毎年国税庁から所得税・消費税の税務調査等の実施状況が公表されます。
今年は11月24日に公表されましたが、事務所へ訪問して調査をする実地調査自体は回復傾向にあるがコロナ禍によりいまだ低水準が続いているとのこと。
一方で高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を優先した結果、コロナ禍前の水準に近づいてきているようです。
今回は、こちらの資料から私が気になった項目をピックアップして私見を書いてみたいと思います。
あくまで個人的な意見なので参考までにご覧ください。
「文書等による簡易接触」との組み合わせが当たり前
この資料では、
と書かれてあります。
通常、実地調査は納税者宅や事務所に出向いて調査を行います。
しかし、明らかな誤りなどに関しては、文書等による接触方法を積極的に組み合わせて実地調査の件数不足を補う形になっています。
したがって、簡易な接触による申告漏れ所得金額・追徴税額は増加しているとのことです。
いまだコロナ禍の先が見えないため、しばらく実地調査の件数増加は見込めないかもしれません。
一方で、文書等による簡易接触なら納税者と接することなく調査を行えますので効率的です。
むしろ、
- 高額・不正が見込まれる事案:実地調査
- 軽微な誤り:簡易接触
というすみ分けがはっきりしてくるのかもしれません。
今後も当然のごとく簡易接触は行われていくものと思われます。
【事務所お知らせ】消費税無申告・輸出物品販売場
消費税調査に関しても、回復傾向にあるが依然として低水準。
しかし、消費税無申告の調査を重点的に実施したことと、輸出物品販売場の悪用事案に取り組んだことでコロナ禍前の水準に近づいたと書かれてあります。
消費税無申告調査は以前より重点項目として指摘されていましたが、今回輸出物品販売場の事案に取り組んだというのが新たな試みですね。
消費税の輸出物品販売場制度を悪用し免税購入した物品を国内転売するような悪質な事案に取り組んだとのこと。
前年度2件だったのが30件も調査されているため、今後も件数の増加が見込まれます。
富裕層・海外投資・インターネットは相変わらず重点項目
個人の税務調査に関して、ここ最近は富裕層・海外投資を行っている・インターネット取引を行っている方を重点的に調査しているようです。
富裕層と海外投資はリンクするところでもありますので(富裕層は海外の資産に投資する傾向がある)追徴税額もかなり多額になっているようです。
また、インターネット取引の中で、暗号資産取引を行っている個人の調査の1件あたりの追徴税額は高水準であるとされています。
しかし、ここ最近の暗号資産の推移を見ると益が出ている感じがありませんが、調査は過去にさかのぼって実施されますので気を付けておいたほうがいいでしょう。
1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
ここからは、令和3事務年度において申告もれ所得金額が高額だった上位10業種について並べてみたいと思います。
カッコは前事務年度の順位です。
- 経営コンサルタント(7)
- システムエンジニア(11)
- ブリーダー(8)
- 商工業デザイナー(10)
- 不動産代理仲介(9)
- 外構工事
- 型枠工事
- 機械部品受託加工
- 一般貨物自動車運送(14)
- 司法書士・行政書士
コロナ禍の影響により毎年常連だった飲食店や風俗業・キャバレーは姿を消しました。
一方で、個人で活動するフリーランスに向けて集中的に調査を行っているように見受けられます。
大手企業からの外注を受けていたりすると、その企業に税務調査が入ったことで芋づる式に申告もれが発覚することがあります。
あと、今回司法書士・行政書士が新たにランクインしました。
これも時代背景なのか分かりませんが、コロナ禍で助成金・補助金申請業務が増えたことによる申告もれを指摘されたのかなと考えたりしています。
社労士もそろそろ危ない!?
実は、この司法書士・行政書士がランクインしたことで、私を含む士業を営む方も今後は調査対象に挙がってくる可能性が考えられます。
その中で特に注意したいと思うのが「社労士」。
コロナ禍により助成金業務を行っている社労士も多いことかと思います。
その申告を正しくしているのか、適正な申告をしているのかが改めて注目されているのかなと感じています。
まとめ
今回は、令和3事務年度の所得税・消費税調査実施状況に関して私見を書いてみました。
いつか来る税務調査に向けて常日頃から対応をしておく必要があるなと、この情報を見ながら毎年考えるようにしています。
では。