国税庁ホームページで年末調整の案内について掲載が始まりましたね。
令和2年分は改正が多いために誤りが多くなりそうなので注意が必要です。
以前、このブログにも「令和2年分からの年末調整」として書きましたが、今回はその追加の内容と年末調整での還付請求書について書いてみたいなと思います。
年末調整関係の情報(令和2年分)
9月に入り予告していたとおり、国税庁ホームページに年末調整に関する情報が出始めました。
様式の変更や改正内容のほか、本年から「年末調整手続きの電子化」についての取り組みが始まります。
従業員自身で国税庁ホームページからダウンロードした年末調整控除申告書作成ソフトウェアに各種資料を作成してデータを勤務先に提出できるようになります。
年末調整申告書の作成の簡素化と計算誤りを防ぐことができるため、事務の効率化が図られるとのことです。
10月1日から国税庁ホームページでソフトウェアの提供が始まっています。
国税庁ホームページに源泉徴収義務者(勤務先)の方へとして年末調整の情報が掲載されていますが、今回から従業員側にも年末調整に関する知識を持っていただいた方がいいのかもしれません。
会社には、通常年末調整説明会などで使用する「年末調整のしかた」という冊子が配布されています。
一方で、従業員側も年末調整の内容を確認できるように、毎年「年末調整がよくわかるページ」というものも掲載されています。
この「年末調整がよくわかるページ」は年々充実してきていて、従業員のみならず会社も使えるようにまとめられているので要チェックです。
国税庁ホームページ 令和2年9月30日「年末調整がよくわかるページ」を開設しました より
昨年から変わった点として、以下が挙げられています。
①給与所得控除
②基礎控除・所得金額調整控除
③扶養親族等の合計所得金額要件等
④ひとり親控除・寡婦控除
詳しくは、以下の記事を参照いただければ。
ここでは、注意すべきところを書いていきます。
- 控除申告書
改正に伴って、「基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」が新たに設けられました。
名称は分かれていますが、実際は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という1枚の用紙に3つの内容が詰め込まれています。
- 源泉徴収簿の様式変更
以上の控除申告書の内容変更に伴い、源泉徴収簿も追加・変更がされているので記載箇所は注意しましょう。
- ひとり親控除、寡婦控除の申告
今回の改正で、未婚のひとり親の方も控除の対象となり控除額35万円が適用されます。
その際には、年末調整の際に異動内容を申告する必要が出てきます。
申告方法としては、「令和2年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容を訂正します。
様式名称に(異動)とあるのは、この申告書に異動した内容も記載する「異動申告書」という意味も込められています。
具体的には、「寡婦」「寡夫」「特別の寡婦」欄を「ひとり親」に訂正するなどの方法があります。
それに伴い、源泉徴収簿にも、ひとり親に該当する旨を記載します。
具体的には、「扶養控除等の申告」欄やその欄外の余白に「ひとり親」と記載します。
源泉徴収簿の訂正漏れで年末調整計算に誤りが出ないように注意しましょう。
【事務所お知らせ】年末調整における還付請求
各従業員の年末調整を計算した結果、還付金額が発生することがあります。
年末調整で新たに控除するものありますし(生命保険料控除など)、毎月の税額表に反映されないものもあります(ひとり親控除など)ので。
この還付金額は、従業員本人に返還しますし、会社が税務署に収める納付書では「年末調整における還付金額欄」にその金額を記載して控除します。
ただし、会社が解散や休業して給与支払者でなくなってしまい還付できなくなった場合は、従業員本人に返還できなくなってしまいます。
また、還付金額が多額で翌年以降毎月徴収すべき金額が少なくて2カ月経過後もなお還付すべき税額がある場合、従業員としては毎月の給与に充当されるより還付してほしいわけです。
こういうときに、従業員が会社の所轄税務署から還付を受ける制度として「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求」があります。
ここで、今まで説明してきた年末調整の還付金額という言葉は正確には「年末調整の過納額」といいます。
年末調整で計算した結果多く納めていたという事実にすぎず、実際還付はまだしていないからです。
では、年末調整過納額の還付請求書について説明してみます。
年末調整過納額の還付請求書
先ほども書きましたが、給与支払者である会社が解散や休業したり、過納額が多額で長期にわたってしまう場合に、本来従業員本人が請求する書類です。
しかし、年末調整自体は会社で計算しているために、会社側がこの還付請求書を作成して代理で提出し、いったん会社で還付を受けてから従業員本人に還付するという方法も取れます。
つまり、この還付請求書は2つの方法で提出が可能となります。
- 還付金の受取人を会社とし、会社がいったん受け取った還付金を従業員本人に還付する
- 還付金の受取人を直接従業員本人にする
この請求方法が2つあることで、提出書類が変わってきます。
還付金の受取人を会社とし、会社がいったん受け取った還付金を従業員本人に還付する(=源泉徴収義務者に還付)
還付金受取人を会社にする場合には、①「請求書(兼残存過納額明細書」②「国税還付金支払明細書」のほか、③「委任状」を作成して提出します。
この「委任状」とは、会社が従業員本人から過納額の請求及び受領の委任を受けている旨を記載するものです。
還付金の受取人を直接従業員本人にする場合(本人へ還付)
還付金受取人を直接従業員本人にする場合、
①「請求書(兼残存過納額明細書)」を各人別に作成します。
②「国税還付金支払明細書」と「委任状」の作成は不要となります。
提出する際の添付書類
2つの方法どちらにしても、年末調整の計算明細が必要です。
具体的には、
年末調整により過納額が生じた従業員各人ごとの源泉徴収簿の写し(過納額が生じた年分と過納額を還付する年との2年分=本年分と翌年分の2年分)
そのほか、還付の適否を判断するために追加資料を請求されることがあります。
請求書・還付金支払明細書・委任状は記載例がある!
この年末調整にかかる還付請求書や還付支払明細書・委任状については国税庁ホームページにPDFで様式が掲載されています。
さらに、これらについては記載要領もありますが記載例という形で具体的に説明がされているために、どこにどう記載すればいいか分かるようになっています。
つまり、記載例を掲載しなければいけないくらい書き間違いが多いです。必ず確認しましょう。
気をつけるべきところを強調しておきますね。
- 年末調整還付請求書兼残存可能額明細書(源泉徴収義務者へ還付用)
①源泉徴収義務者(代理人)にレ点を付す
②年末調整による還付額のうちに、この還付請求書を提出する日までに充当又は還付した額を記載する欄がある
もし、過納額が多すぎて2カ月経過しても明らかに全額の還付が困難な場合は、2カ月経過する日前でも請求書の提出が可能です。
したがって、提出する日までにまだ充当又は還付した額がなければ空欄でもOKです。
③年末調整を行った年月日を必ず記入する→この日が還付加算金の起算日となるから
- 年末調整還付請求書兼残存可能額明細書(本人へ還付用)
①各人別に還付請求書を作成
②直接本人にレ点を付す
③本人に還付する銀行口座などを記載
④年末調整による還付額のうちに、この還付請求書を提出する日までに充当又は還付した額を記載する欄がある
もし、過納額が多すぎて2カ月経過しても明らかに全額の還付が困難な場合は、2カ月経過する日前でも請求書の提出が可能です。
したがって、提出する日までにまだ充当又は還付した額がなければ空欄でもOKです。
⑤年末調整を行った年月日を必ず記入する→この日が還付加算金の起算日となるから
- 国税還付金支払内訳書
①本人に還付する場合は提出不要
②年末調整還付請求書兼残存可能額明細書と同じように記載する
*この内訳書は、税務署側が還付金の内訳はこうですと証明したものです。なので、「殿」とか「税務署長○○印」とすでに印字されているわけです。
「殿」は、こちらの会社名を記載しますが、「税務署長○○印」は空欄にします。税務署側で補完して会社へ送付してきます。
- 委任状
①本人に還付する場合は提出不要
②年末調整還付請求書兼残存可能額明細書と同じように記載する
→住所の書き間違えが多いので注意です。
③会社へ還付を希望する場合に、残存可能額明細書に記載した従業員本人の押印が必要
年末調整を誤ってしまい還付請求したい場合
上記で説明したのは、あくまで年末調整を正しく計算した結果、過納額(還付金額)が発生したために請求する場合です。
もし年末調整自体を誤って多く納めたために還付してほしい場合はどうするのでしょうか?
この場合は、「源泉所得税の誤納額還付請求書(または充当届出書)」を提出します。
したがって、還付が発生した原因によって作成書類が異なります。
- 年末調整の結果還付が発生:「年末調整還付請求書兼残存可能額明細書」
- 年末調整を誤ったため還付が発生:「誤納額還付請求書(充当届出書)」
「誤納額還付請求書」についての書き方や添付書類については以下の記事を参照してください。
まとめ
今回もたくさん書いてしまいました。すいません。
本年は改正が多いので注意が必要ですし、電子化の取り組みも本格化しました。
今後もっと効率化の流れになってくるかなと思います。
年末調整の還付請求も、電子で作成して提出することもできますが、添付書類が必要になるので結局面倒。
この年末調整の還付請求書が提出される件数は半端なくて、年明けから3月にかけて税務署の源泉所得税担当はこの審査ばかりやっています。
記載不備や書類不足があると税務署から電話がかかってきますので、適切に対応してください。
では。