいますが、正直「5棟10室基準」という形式のところばかり考えられている印象が強いです。

ネットなどを見てみても、家賃収入による節税などという情報が流れています。

どれも実態判断という基準をすっ飛ばして5棟10室基準を満たせば青色65万円控除が受けられる=節税になる、を前面に押し出しています。

しかし、まず大前提としてその方個人の実態が事業なのかどうかから入るべきです。

会社員でフルタイムでお勤めされている場合、たとえアパートやマンションを10室以上貸し付けていたとしても事業的規模以外です。

それでも判断ができない場合にはじめて形式的に「5棟10室基準」で判断します。

会社員として勤務しながら、
10室以上貸付け=事業的規模で65万円控除=赤字なら給与と相殺可能=節税できます!

などと謳っている業者もありますが正直怖すぎます。

税務調査がきたらまずダメだと思っていただいたほうがいいです。

まとめ

今回は、不動産所得で一番の問題となる事業的規模かどうかについて書いてみました。

5棟10室という形式だけが独り歩きして、本来の実態での判断があまりされていないのかなと思って再度自分でも勉強してみました。

参考になれば幸いです。

では。

タイトルとURLをコピーしました